弟の夢くん
放課後の幼なじみの家で勉強を教えている。夢くんは理奈の背中にべったりとくっついている。お姉ちゃんが好きなんだな。そんなことをぼんやりと考える。
「だから、ここはこれで正解。理奈? 分かるかな?」
「うん、ありがとう。翔太」
「お姉ちゃん! 遊ぼうよ!」
夢くんは姉である理奈に甘えている。それも仕方ない。夢くんはまだ小学一年生。よくよく考えると、本来ならばお母さんに甘えているのが普通。母子家庭だから、ヤングケアラーである彼女に甘えて当然だった。
「夢くん? お姉ちゃんは今は勉強中なの。あとでね?」
「やーだー! お姉ちゃんとあーそーぶー!」
いくら幼なじみが弟に勉強中と言うことを話しても聞く耳を持たない。勉強を教えるのもここまでかな? ボクはこう切り出した。
「夢くん、ボクと遊ぼう?」
「え~? お兄ちゃんと? 良いけど、何して遊ぼう?」
その間に、彼女は夕ごはんの準備をこっそりと始める。
「それじゃあ、ヒーローごっこをしよう! 夢くんはヒーロー。ボクは悪役をするからね?」
「うん。くらえ、ヒーローキック!」
チラリと幼なじみの方を見る。笑みを浮かべていた。ボクでも何かの役に立てるならば喜んでしよう。ヤングケアラーだからって一人で抱え込んでいては辛いと思うからね。