大事な写真
放課後。
聖也と教室で話していると、聖奈がジャケットを返しに来た。
ちょうど俺達2人しかいなかったから、聖奈に教室に入ってくるように言った。
彼女は恐る恐る上級生の教室に入る。
そんなにびくびくしなくていいのに。
もし先生に見つかって怒られたら、兄のせいにすればいい。
俺のせいにしてもいいけど、俺は聖也のせいにする。
ジャケットを返されてすぐに、俺はポケットを探った。
生徒手帳を取り出す。
もしかしたら、聖奈は俺の生徒手帳を見たかもしれない。
見られること自体はどうだって良い。
学生証の写真写りなんて気にしたことないし、手帳に何か書き込んでいるわけでもない。
ただ、手帳には聖奈と撮ったチェキをはさんでいた。
聖奈は写真がそもそも苦手だ。
入学式の時だって、嫌々、仕方なくといった様子で撮られていた。
写真嫌いで恥ずかしがり屋の聖奈が、あのチェキを見つけたら...手帳から抜いてしまうかも。
「写真は?」
案の定、写真はなくなっていた。
聖奈は知らないふりをしている。
そんなわけがない。
朝はちゃんとあった。
毎朝学校行く前に、俺はあの写真を眺めてるんだ。
「挟んであったでしょ? 写真返して。返さないと殺す」
俺が少し脅すと、聖奈はあっさり認めた。
写真は捨てたと言う。
俺の写真!
なんで勝手に捨てるんだよ!
「だって、あんな可愛くない写真...恥ずかしいんだもん!」
聖奈がなんでそんなに自分に自信がないのかわからない。
こんなに可愛いのに。
毎日褒めてやらないとダメか?
「写真ってなんの話?」
今まで黙っていた聖也が、話に入ってきた。
「俺と聖奈の写真」
「ああ、帝翔が欲しいって言って、俺があげたやつ?」
そう、俺が欲しいって言った。
聖奈のセーラー服姿がすごく似合ってたから。
幼馴染が可愛いだなんて、自慢になる。
眺めるだけで幸せな気持ちになれる。
だからあれは大事な写真だったのに。
それを勝手に捨てるだなんて!
「まあまあ。もう一回撮ればいいじゃん。俺チェキ持ってきてるし」
聖也はそう言ってカバンからチェキを取り出す。
「嫌! 写真なんて撮りたくない!」
喚く聖奈を逃がさないよう、俺は後ろから抱きつく。
...勢いで抱きついてしまった。
女の子の体を触ったのは初めてだ。
なんだか緊張してきた。
長い髪から、シャンプーの香りがする。
女子ってこんなに良い匂いがするのか。
ずっと嗅いでいたい。
持って帰りたい。
抱き枕にして一緒に寝たい。
「聖也、今だ。写真撮れ」
逃げようとする聖奈をしっかりと腕で捕まえる。
俺が正気でいる間に早く撮って欲しい。
心臓が痛い。
生徒会代表で全校生徒の前に立つ時より緊張する。
「...そこまでして写真撮りたいか?」
聖也が呆れている。
「聖奈と撮りたい。2人で撮った写真、他に無いから。いつも邪魔が入るし」
「邪魔って俺かよ」
子供の頃からよく遊んでたし、聖奈が写ってる写真は家にあるけど、2人きりはない。
聖奈とのツーショット写真は使える。
主に「彼女いるの?」と聞かれた時。
同性に見せればマウントがとれるし、異性に見せれば女避けの壁になる。
聖也はシャッターを押した。
俺は撮ったチェキを受け取って、写真が浮かび上がるのを待った。
「いいね、可愛い」
浮き出てきた写真に俺は満足する。
どう見たって恋人同士にしか見えない。
「後生大事に持っとくよ」
早速バスケ部の連中に自慢してやろう。
皆の悔しがる顔が楽しみだな。




