08 組織・職人組合
■職人組合
文明崩壊後、旧文明の技術は失われ、旧文明期以前の設備の多くは急速に劣化し、人々はそれを維持・修理する必要に迫られました。当初、技術者たちは個別に活動していましたが、これ以上、貴重な知識と技術が失われないように、情報を共有するための組織を結成しました。それが〈職人組合〉の始まりだと言われています。
職人たちは旧文明期の施設の整備や、スカベンジャーたちが回収した遺物の修復を専門とし、機械人形や車両の修理、改良、武器のカスタマイズなども行うことで生計を立てています。
現在では、組合なしでは文明的な生活の維持は不可能となり、組織の影響力は計り知れないものになっています。しかし職人たちは技術と高度な知識を要求されるため、一般人とは感覚が大きく異なり、気難しい者が多い。また、組合の知識は一種の権力でもあり、簡単には他者と共有されません。
◆組織の構造
職人組合には厳格な階級制度があり、技術の習得度合いによって地位が決定します。正規の職人になるには、それなりの経験と知識が必要であり、資格を取得するための試験も行われています。そのため、誰でも職人になれるわけではありません。
・見習い〈キッド〉
組合に入ったばかりの新人です。基礎技術を学習しながら、雑用を担当します。まだ修理には関与できません。まずは職人たちから技術を習い、少しずつ成長していきます。ちなみに、読み書きや簡単な計算ができれば、誰でも試験を受けることができます。
基礎技術の学習では、各種道具の使い方、資材の取り扱い、電子機器の簡単な修理方法などを習得します。一定期間が経過し、充分な技術と知識を身につけたと認められた場合、次のランクに昇格することができます。
・職人見習い〈ワーカー〉
正規の職人ではありませんが、確かな技術を身につけた者たちです。彼らは簡単な機械修理や整備を担当し、日々の業務の中で腕を磨いていきます。小さな機械部品の交換や調整を行い、熟練した職人たちの指導の下で、旧文明の技術に触れながら仕事を覚えていきます。
見習いですが、職人たちから頼りにされる存在です。熟練した職人たちの仕事をサポートしながら、作業台の整備や工具の準備も任されています。彼らの働きが、職人全体の作業効率を向上させる大事な要素となっています。
学習も欠かせません。〈データベース〉に接続し、そこで手に入る技術書を熟読し、実践的な修行を積むことで、さらに技術を磨いていきます。新しい技術や修理方法を習得するために、職人たちからのアドバイスを受けることもあります。簡単な修理や整備の仕事を担当し、責任を持って完了させることで、組合に貢献していきます。
・職人〈メカニック・エンジニア〉
正規の職人です。旧文明の技術を理解し、それを修復する技術を持つ者たちです。〈メカニック〉あるいは〈エンジニア〉とも呼ばれる彼らは、既存の技術を利用した新たな装置を製作する能力も兼ね備えています。
その技術は多岐にわたり、特定の分野を専門とする者も多いです。武器、医療機器、電子機器、車両整備、機械人形など、さまざまな分野で活躍しています。
一人前と認められた職人は、組合から支給されるクレジットだけでなく、独自に引き受けた仕事を完了させることで適正なクレジットを請求することができます。そのため、彼らは自らの技術を高めるために常に努力し、未知の技術を受け入れる柔軟さも持ち合わせています。
彼らの腕前は高く評価されていて、数多くの依頼が舞い込みます。職人としての役割は非常に重要であり、経験と知識が組合全体の発展だけでなく、文明の再興に欠かせない仕事になっています。
・親方〈マイスター〉
職人の頂点に立つ存在であり、他の職人を指導する立場にあります。独自の技術を持ち、自らの工房を持つことが許される彼らは、その技術力と経験から各地の〈鳥籠〉から高い評価を受けていて、その技術は多くの人々に求められています。職人たちの憧れの存在でもあります。
一方で、その頑固さも折り紙付きです。譲れない信念を持っているため、しばし柔軟さを欠くこともあります。それは時として、依頼人との衝突に発展することもあります。
・組合長〈ギルド・マスター〉
各〈鳥籠〉にある支部との調整を行い、職人たちの業務を管理する役割を担っています。彼らは他の組合との交渉も行うため、職人としての技術だけでなく、多方面での活躍が期待されています。
失われた技術を再発見・再利用するため、スカベンジャー組合やAIエージェントと協力し、組合に持ち込まれた遺物の調査を担当します。彼らはその知識と技術で組合全体を支えています。
各組合で見られる権力争いは見られず、権力の腐敗は極端に少ないです。組織を構成する人々の多くが職人気質で、新たな技術の発見や仕事そのものに楽しみを見出しているからなのかもしれません。
それぞれの組合長によって収集、保管される知識は組合の最重要機密であり、外部の者がアクセスすることは許されません。彼らの存在は、文明崩壊後の世界において非常に重要になっています。
◆活動
各工房では、次のような業務が行われています。
・旧文明の設備の修理・維持
電力施設、浄水施設、環境維持装置、フロアメンテナンスなど、旧文明の施設を維持・管理を行います。しかし施設の多くにはメンテナンスを担当する機械人形が配備されているので、壁面パネルの交換や照明設備の点検など、その役割は限定されています。
・旧文明の電子機器や機械人形の修理・復元
スカベンジャーが発見した遺物や技術を解析し、修理や改良を行う。ドローンや高度な医療機器は重宝され、見習いの学習にも役立てられます。
・武器や装備のカスタマイズ
傭兵組合から依頼を受けて、武器や防具の整備や改造を行います。エネルギー兵器や爆発物の製造には高い技術が要求されるため、作業できる職人は限られています。車両の整備を担当することもあるため、専門の知識を持つ優秀な職人たちがいます。
・データの復元・解読
旧文明の情報端末や〈データベース〉にアクセスし、技術情報を発掘します。ただし、技術組合との対立を避けるため、積極的に仕事を依頼し、共同で調査を行います。
◆組織の掟
各工房によって、それぞれの掟や厳守しなければいけない理念が存在します。
「知識は力である」
旧文明の技術は厳重に管理され、外部の者に安易に伝えることは許されない。
「完璧な仕事に誇りを持て」
中途半端な修理や整備は許されず、ときには依頼人の命に関わるため、半端な仕事をした者は厳しく罰せられるだけでなく組合からも追放されます。
「商人は敵ではないが、味方でもない」
商人組合とは取引するが、技術の搾取を警戒し、常に慎重な態度を取る必要がある。
◆他勢力との関係
・スカベンジャー組合〈協力関係〉
スカベンジャーたちとは密接な協力関係にあります。〈廃墟の街〉や旧文明の施設から遺物を回収する専門集団であり、彼らが集めた素材や部品がなければ、職人組合の仕事は成り立ちません。スカベンジャー組合が持ち帰る貴重な遺物が、職人たちの仕事や新たな装置の製作に欠かせないため、互いに不可欠な存在になっています。
このような関係が築かれているため、スカベンジャー組合に対して敬意を持ち、彼らの仕事を高く評価しています。スカベンジャー組合もまた、職人たちの技術力を信頼し、仕事を評価されていることを喜んでいます。両者の協力によって、荒廃した世界で共同体の生活は維持されています。
・商人組合〈取引相手〉
職人たちが生み出す製品を市場に流通させる役割を担っていますが、職人組合の機密情報を不正に手に入れようとする動きが見られるため、両者の間には常に緊張感が漂っています。
技術を不当に利用されることを警戒しているため、厳しい契約を結ぶことが多いです。一方で、商人組合も職人たちの高い技術に依存しているため、完全に関係を断ち切ることはできません。お互いに必要な存在でありながら、信頼関係を築くことは難しく、微妙なバランスの中で関係が続いています。
・傭兵組合〈取引相手〉
傭兵組合との関係も重要です。傭兵たちは頻繁に武器や防具を使用するため、それらの修理やメンテナンスが必要不可欠です。職人組合はその技術を提供し、傭兵たちの装備を常に良好な状態に保つ役割を果たしています。
しかし、傭兵の荒々しい性格と気難しい職人の気質はしばしば衝突を引き起こします。傭兵たちは厳しい戦場での経験から短気であり、急いで修理してもらうことを望んでいます。一方で、職人たちは完璧を追求するため、丁寧な作業を重視します。
この違いが互いの間に緊張を生むこともありますが、それでも職人たちの技術を信頼しているため、依頼がなくなることはありません。両者は、お互いに依存し合う関係にあり、必要なときには協力し合うことが求められています。
・医療組合〈取引相手〉
良好な取引関係にあります。医療機器の修理やメンテナンスを担当するため、職人組合の技術は医療組合にとって非常に重要です。医療機器の修理が迅速かつ正確に行われることで、患者の命を救うことができます。
しかし一部の医者が利益を優先し、患者のためよりも自分たちの利益を追求していると感じる職人も多いため、両者の間には警戒心が存在しています。このような警戒心があるため、職人組合は医療機器の修理やメンテナンスを行う際に、充分に注意を払い、透明性を確保することに努めています。
・鳥籠〈取引相手〉
職人組合にとって、〈廃墟の街〉に点在する〈鳥籠〉は最も重要な取引相手であり、お客さんでもあります。各〈鳥籠〉は、それぞれ独自の文化や特色を持ち、必要とされる仕事も異なっています。職人たちは、その需要に応えるために、これまでの経験を活かし〈鳥籠〉ごとに適した技術を提供しています。
〈鳥籠〉との取引は、職人たちにとって安定した収入源でもあり、共同体を支える重要な役割を果たしています。職人組合は各共同体との友好的な関係を築くことで、双方に利益をもたらしています。共同体は職人たちの技術に依存し、職人たちもまた共同体からの支持と需要に応えることで生計を立てています。
・略奪者〈敵対的〉
職人組合と廃墟の街に巣食う略奪者たちは敵対関係にあります。略奪者たちは組合や共同体の資源を狙い、時折襲撃を行いますが、多くの職人は〈鳥籠〉内に工房を構えて仕事をしているため、直接的な接点がなく、遭遇することはほとんどありません。
しかし職人組合を追放された者たちが、略奪者のために働くことがあります。彼らは略奪者の武器や車両を整備し、その技術を悪用することにより、略奪者の勢力を強化しています。このため、略奪者たちとの対立は絶え間なく続いていて、職人組合は常に技術の流出を警戒しています。
組合は技術と知識を守るため、略奪者たちに対して毅然とした態度を取り続けています。その一方で、組合を追放された者たちの動向にも注視し、必要な対策を講じています。
・変異体〈敵対的〉
変異体もまた、職人組合にとって敵対的な存在です。しかし略奪者たちと同様に、変異体との間に直接的な接点はありません。それでも変異体は文明崩壊後に生じた未知の生物であり、その存在は職人たちにとって大きな脅威となっています。
職人の中には、変異体の生態を調べることで、武器を改良するためのヒントを得ている者もいますが、それは非常に珍しいことです。変異体の研究は危険を伴い、特別な訓練と知識を持つ職人だけが挑戦できることです。このような研究に従事する職人たちは、変異体の弱点を見つけ出し、それを利用した武器や防具の開発を目指しています。
変異体との遭遇は稀であり、その存在が職人の日常業務に直接的な影響を与えることは少ないです。しかし変異体の脅威は常に意識されていて、職人たちは警戒を怠らないよう努めています。