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不死の子供たち・設定集  作者: パウロ・ハタナカ
第六部・遺跡

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54/120

054 第六部・拠点〈保育園〉



■施設


◆調査報告書

報告者:コール・ヴァーガス〈第三調査班〉

所属:傭兵組合〈ジャンクタウン〉

階級:傭兵〈マーセナリー〉

調査対象: 敵対組織拠点・通称〈ホワイト・ネスト〉


◆〈要塞化された保育園と蜘蛛の巣〉

 拠点〈ホワイト・ネスト〉は旧文明期の保育園を中心に築かれ、荒廃した〈多世代型階層構造都市〉の高層建築群と旧市街地に囲まれたエリアに位置する。拠点の周囲は極めて危険であり、侵入を阻む異質な防御機構に加え、変異生物〈白蜘蛛〉の存在も確認されている。


◆防壁の構造

 拠点となる保育園の敷地は、高さ五メートル、厚さ三十センチの防壁に囲まれている。この壁には旧文明期の特殊建材が使用されていて、表面は自己修復機能を持つナノマテリアルでコーティングされている。そのため、単純な砲撃やミサイルでは破壊することはほぼ不可能とされる。


◆ゲートシステム

 拠点への出入り口は、鋼鉄製の隔壁と半透明の薄膜シールドによる二重構造になっている。シールドには高密度のエネルギー粒子場が用いられ、衝突する物体を偏向させる高度な防御技術が採用されている。また、有害放射線や生体汚染物質を遮断する機能も備えている。通行の際には生体スキャンと放射線チェックが義務付けられ、感染者や変異体の侵入は即座に制限される仕組みになっているようだ。


◆蜘蛛の巣

 この拠点が〈ホワイト・ネスト〉と呼ばれる理由は、その壁の外側に張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣にある。調査によれば、この蜘蛛の巣は巨大な蜘蛛の変異体によって維持されていて、拠点の防衛機構の一部として機能しているようだ。


 蜘蛛の糸は驚くほど強靭で、鋼鉄のワイヤーすら凌駕する強度を持つ。侵入者や変異生物が誤って接触すれば、その糸に絡まり、身動きが封じられるという。周囲には数千本以上の糸が幾重にも張り巡らされていて、日の光を浴びると淡い銀白色に輝く。過去の報告では、戦闘車両さえもこの糸に絡まり動けなくなった例がある。


◆拠点の主と白蜘蛛


 傭兵組合の情報網によると、この白蜘蛛は拠点の主に従っているという噂を聞いた。その主が何者なのか、今のところ明確な情報は得られていない。しかし、白蜘蛛が拠点を守るかのように行動していることは確かだ。目撃者によれば、蜘蛛は必要に応じて壁の構造を修復し、新たな糸を張ることで巨大な迷路を構築し、拠点を外敵から守っているらしい。〈深淵の娘〉たちとの関係性も取り沙汰されていて、更なる調査が必要だろう。


◆廃墟に築かれた警備システム

 拠点〈ホワイト・ネスト〉の周囲には荒廃した旧文明の建造物が密集し、自然の障壁として機能している。この廃墟群は一見すると無秩序に崩れた都市の残骸だが、実際には防衛計画に基づき、警備システムの一部として活用されているようだ。侵入者を阻むための仕掛けが随所に施されていて、無策で近づけば命を落とすことになるだろう。


◆監視塔と警備機構

 拠点の外縁に点在する廃墟のうち、状態の良好な建造物は改築され、監視塔として運用されている。各監視塔には高度な警戒システムが搭載されていて、以下の防衛機構が確認された。


・戦闘用機械人形の駐在

 監視塔には戦闘用機械人形が配置されていて、夜間や視界不良の環境でも敵を感知し、排除できる。彼らは拠点内の指揮中枢とデータリンクを確立していて、定期的に最新の情報を受け取っているようだ。警備モードでは拠点周囲を徘徊しながら警戒するが、戦闘モードに移行すると、ターゲットへの追跡は執拗になる。


・ドローン監視網

 各監視塔には複数の哨戒ドローンが展開され、上空から廃墟の通りを監視している。これらのドローンは各種センサーを搭載し、熱源や動きを検知すると即座に警備システムに報告する仕組みになっている。状況次第ではドローン自体が攻撃指令を受け、内蔵兵器による威嚇射撃を行うこともある。


・ステルスセンサー群

 廃墟の通りには、瓦礫や放置された車両が点在しているが、それらの多くは防衛システムの一部として利用されている。目に見えない危険が潜んでいることを忘れてはならない。


 散乱する瓦礫の下や建物の壁面には無数の動体検知センサーが埋め込まれている。これらの装置は光学迷彩技術によってカモフラージュされ、視認することは困難だ。センサーはわずかな振動や熱変化を感知し、異常があれば即座に警備システムへ警告を発する。


・セントリーガン

 廃墟の各所に配置された自動砲台〈セントリーガン〉は、警戒範囲内のセンサーと同期している。侵入者が検知されると、ターゲットの位置情報がリアルタイムで砲台へ送信され、直ちに攻撃が実行される。砲台は自律制御モードに設定されていて、人間の指示を介さずに応戦することができる。


・警備用機械人形の巡回

 拠点周辺では警備用機械人形が巡回し、不審者を排除している。旧文明の資材が使われた装甲は厚く、一般的な武装では容易に破壊できない。活動範囲は広く、地下通路や廃墟の狭い路地にまで入り込むことが可能だ。そのため、拠点へ近づくには慎重な偵察が不可欠となる。


 廃墟もまた、ただの背景ではなく、意図的に利用され拠点の防衛機構の一部として機能している。無謀な者はセンサーに捕捉され、セントリーガンの標的となり、機械人形の巡回ルートに踏み込めば生還は難しい。このことから、〈ホワイト・ネスト〉は外部からの侵入を許さない要塞であることが、改めて証明された。


◆変異体の異常な減少

 廃墟に囲まれた拠点〈ホワイト・ネスト〉の周辺環境は異様な静寂に包まれている。通常、このような都市の残骸には、不死の変異体〈人擬き〉やや昆虫型の変異体が群れを成しているはずだ。しかし、この地域では驚くほどその姿を見かけることはない。まるで何かに恐れを抱いているかのように、変異体たちは拠点の外縁部より先へ進むことを拒んでいる。その理由について、現地調査を基にいくつかの仮説を立てることができる。


◆警備部隊の徹底した排除

 まず考えられるのは、拠点の警備部隊による絶え間ない掃討作戦だ。定期的に巡回する戦闘用機械人形や統率の取れた組織員が廃墟の通りを監視し、不審な個体を発見次第排除している可能性が高い。とくに警備ドローンの監視能力は卓越していて、高所から動体反応を検知し、監視塔からの狙撃が頻繁に行われていることも確認された。


 巡回する機械人形には専用の装備が搭載されていて、特定の生体構造に対する即死レベルの攻撃を実行することができる。結果として、〈人擬き〉が近づくことが困難となり、変異体が減少しているのかもしれない。


◆白蜘蛛の影響

 もうひとつの仮説は、拠点の異質な防衛機構である〝白蜘蛛〟の影響だ。報告では、拠点の主に従う巨大な蜘蛛が防壁周辺を守護しているとされる。その蜘蛛が変異体の捕食者として機能している可能性は否定できない。現に、拠点周囲の構造物の表面には白蜘蛛の糸が広範囲に張り巡らされていて、変異体がそれを警戒しているようにも見える。


 とくに昆虫型変異体がこの地域ではほとんど確認されない点は注目に値する。生物の本能として、白蜘蛛の存在に怯えている可能性は否定できないだろう。


 この地域で変異体の異常な減少が見られるのは、単なる警備体制の強化によるものではなく、拠点自体が持つ未知の影響が関係している可能性が高い。


 変異体は本能的に〈ホワイト・ネスト〉を避けているように見え、そのことが拠点の存続を飛躍的に向上させている。だが、その根本的な理由はまだ解明されていない。この拠点を恐れさせる要因とは何か――それを知る者は、拠点の主だけなのかもしれない。

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