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不死の子供たち・設定集  作者: パウロ・ハタナカ
第六部・遺跡

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050 第六部・地域〈汚染地帯〉


■汚染地帯


 汚染地帯は、旧文明の巨大階層都市群の崩壊によって形成された最も危険な地区のひとつになっている。雲に覆われるほどの超高層建築群は今もなお(そび)えているが、多くの建物が廃墟と化し、倒壊した建造物や堆積した瓦礫によって通行困難なエリアが広がっている。降りしきる雨水は崩落した壁面を伝い、滝のように下層へと流れ落ちていくが、地表に近づくにつれ深緑色の有毒霧が濃くなり、視界を遮られていく。


◆環境特性

 本地区の汚染濃度は壊滅的なレベルに達していて、特定の区画では未知の化学物質の高濃度流入が検出されている。これらの汚染物質の影響で地表の変色が進み、一部の廃墟内部では鍾乳石の形成が確認された。地層の変異に伴い、局所的な温度異常や地殻振動も頻発していて、探索者の安全は常に脅かされている状態だ。


 荒廃した区域は、かつての栄華の面影を残しつつも、今や死の領域と化している。高層建築群は雲を突き抜けるほどの高さを誇るが、都市の下層には濃緑色の霧が立ち込め、その霧には高濃度の有害物質と放射線が含まれている。放射性物質による光学現象も確認され、特定の区画では大気が青白い光を帯びている。現在では霧の影響範囲は都市下層のみに留まらず、風向きによっては高層にまで広がりつつある。


◆生態系の変異

 汚染の影響により、動植物は驚異的な変異を遂げている。最も頻繁に目撃されるのは巨大化し、凶暴化した昆虫種であり、とくに群生型の甲殻昆虫は極めて危険な存在になっている。この種は酸性物質を分泌し、装甲車両すら融解させる能力を持つ。また、廃墟に巣食う一部の〈人擬き〉は汚染物質に耐性を持つ危険な個体であり、視覚器官が完全に退化し、音波と微振動によって獲物を追跡する能力を獲得していることが確認された。


 汚染地帯では、極端な環境変異によって生物が奇怪な進化を遂げている。とくに昆虫類の変異は著しく、体長数メートルに達する驚異的な個体の報告もある。これらの生物は極めて攻撃的であり、生存競争の激化に伴い異常な適応を遂げている。


 確認済みの変異種のなかには、瞬時に皮膚を溶かすほどの酸を分泌する節足動物や多脚爬虫類、それに宿主を内部から侵食する共生型寄生種として進化した変異植物が確認されている。


 これらの生物は熾烈な生存競争の中で生き抜いていて、ほぼすべての有機生命を捕食の対象としている。汚染地帯に足を踏み入れた者の生還例はほとんどなく、スカベンジャーや傭兵の消息も途絶えている。


◆旧文明の遺構

 本地区には、旧世界の高度技術の残骸が数多く眠るとされる。高層建築群の最深部には、過去の研究施設や軍事関連施設の存在が確認されている。しかしながら、その調査を試みた探索者の多くは消息を絶っていて、生還した者は皆、精神錯乱状態に陥っているため詳細情報の取得は困難を極める。


 都市の主要幹線道路は瓦礫に埋もれ、通行が困難な状態にある。高層建築群に架かる空中回廊の崩落により、かつての道路網はほぼ全域で寸断されている。それらの道路沿いには、大量の多脚車両や装甲車両の残骸が放置され、内部には白骨化した遺体が残されている。防護服を着用したまま息絶えたことから、汚染濃度の異常な高さが(うかが)える。


◆未知の汚染物質

 汚染地帯では、通常の生態系では確認できない現象が報告されている。廃墟内の有害物質濃縮区域では床や壁の変色が顕著で、一部の構造物には鍾乳石状の物質が付着している。これらの結晶体には高濃度の有毒性があり、周辺一帯に生息する生物への影響が懸念されている。濃霧が立ち込める区画では通常の測定装置では検出できない粒子反応が確認されていて、旧文明期に由来する何らかの特殊技術が使用された可能性が示唆されている。


◆スカベンジャー活動

 汚染地帯には、多くのスカベンジャーや傭兵が価値ある遺物を求めて侵入している。しかし、この地域は生態系の異常だけでなく、旧文明期の自動防衛機構が未だに作動しているとの報告があり、探索活動の難易度をさらに高めている。特定の地域では戦闘用機械人形や自律型防衛ドローンが確認されている。


 汚染地帯は旧文明の技術遺構と異常生態系が混在する極限環境であり、調査対象としては非常に重要であり魅力的ではあるが、同時に最も危険な区域でもある。

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