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不死の子供たち・設定集  作者: パウロ・ハタナカ
第三部・異界

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028 第三部・サイバネティクス


■技術


◆インプラント技術の概要

 文明崩壊以前、かつて存在した高度情報社会において開発された技術です。人間の能力を機械的に補強・拡張することを目的としていましたが、文明崩壊後も形を変えて受け継がれてきました。


・インプラントの種類


・インターフェース・プラグ〈ニューラル・リンク〉

 旧文明期のネットワーク〈データベース〉に直接接続し、情報を即座に取得・伝達できる技術です。従来の端末を介した通信とは異なり、このインターフェース・プラグは脳神経に直接リンクし、使用者の思考をデータとして処理することができます。


 体内に埋め込まれる〈生体チップ〉は、生体適合性ポリマーと微細な神経伝達フィラメントで構成されていて、装着者の脳と一体化する設計になっています。これにより、音声や映像だけでなく、純粋な思考を介したコミュニケーションが可能となります。


 上位モデルには〈AIエージェント〉が標準搭載されていて、使用者の思考パターンを学習しながら、最適な情報整理や意思決定を支援する機能が備わっています。〈データベース〉にアクセスすることで、〈ライブラリ〉の閲覧も可能になっています。


 しかし、この技術には危険も伴います。ネットワーク内に潜む未解析データによる情報汚染、外部からのハッキングによる思考の改変、そして過度な使用による精神への負担などが考えられます。インターフェース・プラグを装着した者は、より高度な知識を手にできますが、より多くのリスクを背負うことになります。


・チップ・ソケット

 新たな機能のインストールや、端末との接続に使用されます。ソケットに装着されるチップは、個々の能力を拡張するカスタマイズ可能なモジュールであり、視覚補助、記憶増強、戦闘支援など、多様な用途に適応しています。


 チップのインストールは専用デバイスを介して行われ、高度な暗号化と生体認証を必要とするため、不正利用のリスクは低減されている。しかしチップが破損した場合やハッキングを受けた際には、人格や行動に影響を及ぼす危険性も確認されています。


 この小型のインターフェースは、首の後ろや側頭部に埋め込まれ、使用者の生体電流を利用して機能します。耐久性の高い合金と生体適合ポリマーで構成され、外部からの衝撃にも耐える設計となっています。


・神経促進ユニット〈軍用規格〉

 人体の伝達速度を極限まで引き上げることで、生存率を向上させる技術です。脊髄や神経節に直接接続することで、脳からの指令が通常よりも数倍の速度で伝達され、装着者は時間の流れを制御できるかのような感覚を得ることになります。


 敵の攻撃を予測し、視覚情報が処理される前に回避することが可能となり、まるで予知能力を持つかのような反応速度を発揮することができます。


 この技術は特殊部隊や戦闘員を中心に導入されていますが、その恩恵は単なる反射速度の向上にとどまりません。神経促進ユニットは装着者の動作パターンを学習し、動きの最適化を行うことで、直感的な操作が可能になります。敵の行動を先読みし、身体が自動的に回避行動を取ることで、戦場において圧倒的な優位性を獲得できるようになります。


 しかし、その恩恵には危険が伴います。長時間の使用により神経系が過剰刺激されると、制御不能な痙攣が発生し、最悪の場合、神経断裂による機能喪失が起こる。また、ユニットによる強化を受けた脳は通常の伝達速度では満足に動作できなくなり、ある種の依存症を引き起こすことも確認されています。


・痛覚遮断チップ

 戦場の混乱、極限状況下の決断、耐えがたい痛み――それらはかつて、人間の行動を制約する最大の要因でした。しかし痛覚遮断チップの登場により、状況は変わりました。この装置は脊髄や脳幹に直接接続され、神経信号を制御することで一時的、あるいは恒久的に痛覚を遮断します。


 チップにはふたつの作動モードが存在します。自動作動モードでは、一定の痛覚閾値を超えた際に即座に遮断が開始されるため、不意の負傷にも冷静な意識を保ったまま行動できるようになります。一方で、手動制御モードでは使用者の意思に応じて痛覚を制御できますが、誤作動を防ぐための安全装置が組み込まれています。


 これにより、不用意な痛覚遮断が起こることはなく、状況に応じた最適な選択が可能となります。しかし、痛覚を消し去ることは決して無条件の恩恵ではありません。痛みのない状態に慣れすぎた者は、負傷の深刻さを認識できず、知らぬ間に致命傷を負うことになります。神経適応異常により、遮断を解除しても痛みを感じられなくなるケースも報告されています。


・避妊インプラント

 無法者が支配する混沌とした世界で、避妊インプラントは個人の選択と尊厳を守るための重要な技術になっています。この小型デバイスは皮膚下に埋め込まれ、ホルモン分泌を制御することで望まぬ妊娠を防ぐ仕組みを持つ上位モデルと、睾丸、あるいは子宮に直接埋め込まれるタイプが存在します。


 目立たない設計と生体適合性の高い素材により、装着者の日常生活に影響を与えません。使用者の体調やホルモンバランスに応じて効果を自動調整する機能を備えているので、専門知識は必要ありません。一度の埋め込みで数年間の避妊効果を維持できるため、極限状況下でも安心して行動できます。


 また、装着者の健康を最優先に考慮した設計により、副作用を最小限に抑える工夫が施されています。


◆サイバネティクス技術の概要

 インプラントが〝内部拡張〟なら、サイバネティクスは〝外部強化〟が主な機能になっています。本来は治療用装具として開発された技術ですが、旧文明期の技術発展に伴い、純粋な機能強化を目的とした製品も登場するようになりました。


 身体改造が一般化するにつれ、特定の階級や集団においては社会的ステータスの象徴やファッションの一環としても利用されるようになりました。


 体外に装着、移植された機械式パーツの総称でもあります。義肢や視覚装置だけでなく、人工皮膚、恒久的に光る刺青、水中呼吸補助器官、皮下装甲など、その種類は多岐にわたります。本来は医療目的で開発された技術でしたが、文明崩壊後は武器としての利用や個性の表現、生命維持装置としても活用されるようになりました。


・サイバネティクスのカテゴリと詳細


・義肢

 義手は強化骨格と人工筋繊維によって、鉄を折り曲げるほどの力を獲得できます。内蔵バッテリーで稼働。モデルによっては小型チェーンソーやレーザーガンなどが搭載可能になっています。


 高反発素材と姿勢制御センサーを備えた義足は、高速移動や垂直跳躍が可能になります。戦闘用には衝撃吸収素材とブレード展開機能を持つタイプも存在します。


・義眼〈人工眼球(バイオニック・アイ)

 赤外線・紫外線・暗視・ズーム機能を備えた多機能光学装置。状況によって視界モードを切り替え可能になっています。また視界情報の保存、再生も可能になっています。ただし、記憶容量の限界があるため、追加の〈メモリ・チップ〉が必要になります。


・呼吸補助装置〈人工エラ〉

 首筋に設置可能な濾過装置です。水中の酸素を取り込むことが可能で、数時間の連続潜水が可能になります。


・鼻孔フィルター

 空気中の有害ガスや粒子状物質を吸い込まないようにして、呼吸器を守る効果があります。しかし、あくまでも簡易的なフィルターであるため過信は禁物です。


・皮膚

 人工皮膚と皮下装甲を組み合わせることで銃弾の貫通を防ぐ耐衝撃層を形成することが可能になっています。肌色や質感を自由に変えられます。モデルによっては、高熱などにも耐性があります。


・刺青

 生物発光に似た仕組みにより生成される皮下発光素子によって、恒久的に光を放つことが可能になっています。


・その他多数の製品が存在します。


◆サイバーウェア技術の概要

 サイバーウェアとは、旧文明の軍事技術の遺産から派生した外装型戦闘用義体拡張装置です。〈サイバネティクス〉との違いは呼称だけでなく、そのすべてが戦争のために作られたという点で根本的に異なる製品になっています。


 基本的に軍用規格で設計されていて、流通量は極端に少なく、民間では原則的に流通していませんでした。その強力な戦闘性能の代償として、使用者の精神に深刻な負荷を与える副作用が確認されています。


・サイバーウェアのカテゴリと詳細


・知覚・思考拡張・前頭葉補助処理装置

 頭部に外付けする神経演算ユニットです。状況認識・戦術構築・情報処理を行います。使用中は、まるで世界が止まったかのような感覚に包まれます。使用を繰り返すことで現実感覚が崩壊し、精神に異常をきたします。


・敵対識別用視覚強化マスク

 義眼と併用することで脳内の敵意判断アルゴリズムに基づき、視界に多数の情報を表示するようになります。強力な戦術支援を提供しますが、敵味方の識別が曖昧になる錯乱症状が確認されています。


・装着式骨格強化システム

 体内に埋め込まれた装置に沿って装着する補助骨格です。動作補助アクチュエーターにより、重量物の運搬や高速移動を実現します。注意点として、外部電源や内蔵バッテリーが切れると逆に動きが制限されることがあります。


・高度環境対応人工皮膚

 有毒大気、極寒、高放射線、乾燥地帯など、特殊環境下に対応した人工皮膚です。呼吸フィルター、体温調整など、さまざまな機能を備えますが、全身の手術を必要とするため、医療組合の本部など、限られた施設でのみ移植が可能です。


・装着式戦闘補助ユニット

 背中や腰部に装着される武装プラットフォームです。火器、センサー、ドローンなどを接続し管理可能になります。


・知覚拡張装備〈デジタルHUD〉

 頭部に装着する情報処理・視覚支援装置です。〈インターフェース・プラグ〉によって、脳波とリンクします。


・拡張型リストツール

 前腕部に装着する多目的作業装置です。技術者や探索者に必須の装備です。〈接触接続〉により、端末への接続や電子錠の解錠に使用されます。


・その他多数の製品が存在します。


◆注意

 長期使用による肉体の変形や依存による幻覚症状なども報告されています。


・依存症

 身体改造が常態化し、素体の肉体感覚が失われる精神的後遺症が存在します。サイバーウェアの神経接続は、脳の深部に負荷をかけ続けます。使用頻度や装着時間が長くなるほど、神経は過剰な信号とストレスで〝焼け焦げる〟ことになります。


 常時の幻聴や幻覚に悩まされることになり、刺激を得るため、常に敵を求めるようになります。また、自分が人間か機械かの区別がつかなくなる身体の認識喪失に確認されています。


◆原因

 精神崩壊の原因は不明です。複数の要素、ストレス、神経信号の不調、過去の記憶の断裂などが複合的に絡み合っているとされています。


 一説には、旧文明の兵士に施された〈感情抑制ナノチップ〉との互換性による不完全作動が関与しているとも言われています。また、軍用規格のインプラントと併用された場合の発症率が高いという報告もあり、精神と機械の接続バランスが重要と考えられています。

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