014 第二部・技術・その他
◆IDカード
〈旧文明の遺産と新たな支配の象徴〉
文明崩壊後の社会では、IDカードは個人を特定し、組織との関係を明確にする重要なツールになっています。このカードは、各組合に所属することで初めて発行されます。カードを取得するさいには、個人情報の登録が必要で、名前、年齢、性別といった基本情報に加え、以下の項目が記録されます。
・貢献度と実績
所属する組合で、どのような成果を挙げたのかが詳細に記録され、個人の能力や信用度を測る基準にされます。
・犯罪歴
鳥籠内や各共同体で罪を犯した者には、その記録が明確に刻まれる。この情報が記載されたIDカードを持つ者は、鳥籠や交易拠点への出入りが厳しく制限されます。
ただし、これらのシステムは一見完璧に見えても、いくつかの脆弱性を抱えています。カードの情報は〈データベース〉ではなく、各組合が保有する独自の端末で登録・管理されているため、データの統一性や一貫性に欠けています。また、旧文明期以前の技術がベースになっているため、それなりの技術力があればカードの偽造は決して難しくありません。
そのため、偽造したカードを使って鳥籠に侵入する者は後を絶ちません。この事実は、各組合間の緊張を生み出す要因にもなっていますが、あえて偽造を見過ごすことで、新たな人材の流入を許容する組合も存在します。
◆超小型核融合ジェネレーター
作業用ドロイドや戦闘用機械人形のエネルギー源として機能する高性能なバッテリーです。旧文明ではすでに枯れた技術とされ、安全性が確立されているため、損傷による核暴走や不意の爆発といった危険性は排除されています。しかし意図的に操作することで爆発させることは可能であり、その点では潜在的なリスクを孕んでいます。
文明崩壊後の世界では、このジェネレーターのほとんどが故障、または破壊されていて、現存するものはスカベンジャーたちによって回収され、闇市場で高価な取引対象になっています。そのため、廃墟と化した街で新たに発見される可能性は極めて低いです。
その一方で、自動化された無人工場では、現在もジェネレーターの製造が続けられていることも確認されています。組合の資格を持ち〈販売所〉にアクセスできる者なら――高価ではありますが、ジェネレーターを入手することが可能になっています。
またジェネレーターは〝核融合〟と呼称されていますが、完全に自己完結した装置ではありません。専用の充電装置を使って再充電を行う必要があり、この装置もまた希少なテクノロジーであるため、正しく運用できる組織は限られています。
◆アサルトロイド
警備用の機械人形として開発されていて、高度な技術を誇る機体です。女性を思わせる優美なフォルムを持ちながら、その全体は冷たい黒鉄色の装甲で覆われていて、見る者に威厳と恐怖を同時に与えます。洗練されたデザインと強力な機能を備えたこの機械人形は、かつて都市や企業の重要施設の防衛に広く使用されていました。
・外観と特徴
頭部は防弾仕様のフルフェイスマスクで保護されていて、ギリシャ神話の生物〈キュクロープス〉を彷彿とさせる巨大なレンズを備えています。このレンズは各種センサーやターゲットスキャニング機能を内蔵しています。そのデザインは優雅でありながら実用的で、敵を威嚇しつつも、一度見たら忘れられないような設計になっています。
・武装と性能
アサルトロイドは非常に高い戦闘能力を有していて、特定のモデルには殺傷力のある〈レーザーガン〉が搭載されています。これにより、近距離から遠距離まで柔軟に対応できる優れた火力を発揮できます。また、その機敏で流れるような動作は人間らしさを思わせるだけでなく、人間のために設計された多くの施設で抜群の機動性を発揮します。
・文明崩壊後
文明崩壊後の現在では、地上で活動していたアサルトロイドは故障や破壊によりその役目を終えましたが、稀に稼働可能な機体が発見されることがあります。その多くはかつての警備対象を守り続けるプログラムで動作していて、無差別的な攻撃を行うこともあるため接触には注意が必要です。一部の傭兵団や略奪者たちは、これらのアサルトロイドを修理し、自らの護衛や戦力として再活用しています。
◆秘匿兵器〈ハンドガン〉
謎に包まれた旧文明の遺物です。
秘匿兵器〈ハンドガン〉は、旧文明の軍人に支給されていた高度な技術を結集した小型の火器です。この兵器は通常の武器とは一線を画していて、その使用には特定のID情報が必要とされています。しかし文明崩壊の混乱の中、なぜかこの兵器はID登録されることなく金庫に保管されていました。
最大の特徴は、特殊な合金を弾倉として利用し、射撃時に選択した弾薬が瞬時に生成される仕組みです。この驚異的な技術は信じられないほどの効率性を誇り、所有者が必要に応じて多種多様な弾薬を使い分けることを可能にしています。〈自動追尾弾〉や強力な〈貫通弾〉、さらには非殺傷弾まで瞬時に生成できる点は、従来の火器にはない画期的な性能です。
また従来の兵器とは異なり、不死の変異体〈人擬き〉にも有効な殺傷能力を持っていることが確認されています。〈人擬き〉の再生能力や耐久性を打ち破る特殊なナノマシンを含んだ弾薬が生成される仕組みになっていて、文明崩壊後の世界で生き残るための重要な兵器になっています。
秘匿兵器は謎に満ちた存在であり、詳細な情報や技術的背景を知るには高度なアクセス権限が必要とされます。権限を持たない者や研究者がその内部構造に触れることは難しく、使用者にとっては〝使えるが完全には理解できない〟未知の道具になっています。
文明崩壊後の世界においても、秘匿兵器は希少価値のある遺物になっていますが、適切なID情報を持たない者にとっては、利用できない兵器でもあるため、ジャンク品と変わらない値段で取引されていることがあります。
【選択可能弾薬】
・通常弾〈炸裂弾頭〉
〈非炸裂弾頭〉
・ライフル弾〈炸裂弾頭〉
〈非炸裂弾頭〉
・ショット弾〈標準散弾〉
〈焼夷散弾〉
〈スラッグ弾〉
・自動追尾弾〈標準弾頭〉
〈徹甲弾〉
・火炎放射
・ワイヤーネット
・小型擲弾
【使用者制限あり】
〈各種■■■■専用弾頭〉
・貫通弾〈対物弾頭〉
・反重力弾〈■■■■専用弾頭〉
・重力子弾〈■■■■専用弾頭〉
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◆〈データベース〉
インターネットの進化形として、旧文明期に再構築されたシステムです。セラエノ・ネオネット・メタバース・戦術データ・リンクなど、いくつものネットワークが統合されています。
◆情報端末〈パーソナルデバイス〉
〈データベース〉に接続するために使われます。〈対話型AIエージェント〉をインストールしているため、読み書きができなくても簡単に操作できます。
◆多脚車両〈ヴィードル〉
旧文明の建設現場や森林作業、軍事用途に使われていた多目的車両です。瓦礫に埋もれた街での移動手段として重宝されています。




