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不死の子供たち・設定集  作者: パウロ・ハタナカ
第一部・廃墟の街
7/73

07 組織・商人組合

■商人組合


 文明崩壊後、物資の供給が不安定になった世界で旧文明の施設を利用できる権限を持つ者たちは、しだいに絶大な影響力を持つようになりました。


 都市が機能不全に陥るなか、一部の者たちは特定の施設にアクセスする手段を発見し、それを独占的に利用することで莫大な富を築いてきました。こうして成立したのが 〈商人組合〉 でした。彼らは 旧文明の〈販売所〉や物流センターを利用する権限を持つため、他の勢力とは一線を画す存在となっています。


 また、〈スカベンジャー組合〉や〈傭兵組合〉が回収した遺物を精査し、より高価な品として売り捌くことでも利益を上げています。現在では、組合に所属しなければ特定の〈販売所〉に立ち入ることも、物資の取引を行うことも許されないため、完全な独占体制が確立されている状況です。


◆組織の構造

 商人組合は階級制度を持ち、信用と血筋によって商人としてのランクが決定されます。ある種の〝商才〟よりも〝生まれ〟が重要視される組織であり、コネのない外部の人間が組合に入ることは非常に難しいとされています。


〈鳥籠〉での地位や家柄が組合内での立場を大きく左右します。たとえば、上級商人の家庭に生まれた者は比較的早い段階で高いランクに昇格することができる仕組みになっています。


・見習い商人〈ノービス・トレーダー〉

 見習い商人は、組合内で最も低いランクに位置し、主に雑用や簡単な業務を担当します。親族が組合員でない者でも、特例として採用されることがありますが、店を持つことは難しく、露店などで少額のクレジットを稼ぐことしか許されていません。


・〈ジャンクタウン〉でジャンク品を販売するヨシダは、別の組合に所属していますが、商売を行うため、見習い商人の資格を手に入れる必要がありました。そのさい、多額のクレジットを要求され憤慨しました。


・商人〈トレーダー〉

 正式な商人として認められた者は、独自の取引権を持ち、隊商を率いることができます。すでに確立された交易ルートを使い、貴重な物資や希少な品々を売買します。しかし、これらの商人はあくまでも組合に雇われている状態であり、組合の方針に従って動くことを余儀なくされています。


 旧文明の〈販売所〉に立ち入ることが許されているため、そこで思いがけない掘り出し物を見つけることができますが、すべて自費で購入しなければいけません。


 廃墟に埋もれた街は危険で、多くの変異体が徘徊しています。商人は身を守るために傭兵を雇い、隊商の安全を確保しなければなりません。そのため、傭兵の雇用費用がかさみ、あまり稼ぎは良くないのが現状です。商人たちは、その危険と報酬のバランスを取りながら、日々の業務を遂行しています。


・上級商人〈エリート・トレーダー〉

 商人組合のエリートであり、独自の隊商を管理し、交渉の主導権を握ることができる優秀な商人です。彼らは熟練した交渉術と広範な取引ネットワークを持ち、〈廃墟の街〉で交易ルートを開拓し、新たな集落や共同体との交易を行う権利を持っています。


 隊商の長として、彼らは多様な土地を巡り、貴重な物資や希少な品々を取引し、その知識と経験を活かして資産を築いています。


 組合に定期的に〝上納金〟を支払う必要がありますが、その努力次第で獲得できるクレジットも増えるため、ひと財産稼ぐことも夢ではありません。彼らの成功は、戦略的な計画と市場の洞察力に依存していて、努力とリスクが伴います。上級商人は、大規模な取引を成功させることで、巨額の利益を得ることができ、その名声と財産を築き上げます。


 しかし他の組合と裏取引をして、組織を裏切るほど腐敗した者たちも存在します。彼らはクレジットのためなら、残虐な略奪者に物資を提供することも(いと)いません。これらの裏取引は、組合内での対立や権力闘争を引き起こし、汚職と腐敗を深める要因となっています。


・豪商〈マスター・トレーダー〉

 商人の中でも最も影響力のある地位にあります。彼らは〈医療組合〉や〈傭兵組合〉と交渉する立場にあるため、その権力は絶大です。豪商たちは、貴重な資源や物資の取引を通じて地域経済の支配を画策し、自らの勢力を拡大しています。彼らの決定は、時として〈鳥籠〉で生活する人々に直接的な影響を与えることがあります。


 その地位は非常に競争が激しく、組合内での対立や権力闘争を引き起こすことがあります。この対立は内部の腐敗を深める要因となっていて、策略や暗殺による地位の簒奪も激しいものとなっています。豪商たちは、政治的な駆け引きや策略を駆使しながら、自らの立場を守り、さらなる影響力を求めて日々戦っています。


 また多くの豪商は、その地位を血筋によって受け継いでいます。親族の販路をそのまま引き継ぐことで、ほとんど何もせずに地位を手に入れる者もいます。こうした背景から、愚かな豪商も多く存在します。彼らはただ権力を持つことに満足し、実質的な経営能力や商才を持ち合わせていないことが多いです。


 その一方で、権力闘争をある種の〝ゲーム〟として楽しむ狡猾な豪商も存在します。彼らは計算高く、策略に長けていて、他の豪商たちを巧妙に出し抜くことができます。彼らは自らの地位を守るだけでなく、さらなる影響力を求めて組合内の権力闘争に積極的に関与します。


 このような狡猾な豪商は、侮ることのできない存在であり、その動向に常に注意を払う必要があります。


・商業貴族〈ギルド・マスター〉

 商人組合の最高権力者たちです。彼らは各地に点在する旧文明の〈販売所〉を管理し、重要な物資の流通を支配しています。その権力は絶大で、取引や交易に関するすべての決定権を持っています。ギルド・マスターたちは、商業の中心に君臨し、その影響力を行使して〈鳥籠〉の経済をコントロールしています。


 豪華な邸宅や旧文明の施設に住み、豊富な資源を享受しながら、日々の業務を取り仕切っています。その生活は贅沢極まりなく、豪華な衣装や装飾品に身を包んでいます。ギルド・マスターたちの会議は、まるで貴族の集いのように盛大で、豪華な宴席が設けられます。そこで彼らは交易ルートの調整や新たな取引先の開拓、戦略的な決定を行います。


 その権力の中心には腐敗が渦巻いています。ギルド・マスターたちは自らの利益を最優先に考え、組合内の権力闘争を激化させる要因となっています。彼らは豪商たちを競い合わせ、まるで自らの楽しみのためのゲームのように扱います。


◆活動

 商人組合は物資の売買だけではなく、以下のような業務を行っています。


・旧文明の施設から物資調達

 組合の許可証を持つ者だけが出入りできる〈販売所〉や備蓄倉庫から物資を調達し、組合にとっての適正な価格で販売します。


・隊商の運営と管理

 傭兵を雇い、荒廃した危険な地域を移動しながら〈鳥籠〉間の交易を行います。


・市場の統制

 需要と供給を管理し、価格操作を行います。しかし他の組合との争いに発展することもあるため、作業は慎重に行われています。


・奴隷の売買

 労働奴隷や性的奴隷などの売買を行っています。人気の商品は、サイボーグ化した戦闘奴隷です。


◆組織の掟


「利益を生まない者は不要である」

 組合に貢献しない者は、組合から追放されるか、利用価値のある労働力として売り払われる。組合の中では〝信用〟が最も重要であり、信用のない者は商売ができない。


◆他勢力との関係

・傭兵組合〈取引相手〉

 隊商の護衛を担当していて、密接な取引関係にあります。傭兵組合は、戦闘技術に優れた傭兵たちを集め、各地の危険地帯での護衛任務を受け持っています。しかし商人組合は、傭兵を〝金で雇われるだけの粗暴な集団〟と見下していて、その関係は良好ではありません。


 傭兵組合に対して感謝の念を抱くことは少なく、彼らを単なる道具として扱います。護衛任務が完了すれば報酬を支払うものの、傭兵たちの苦労や犠牲についてはあまり考慮されません。そのため、傭兵組合との間には緊張感があり、時折摩擦が生じることもあります。多くの場合、多額のクレジットで解決します。


・スカベンジャー組合〈取引相手〉

 スカベンジャーは、旧文明の遺物や希少な資源を廃墟や荒れ地から回収する者たちであり、彼らの努力によって貴重な物資が市場に供給されています。


 しかし商人たちは、スカベンジャーが回収した遺物や資源の価値を過小評価し、安価で買い取ることを常套手段としています。その結果、スカベンジャーたちは正当な報酬を得ることができず、不満が募っています。スカベンジャー組合は、商人たちの態度に対して抗議を続けていますが、商人組合の強力な影響力の前ではなかなか改善が進みません。


・医療組合〈取引相手〉

 医療物資の販売を請け負うことで医療組合との取引関係を築いています。医療物資は多くの人々にとって非常に重要なものであり、この取引によって両組合は互いに利益を得ています。


 しかし、その関係は決して良好とは言えません。医療物資の供給に関する交渉や価格設定を巡って、策略が渦巻き、対立が生じることがしばしばあります。豪商やギルド・マスターたちは、医療組合の商談士たちとの意見の対立を避けられないものとして受け入れ、時には激しい議論や駆け引きが展開されます。


 商人組合は、自らの利益を最大化するために医療組合との取引を巧みに操り、時には医療物資の供給を制限することで価格を引き上げようとします。一方、医療組合の商談士たちは必要な医療品を確保し、価格の安定を図るために商人組合と交渉を続けます。これにより両組合の間には絶えず緊張が漂い、利害の対立が絶えません。


・鳥籠〈取引相手〉

 商人組合にとって、〈廃墟の街〉に点在する〈鳥籠〉は最も重要な取引相手であり、お客さんでもあります。各〈鳥籠〉は、それぞれ独自の文化や特色を持ち、異なる物資や資源を求めています。商人たちは、その需要に応えるために各地を巡り、〈鳥籠〉ごとに適した物資を提供しています。


〈鳥籠〉との取引は、商人たちにとって安定した収入源であり、地域経済を支える重要な役割を果たしています。上級商人たちは集落の人々と信頼関係を築くことが成功の鍵と考えていて、取引を通じて相互に利益をもたらす関係を維持しています。


 その一方で、取引の内容や条件が異なるため、商人組合は柔軟な対応が求められます。商人たちは、〈鳥籠〉の管理者や有力者との交渉を重ね、最適な取引条件を引き出すために尽力します。これにより集落の発展を支援し、組合の地位を強固にすることができます。


 ただし〈鳥籠〉との関係が常に良好であるとは限りません。時には、取引条件や価格を巡って摩擦が生じることもあります。商人たちは〈鳥籠〉の要求に応える一方で、自らの利益を確保するためのバランスを取る必要があります。


・略奪者〈取引相手〉

 略奪者との関係は非常に危険でありながらも避けられないものです。隊商を襲撃し、物資を奪う略奪者もいれば、裏で取引を行う者もいます。これらの略奪者は、荒廃した世界で生き延びるためにあらゆる手段を講じていて、時には商人組合との取引が彼らの生活を支える重要な要素となります。


 一部の商人は、略奪者たちに武器や物資を売ることで利益を得ています。これらの取引は、共同体からは〝犯罪〟と見なされているので、〈廃墟の街〉で密かに行われます。


 商人たちは略奪者の力を利用して自らの利益を拡大しようとする一方で、その関係が非常に危険であることを理解しています。略奪者は信頼できない存在であり、取引が成立しなかったり、相手が裏切ったりする可能性が常にあります。


・変異体〈敵対的〉

 変異体は商売の敵であり、荒廃した街で交易を行う隊商の天敵です。これらの変異体は、過酷な環境や放射線の影響で異常な姿に変わり果てた生物や〈人擬き〉であり、その多くは凶暴で攻撃的です。変異体の多くは食料になる人間を求めて徘徊し、遭遇した者を容赦なく襲います。


 隊商が〈廃墟の街〉を移動するさい、変異体との遭遇は避けられないものとなります。商人たちは変異体の襲撃から身を守るために傭兵を雇い、隊商の護衛を強化します。しかし変異体の脅威は常に存在し、予期せぬ襲撃によって多くの物資や貴重な遺物が失われることがあります。


 変異体との戦いは、組合にとって大きなコストとリスクを伴います。変異体の襲撃を受けるたびに商人たちは損害を被り、その影響が交易全体に及びます。商人たちは変異体が多く出没する地域を避け、安全なルートを確保するために奔走しています。

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