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不死の子供たち・設定集  作者: パウロ・ハタナカ
第一部・廃墟の街
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06 組織・医療組合


■医療組合


◆組織の起源

 文明崩壊後、病気や外傷による死が日常化した世界で治療を必要とする人々はあとを絶たず、医師たちは休む暇もなく奔走していました。


 病院の多くは機能停止に陥り、薬品や医療機器は次第に失われていきました。生き残った医師や看護師、薬剤師や元軍医たちは、生存者たちの共同体を巡りながら治療を行う〝遊牧医師〟となり、やがて彼らを中心に組織されたのが〈医療組合〉です。


 最初は救済活動を目的とした組織でしたが、やがて医療に関連する資源を管理することで莫大な資産と影響力を持つようになり、権力志向の者たちが台頭。今では〝医療を受けたければ、それに見合う対価を払え〟という冷酷な体制が確立されていきました。


 純粋に人助けを目的とする集団も存在しますが、権力は腐敗するものであり、組合全体に影響を与えるほどの力はありません。


◆組織の構造

 医療組合は階級制度を持ち、各医療従事者は経験や知識、組合への貢献度に応じてランク分けされ、それに応じてクレジットを得ています。


・見習い〈アプレンティス〉

 組合の末端に属する医療者候補です。基本的な医療知識や技術を学びながら、上位の医療従事者の指導を受ける者たちです。傷の洗浄など簡単な仕事を任されるほか、日々の雑務をこなします。それなりに裕福な家庭で育った者、または〈鳥籠〉の権力者たちにコネがある者たちは、厳しい試験を受けなくても見習いになれます。


・商談士〈ネゴシエーター〉

 医療物資の確保を最優先に、〈商人組合〉や他の供給元と交渉し、必要な医薬品や機材を手に入れる者たちです。組合の貢献度のために価格交渉や契約の締結を行い、医療組合にとって有利な条件を引き出します。医療物資の在庫を把握し、効率的な運用を図ります。


 商談士は高度な交渉スキルを持ち、冷静かつ計算高い戦術を駆使して取引相手を説得します。彼らの交渉力は医療組合の存続に欠かせません。しかし多くの商談士は横暴で、権力を握ろうとする傾向があります。これにより、組織内での地位を固めるために不正行為や賄賂が横行することになりました。


 優秀な商談士は、組合内でも特権階級に属していて、特別な待遇を受けることが多いです。そのため、組織内での影響力は現場に立つ治療師よりも高くなっています。彼らの多くが表向きの取引だけでなく、略奪者との裏取引や闇市場での活動も行っていて、巨額の利益を得るためなら手段を選びません。


・治療士〈メディック〉

 基本的な治療や介護を行い、包帯の交換、薬の調合、軽度の手術などを担当する正規の医療者たちです。緊急事態においても迅速に対応し、初期治療を行う者たちでもあります。支払いによっては、〝誰にでも〟――たとえ残虐な略奪者でも、迅速かつ適切な医療行為を提供します。


・上級医師〈ドクター〉

 高度な医療行為を許可された者たちです。患者の診断、外科手術、義肢の装着、複雑な治療計画の立案なども行います。


 豊富な経験と知識、そして旧文明の医療機器に関する知識を持つ者たちでもあります。上級医師になるためには厳しい選抜過程を経る必要があり、医学的知識や技術、そして治療士たちをまとめる能力が求められます。


 戦闘用の〈サイバネティクス〉や、各種インプラントの移植手術に関する知識を持ち合わせている数少ない医師でもあります。貴重な人材であるため、〈鳥籠〉の外に出ることは稀です。


・指導医〈アークメディクス〉

 医療組合の上層部に位置する者たちです。技術指導を行うとともに、治療方針や患者の選別も行っています。彼らが治療するのは主に権力者であり、生きるためにクレジットを惜しまない人々です。


・組合長・病院長〈ユニオンマスター〉

 組合を統括する者たちであり、すべての医療者を導く立場にあります。組合の医療政策を決定し、商談士とともに資源の価格設定や取引交渉を行います。彼らの腐敗が組合全体の評判を悪化させています。


◆活動

 医療従事者は以下のような業務を通じて生計を立てている。


・診療や手術

〈鳥籠〉にある診療所で負傷者や病人の治療を行います。また各地に治療師を派遣し、医師のいない集落でも医療活動を行います。


・薬品の製造と販売

〈五十二区の鳥籠〉など、製薬工場がある〈鳥籠〉と契約し、独占的に医療品を手に入れている。それらの医療品を傭兵や商人に販売することもあります。


・インプラントや戦闘用〈サイバネティクス〉の装着

 四肢の代替となる義肢を提供しますが、高価なため限られた者しか利用できません。


◆組織の掟

 医療組合には、いくつかの掟が存在します。


「資源は無駄にするな」

 患者に余計な治療を施して貴重な薬品を浪費することは厳しく禁じられている。ときには患者を見捨てることも必要です。


「恩を忘れるなかれ」

 医療従事者に対する暴力を防ぐため、加害者は今後一切組合からの治療を受けることができなくなります。


「腐敗は消毒せよ」

 内部の汚職を告発する者は少ないが、表向きには腐敗した医師は追放されることになっています。医師は聖人でなければ務まりません。


◆他勢力との関係


・スカベンジャー組合〈設備の供給元〉

 彼らが回収した一部の医療機器を再利用することで、医療の現場は成り立っています。しかしスカベンジャーの多くは偏見の目で見られ、〝高額な治療費〟を請求されているため、組合に不満を持つ者は多いです。


・傭兵組合〈重要な収入源〉

 過酷な任務で負傷した傭兵たちは医療組合の最大の顧客です。傭兵の命は金になる。各地の〈鳥籠〉に派遣される治療士たちの警備任務も引き受けているため、傭兵に対する治療は適正価格で行われます。


・商人組合〈共存関係〉

 医療組合の薬品は商人組合を通じて各地に流通するため、両者の関係は密接です。


・略奪者〈敵対関係〉

 つねに医療品などの資源を強奪しようとするため、略奪者との衝突は絶えません。ただし一部の医師や商談士はレイダーギャングと裏取引をしているため、地域によっては良好な関係が築かれています。


・鳥籠〈友好的だが緊張関係〉

 医療組合と各共同体は相互に依存し、協力関係を築いています。医療組合は〈鳥籠〉からの支援を受け、〈鳥籠〉の住民は組合からの医療を享受しています。各地に派遣される治療師たちを受け入れ、治療活動を支援し、必要な物資や施設の提供も行っています。


 しかし一部の医療従事者は、自分たちが特別な地位にあると感じていて、ある種の特権意識を持っています。自分たちの役割が重要であることを強調し、〈鳥籠〉の住民に対して優越感を抱くことがあるため、住人に対して横暴な態度を取ることも珍しくないです。


 その特権意識を持つ医療従事者の中には、不正行為に手を染める者もいます。医療物資の横流しや賄賂の受け取りなど、組織内での不正は日常的に行われています。


・変異体〈敵対的または共存関係〉

 皮肉なことに〈廃墟の街〉に変異体がいるおかげで、医療組合の世話になる人々が後を絶ちません。おかげで組合の治療士たちはクレジットを稼ぎ続けています。まるで変異体が組合の構成員であるかのように、奇妙な共存関係が成り立っているのです。

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