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不死の子供たち・設定集  作者: パウロ・ハタナカ
第一部・廃墟の街
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04 組織・スカベンジャー組合


■スカベンジャー組合

〈廃品回収業者〉


◆組織

 文明崩壊後、都市は瓦礫と廃墟に変わり、食料や医薬品、衣料、電子機器などの資源を回収することが最も重要な生存手段となった。


 当初、個々のスカベンジャーが独自に活動していたが、廃墟探索の危険性が増し、暴力的な略奪者や変異体の脅威が高まるにつれ、生存率を上げるために団結するようになった。


 やがて生存者たちが集まり、〈スカベンジャー組合〉として本格的に活動するようになったのは、文明崩壊後、地上で安全に生活できるようになってから十年ほど経ったころだった。しかしそれでも、どの組合よりも早かったといわれている。


 初期の組合は緩やかな互助会(ごじょかい)に近く、情報共有や交易の場として機能していたが、時が経つにつれ、組織化され、専門的な訓練制度を持つようになった。


 また〈鳥籠〉の外に出て探索するさいには、身分証でもある〈IDカード〉を所持していない人間でも、〈鳥籠〉に再入場するための〝仮のID〟を申請してくれることもあるため、孤児や一部の人間から人気のある組合になっている。


◆組織の構造

〈スカベンジャー組合〉に所属するための条件はなく、目立った犯罪歴がなければ誰でも参加できる組織だが、生存者たちが安全に活動するために尽力する善良な組織でもある。以下のような階級が存在し、それぞれの役割を果たしている。


・見習い〈ルーキー〉

 孤児や新入りたちは、まず〈見習い〉として基本的な探索技術や戦闘技術を学ぶことになる。訓練はベテランたちによって行われ、基本的に無料だが、組合によって課せられた任務を一定期間こなすことが義務付けられている。


・探索者〈スカウト〉

 単独、または小規模なチームで探索を行うスカベンジャー。〈廃墟の街〉にある廃墟で資源を探し、持ち帰ることが主な役割だ。組合の任務を受ける必要はないが、回収した物資は組合で買い取ってもらえる。多くの商人が無学のスカベンジャーをカモにしているので、ソロで活動する〈スカウト〉の多くが組合の買い取り制度を利用している。


・隊長〈ベテラン〉

 探索部隊を率いることのできる経験豊富なスカベンジャー。探索にとどまらず戦闘経験が豊富で、略奪者や変異体への対処にも長けている。レイラは〈ベテラン〉になれるほどの実績を積んでいるが、〈スカウト〉として活動している。


〈ベテラン〉と認められた優秀なスカベンジャーには、組合から貴重な遺物の回収任務を与えられることがあるが、手に負えないほど危険な仕事だと判断すれば、任務そのものを拒否することも可能である。


 スカベンジャーを引退した〈ベテラン〉の多くは、見習いの教育係や事務員として組合にとどまり、わずかな電子貨幣(クレジット)を受け取ることで生活している。


・取引人〈ブローカー〉

 回収された物資の価値を判断し、組合を通じて売買を行う専属の商人。彼らは廃品の鑑定能力に長けていて、医薬品に関する知識や電子機器などの貴重品の修復・再利用の知識も持っている。しかし知識がある者の多くは、より稼ぎのいい商人になったり、技術者になったりするため、数が少なく貴重な人材になっている。


・組合長〈マスター〉

 組合に長年貢献してきた者たち。組織の方向性を決める立場でもあり、新規支部の設立や訓練方針の決定なども行う。複数の組合長によって、組織全体の今後を決めるための会議も行われている。〈ジャンクタウン〉の支部は古く、それなりの規模の組織になっていて、所属するスカベンジャーの数も他に比べて多い。


◆訓練と教育

 組合は単なる探索集団ではなく、荒廃した世界で孤立した者たちの受け皿としても機能している。そのため、訓練プログラムは多岐にわたる。


・探索技術の訓練

 廃墟の構造を理解し、崩落の危険がある場所を見分ける技術、鍵開けや略奪者たちが仕掛けた罠の解除方法を学ぶ。


・戦闘訓練

 略奪者や変異体、とくに〈人擬き〉と遭遇した際の戦術を学ぶ。銃器、近接武器、即席の武器の使い方も教えられる。しかし戦いそのものを避けるように指導されるため、〈傭兵組合〉に比べれば、お粗末な訓練になっている。


・資源管理

 食料や清潔な水の確保、医薬品の適切な使用方法、電子機器の回収方法や修理、再利用の技術を学ぶことになる。半導体など、雑に扱うことのできない遺物の多くは高額で取引されるため、資源管理は、とくに力を入れて教育を行うことになっていた。


◆組合の掟

 スカベンジャー組合には、いくつかの掟が存在します。


「奪うな、拾え」

 組合員同士の略奪は禁止されていて、他人が回収したモノは奪ってはいけない。


「死を恐れ、無駄死にするな」

 無謀な探索は許されず、危険な状況に陥った場合は撤退が優先される。


「拾ったモノには価値がある」

 たとえ屑鉄やボロ布でも、旧文明の施設で資源に変換できるため、捨てる前に必ず活用方法を考える。


◆他勢力との関係


・鳥籠

〈スカベンジャー組合〉のメンバーは〈鳥籠〉での主要な労働力でもあり、必要とされている人材だが、その多くが〈ゴミ拾いのネズミ〉と揶揄され、軽蔑されている。彼らが〈鳥籠〉に持ち込む貴重な物資が略奪者に狙われ、しばし争いのもとになるためでもあるが、それはスカベンジャーたちの責任ではない。


・各組合

 いくつかの組合とは協力関係にあるが、良好な関係とは言えない。


・略奪者

 スカベンジャーの物資は彼らの標的になりやすく、襲撃が絶えない。スカベンジャーの中には、傭兵団に所属したり、略奪者に寝返ったりする者もいる。


・不死の導き手〈宗教団体〉

 文明崩壊後の世界では、狂信的なカルト団体が活動していることもある。スカベンジャーは彼らとは距離を置き、関わらないようにしているが、時には物資を巡って衝突することもある。


・変異体

 餌であり、非常食である。廃墟の中で身動きができなくなった〈人擬き〉や変異した昆虫の栄養源であり、その生活に欠かせない存在だ。

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