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不死の子供たち・設定集  作者: パウロ・ハタナカ
第四部・謀略

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038 第四部・砂漠地帯


■地域


◆砂漠地帯調査記録


調査日:██年█月█日

調査責任者:第七遠征隊所属:█████████

調査地点座標:[北緯35.██████ 東経139.██████]


・概要

 本報告書は、〈砂漠地帯〉における調査活動の詳細を記録したものである。調査隊は、爆撃によって生じたクレーター地帯を進み、超自然的に発生した〝空間の歪み〟の影響を調査することとなった。〝こちら側〟の世界との境界に位置する〝歪み〟を通過し、異界へ足を踏み入れると、広大な〈砂漠地帯〉が広がり、砂の波が視界を曖昧にしていた。


 さらに進むと、奇岩が密集して立ち並ぶ地域にたどり着き、その岩肌には浸食による特異な模様が刻まれているのが確認できた。やがて調査隊は赤茶色の岩壁が(そび)える地域へと到達したが、その地の構造は通常の地質学的法則では説明できないものだった。〈砂漠地帯〉は未知の環境特性を持ち、我々の世界との境界が曖昧であるため、慎重な観察と詳細な記録が不可欠となるだろう。


◆クレーター地帯

 横浜中華街を中心に広がる領域は、瓦礫と崩壊した建造物の断片が無秩序に散乱する荒廃地帯になっている。かつて都市の繁栄を支えていたはずの構造物は、経年劣化により崩壊が進み、砂に埋もれつつあった。強風が吹き抜けるたびに、細かな砂粒が舞い上がり、視界はぼんやりと曖昧になる。


 爆撃の痕跡は今なお鮮明に残され、巨大なクレーターの縁には、瓦礫の山や焼け焦げた金属片が無数に突き刺さっている。その瓦礫の間を慎重に進むと、微量ながら放射線が検出され、ここがかつて都市部だったことが裏付けられた。


 特筆すべきは、一部の瓦礫が異界特有の物質へと変異しつつあることだ。それらは通常の岩石とは異なり、表面が滑らかで、わずかに光を反射する性質を持つ。まるで陽光を蓄えるように、微かに脈動する微光を放つものもあった。調査隊は慎重に採取を進め、その成分を分析する予定だ。


◆砂丘地帯

・調査地点座標:[北緯█████████ 東経██████████]


 砂丘の高さは平均十二メートル、最大で二十六メートルに達するものも確認された。砂は極めて細かく、手のひらで掬うとさらさらと流れ落ちる。驚くべきことに、触れた瞬間ひんやりとした感触が伝わる。異界特有の性質を持つこの砂は熱を蓄えず、昼夜を問わず冷たさを保持しているようだ。


 昼間の気温は平均摂氏41度に達し、灼熱の太陽が容赦なく砂丘を照りつける。しかし、夜になると一転して気温は摂氏‐8度まで低下し、冷たい風が砂粒を舞い上げる。隊員の報告によると、地表で微かな発光現象が確認された。これは微細な鉱物が星光を反射しているためと推測されるが、発光の強さには微妙な変化があり、周期的に明滅を繰り返す地点もあった。


 深夜、隊員のひとりが砂丘の稜線上を滑るように移動する影を目撃した。仮称〈砂影〉と名付けられたこの未知の現象は、音も立てずに動き、砂の流れと一体化するように稜線を滑走していた。接触は試みず、慎重な観察を続けたが、その正体や生態については未だ不明である。


◆奇岩の森

・調査地点座標:[北緯█████████ 東経██████████]


 この区域には、高度二十メートルを超える奇岩が多数存在し、長年の風化によって異形の姿へと変貌していた。鋭利な突起を持つもの、ねじれた柱のようなもの、まるで意図的に彫刻されたかのような造形――どれも異界特有の不気味な美しさを湛えている。


 調査隊は、岩の表面に刻まれた古代文字のような浮彫を発見した。一部は我々の世界で知られる文字体系と類似しており、この異界の起源に関する重要な手がかりとなる可能性がある。浮彫は時間の経過によって摩耗しているものの、光を当てると浮かび上がるという性質を持ち、未知の技術によって、未知の物質に刻まれた可能性も考えられる。


 さらに、地磁気の異常値が記録された。磁場は極めて不規則であり、方位計の精度が著しく低下し、測定値が常に変動していた。調査隊が岩の間を進むと、方向感覚が急激に混乱し、何度も同じ地点へ戻る現象が頻発した。これは異界特有の空間構造によるものと推測されるが、詳細は未だ不明であり、慎重な分析が求められる。


 この奇岩群には、時間的異常█████を示唆する痕跡が隠されている可能性がある。調査隊は、さらなる探索と解析を進めることを決定した。


◆断層地形

・調査地点座標:[北緯█████████ 東経██████████]


 高さ六十から百五十メートル以上の巨大な岩壁が連なり、その表面には過去の文明の痕跡と思われる浮彫が刻まれていた。文字は風化しつつも、その配置には一定の秩序があり、まるで歴史の記録がこの地に封じ込められているかのようだった。


 調査隊は慎重に〝碑文〟の解読を試みたが、完全な意味の特定には至らず、相当な時間を要する見込みだ。一部の文字は、微かに我々の世界の古代言語█████に類似しているものの、明確な関連性は未だ不明である。


 壁面には多数の裂け目が走り、まるで谷間へ誘うかのような暗い亀裂が続いている。その奥には、さらに異界の深部へと繋がる道が存在する可能性がある。しかし現在の装備では進入は極めて危険と判断された。慎重な観察の結果、亀裂内部からわずかに空気が流れ出しており、その奥に何らかの空間が広がっていることが示唆された。


 現状では岩壁を越えた探査は困難であり、さらなる準備と詳細な計画が求められる。次回の遠征では、より高度な調査機器を用い、この異界の奥深くに潜む謎を解き明かすことを目指す。


◆砂漠地帯の調査報告

 砂漠地帯は、我々の世界とは根本的に異なる環境特性を持ち、未知の現象に満ちている。この地では自然法則が歪み、空間そのものが不安定な領域が点在している。とくに奇岩の森における空間歪曲の影響と、赤茶色の岩壁に刻まれた碑文は、この異界の起源に迫る重要な手掛かりとなる可能性がある。


 異界の謎を解明するためには、さらなる調査が不可欠である。次回の遠征では、岩壁の内部へと踏み入り、その先に広がる未知の領域を探索する予定だ。そこには、この異界の秘密を解き明かす鍵が眠っているかもしれない。


・注釈

 この報告書は、機密に指定された調査報告書を基に作成されたものであり、その内容が必ずしも正確であるとは限らない。

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