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“初めて”の朝と、白河さん

ちょっと4話の前に何話か挟む予定だったのをミスって投稿しちゃってました。

登校二日目。


まだ会話はゼロ、緊張はそのまま。

中学の友達とはクラスが分かれたし、当然ながら隣の席も知らない誰か。


 


(……まあ、こうなると思ってたけど)


 


投稿時間より少しだけ早く教室に着いて、静かに席につく。

カバンを開けて、筆箱、ノート、教科書を取り出す。

時間をかけて机を整えていると、ふと――気配を感じた。


 


視界の端、机の向こうに誰かが立っている。


「佐藤くん、だったよね?」


話しかけられた、そう思いカバンの中から視線を上げると、そこには――


 


挿絵(By みてみん)




おっぱいがあった。





白河悠里さん。

黒髪セミロングに、すっと通った目鼻立ち。

どこか浮世離れした雰囲気で、その抜群のスタイルと美貌から制服姿を着ただけなのにまるで雑誌のモデルみたいに見える程だ。


 


先週の入学式では、成績首席で壇上に呼ばれており――

その姿を見た在校生や新入生の間では、すでにちょっとした噂になっていた。


「なんかすごい美人いたよな」「でっっか!?あれマジでJKか?」

「白河悠里っていうらしいぞ」「名前からして美人じゃん」……と。


 


まだ入学して一日しか経ってないのに、

もはや“高嶺の花”どころか、“別の世界の人”みたいな扱い。



「白河ユウリ。よろしくね」

そんな彼女が、いま俺の目の前で立って挨拶をしてきた。

恐らく席が前後同士だから挨拶をした。ただそれだけのことなのだろう。





しかし、眼の前でたぷんっ♡と揺れた彼女の豊満なそれ(おっぱい)に俺の脳内は完全にショートし、固まってしまった。


 


 


目の前の美少女が、気軽に話しかけてくる。

軽い内容なのに、俺の脳は処理落ちしかけてる。



近い。

顔が。

そして胸も。


でか、ゆれっ……いや、そうじゃなくて。


 


「っ……よ、よろしく……おねがいします……」


必死にそれ(おっぱい)から目をそらし口から出た声は、まるで自分のものとは思えなかった。

息が浅くて、変にかすれてて、情けないったらない。


 


「ん、よろしく……それより」


しかし、明らかに胸を見ていたことに気づいていたはずであろうに、気にした様子もなく挨拶を返すと白河さんスッと腕を伸ばしてきた。

 


「襟、立ってるよ?」


 




それどころか。なんと、そう言いながら、指先が俺の制服のシャツに触れてきたではないか。ゴソゴソと、襟を整えているらしき動作。


それに合わせて、顔が――ぐっと、近づいてくる。


 


「ちょ、ちょっと、まっ……!」

「じっとしてて」

「……は、はいっ」


 


(か、かお、顔が近いって!?)


 


思わずのけぞりかけたが、白河さんは一切気にしていない様子で作業を続ける。


アイドル級の美少女が、至近距離で真顔。

目をそらすにそらせず、心拍数だけがじわじわと上がっていく。


ちょっと身を乗り出せば触れてしまいそうな程の距離感。

甘く、どこか癖になりそうな香り。



テレビでもなかなか見ない、美少女の近すぎる距離感に俺は完全に脳内を揺さぶられていた。


わずか数十センチ先。

伸びた前髪の先が、ほんの少しだけ揺れて、

俺のシャツにふわっと落ちてくるような錯覚すらあった。


 


(こ、この人、距離感、バグってない……!?)


 


目が合った。


意識してるのは、たぶん俺だけだ。


白河さんは、ごく自然に、当たり前のことのように距離を詰めてきて――

そして、何事もなかったように、スッと手を引いた。


 




 


「はい、直った。それじゃ」


それだけ言って、白河さんは軽く笑い、席へ戻っていった。


 


残された俺は、しばらく動けずに固まっていたのであった。










その後、何事もなかったかのように朝のHRは始まった。


出席を取る担任の声。プリントを配る音。

皆集中して授業に取り組んでいた。


 


そんな中、俺だけは先程のことで頭がいっぱいっぱいになっていた。




(……気にすんな。気にするほどのことじゃない)


襟が立ってたから直してくれた。

それだけのことなのだろう。


(白河さん……意外と、世話焼きなタイプなのかな?)



そう言い聞かせるように呼吸を整えるけど、

どこか、昨日までと違う空気が、自分の中に流れはじめている気がしたのであった。














side ユウリ






転生して二日目の朝。

少し早めに教室へ入ると、もう“アイツ”は来ていた。


 


席に座って、黙々と筆箱や教科書を並べてる。

動きがいちいち慎重で、やけに丁寧。

妙に早く来て、準備だけで落ち着こうとしてるあたり……ああ、懐かしい。


 


(うん、やっぱ俺だわ)


 


まだよく喋る相手もいない。

中学の友達とも別クラスで、浮いてるわけじゃないけど馴染んでもない。


そんな、クラスの端っこにいる“佐藤ナオキ”を見ていると、

不思議と他人に思えなかった。


 


……まあ、他人じゃないんだけど。



まずは会話しないことには始まらないだろう。

そう思った俺は、アイツの席の前に立った。


あいさつ。名前の確認。

ただそれだけ。自然な導入で、“話すきっかけ”を作る。


 


……だったんだけど。


 


まさか、胸をそんなに見られるとは思わなかった。

しかも、割と堂々と。


いや、目線を逸らそうとしてるのは分かった。

でもタイミングが全部ワンテンポ遅いのが何とも鈍臭さを感じる。


 


(おいおい……バレバレだぞ、俺)

心の中で苦笑するが、俺だから笑って済ませるけど、他の子なら軽くアウトなんだよなぁ。





……あ、あれ?もしかして、こんなあからさまな態度だったから高校時代女子との接点が持てなかったのでは?




い、いや。俺のときはここまで酷くなかったはずだ!

コイツが分かりやすかっただけだ!

って、あああ!コイツ襟立ってんじゃねぇか!ったく、しょうがねぇ奴だな……よし、直った。





ふぅ。と、取り敢えず、最初のコンタクトを済ませるという目的は達成だ。

気持ちを切り替えていこう、過ぎたことを考えても仕方がない。





俺は、自分に言い訳をしながら次の接触のタイミングを虎視眈々と狙うのであった。

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