024 第三部・機械人形
■技術・兵器
◆調査報告書・〈アサルトロイド〉警備用機械人形
・所有組織〈レイダーギャング〉
・職人〈メカニック・エンジニア〉
ジュリアン・フォーリー
・所属
第七工場兵器研究所〈ジャンクタウン〉
記録対象の機械人形は、略奪者によって改造された〈アサルトロイド〉だ。この機体は、元々企業の社屋や都市警備のために設計され、暴徒鎮圧を主目的として設計されていたようだ。女性的で優雅なフォルムと高い戦闘能力を兼ね備えていた。
しかし、目の前に存在する改造個体は、その洗練された美しさを失い、見る者に――ある種の不快感を抱かせる改造が施されている。
この機械人形は企業イメージを損なわないため、曲線を描く女性的なフォルムを有し、その外観は芸術的とも言える美しさを備えていた。磨き上げられた装甲材と最先端の合金により高い耐久性を誇り、腕部には暴徒鎮圧用のゴム弾発射装置が装備されていた。また、必要に応じて殺傷力の高い〈レーザーガン〉への換装も可能になっていたようだ。
しかし改造後の状態は最悪だ。外観の美しさは完全に損なわれ、全身には奇妙な飾り付けが施されている。物語に登場する怪物サイクロプスを模したようなデザインが特徴的だったカメラアイには、専用のマスクの代わりに人間の頭蓋骨が無造作に取り付けられていた。関節部のフレームはむき出しの状態にされ、卑猥な絵が描かれた鉄板が粗雑に溶接されている。その結果、元々の精巧なデザインとはまるでかけ離れた、無秩序で不気味な外観へと変貌している。
兵器システムにも変更が加えられているようだ。片方の腕には鋭利な刃物が取り付けられていて、近接戦闘能力の向上が図られている。その刃は錆びついているものの、一振りで〈人擬き〉を切り裂くだけの威力を持つと考えられる。
もう片方の腕には〈レーザーガン〉が取り付けられていた。精密な遠距離射撃を行うためのセンサー類は、標準搭載されている軍用規格のものではなく、代わりに安価な民生品が使用されているようだ。さらに、改造によって〈レーザーガン〉の出力は不安定になり、強力な一撃を放つことができるものの、エネルギー効率は著しく低下している。その結果、従来の性能に比べて運用上の信頼性が大幅に損なわれている。
その他の改造には、外装として追加された鉄板の装飾や野生動物の骨が確認できるほか、機体内部の機構にも未確認の改造が施されているようだ。これらの改造による影響で、機体を制御するためのプログラムにも異常が確認されている。
レイダーギャングによって改造された機体は、視覚的な恐怖と不気味さを煽り、敵を精神的に圧倒する目的で改造されていると思われる。その飾り付けに使用された欠けた頭蓋骨や落書きは、略奪者の倒錯的な美学を体現しているともいえる。
略奪者による改造は、〈アサルトロイド〉を元の警備用途から完全に逸脱させ、戦場における凶悪な殺戮兵器として作り変えている。この機体の存在は、技術の悪用と倫理の欠如が招く危険性を示していて、その根本的な解決には職人組合の働きかけだけでなく、略奪者に物資の横流しを行う商人組合に対する抗議も必要になるだろう。
◆調査報告書・戦闘用機械人形
・所有組織〈不明〉
・職人〈メカニック・エンジニア〉
ジュリアン・フォーリー
・所属
第七工場兵器研究所〈ジャンクタウン〉
ヨシダさんのジャンク屋で部品を調達している際、戦闘用に改造された軍用規格の機械人形を偶然調査する機会を得た。この機体は、高度な防護装甲と並外れた機動性を兼ね備えていて、戦場において効率的に敵を排除することだけを目的として設計された兵器だった。その外観と機能は、旧文明の技術力の高さを示すとともに、機械人形が戦場でいかに重要視されていたかを如実に物語っている。
特徴および外見については、金属骨格と複合装甲による無駄を排したシンプルな設計が際立っている。機体全体を覆う複合装甲は、優れた耐久性を誇り、金属骨格の各部をしっかりと保護している。装甲は侵食や損傷への耐性が極めて高く、あらゆる攻撃を想定して緻密に設計されている。その結果、この機体は堅牢性と実用性を兼ね備えた非常に洗練されたデザインとなっている。
その機体は濡羽色のポンチョを装備していたが、深いスリットが入っているため、動きの妨げになる要素を最小限に抑えつつ、隠蔽性と――ある種の美学を両立させていた。
関節部を覆うストレッチ性の高い布地の素材には、防塵、撥水機能に優れた特殊な保護素材が使われ、あらゆる環境でも活動できるように考慮され、また人間の関節に似た動きが可能になっていた。この設計により、機体の動作に不自然さは一切感じられない。
各種センサーが搭載された頭部は、専用のマスクに包まれていて、高い防御性能を誇る。半透明のフェイスシールドが上方に開くと、頭部前面を覆う装甲パーツが左右に展開し、その内部から顔面中央部にある紺碧色のレンズが姿をあらわす。昆虫の複眼を彷彿とさせる光学機器類には、多目的カメラモジュールが採用され、複数のモードに切り替えて最適な画像と情報を取得できるようになっている。
また各関節には特殊な磁場コーティングが施されていて、反応速度と動作の精度を劇的に向上させているようだった。これにより、人間のような滑らかな動作と機動性を実現していた。
機体の動力源として、〈小型核融合ジェネレーター〉が搭載されているようだ。この動力源は高い安全性が確保されていて、暴走のリスクがないとされている。長時間の戦闘活動が可能になり、安定したエネルギー供給も行えるが、高価なものなので手を出す気にはなれない。
主兵装として角張った形状のレーザーライフルが装備されている。この武器は銃器というより、先進的な工具に似た外観を持つ。灰色を基調とした塗装が施され、ストック部分は黒で、光学照準器と角張った消音器が標準装備されている。肩に搭載された管制システムにより、高精度な射撃が可能で遠距離攻撃も問題なく可能となっている。
この戦闘用の機械人形は、高度な技術と美学が融合した兵器であり、その設計はあらゆる戦場での戦いを想定していることが分かった。動力源の安定性や武装の多様性、機動性の高さにより、その戦闘能力は他の兵器の追随を許さない。少なくとも、レイダーギャングの兵器に後れを取ることはないだろう。




