アイスクリーム
探ってみよう。
聖奈が本当に俺のことが好きなのか。
「聖奈はどんな人がいいの?」
俺は内心ドキドキしながら、平静を装ってカバンからタオルを取り出した。
季節は春...暑いわけではない。
バスケをした時の汗はとっくに乾いてる。
何故かじっとしていられなくて、かいてもない汗を拭いた。
「私は...私が何があった時に、守ってくれる人がいいです。騎士みたいな人」
「へえ。じゃあ、俺じゃん」
やっぱり聖奈は俺のことが好きなんだ!
聖奈は虫が苦手だ。
夏なんて地獄。
地面に落ちている蝉やカナブンにヒィヒィ言って、トンボが日傘にとまれば大騒ぎ。
蚊にすら怯えて殺せないのだから、いつも俺が倒している。
どれだけ守ってきてやったことやら。
「昔、近所の子供にいじめられたことがあって。それを助けてくれた男の子がいるんです。私、その人が今でも憧れで」
やっぱり俺だ!
公園で虐められていたのを、俺が助けてやったじゃないか。
幼稚園の頃の話だから、俺が忘れていると思ったのか?
「もしかして、お前の憧れの人って俺? 俺のこと好きなわけ?」
「ち、違います!」
いや、どう考えたって俺だろ。
そうかそうか、実は密かに憧れていたなんて嬉しいな。
聖奈なら見た目も悪くないし、家も金持ちだし。
俺に相応しい女ではある。
唯一の問題点が、父さんの元カノの娘だってことだ。
...まあ、聖奈がどうしてもと言うのなら、父さんを説得したって構わない。
「俺と付き合いたいなら考えてやってもいいよ」
「本当に違いますから! 考えてもらわなくても大丈夫です!」
強情!
なんでそんなに素直じゃないんだ!
まさか俺に言わせたいのか?
俺から、付き合って欲しいだなんて。
言うわけないだろ!
付き合っても付き合わなくても、俺はどちらでもいいのだから。
俺はただ、お前の時間を独占出来れば何でもいい。
俺が話したい時に会って、誰よりも俺を優先してくれれば。
さすがに俺も「してもらってばかり」は申し訳ないから、聖奈が望むものは与えたい。
だから...付き合いたいなら、お前から言え!
俺が大事な話をしてるのに、聖奈は美味しそうにアイスクリームを食べている。
俺よりアイスの方が大事か?
「いいなあ。俺もアイス食べたい」
聖奈が高いアイスを選ばなかったら、俺の分も買えたのに。
俺だって甘党なのに。
我慢して聖奈の分だけを買った俺を褒めて欲しい。
...そもそも聖奈を怒らせたのは俺なんだけど。
「いります? 私の食べかけだけど」
「え...マジ?」
聖奈はアイスクリームのカップを、スプーンと一緒に渡す。
このスプーンを俺が使ったら...間接キスじゃないか!
俺は潔癖症で、基本的に他人が使ったカトラリーや、他人が口をつけた飲み物は飲めない。
親のですら無理だ。
他人の唾液が俺の体内に侵入してくるかと思うと、ぞっとする。
でも...聖奈なら、別に良いかも?
清潔感あるし、顔も可愛いし?
俺はアイスを受け取って、一口食べた。
うぅっ...聖奈が使ったスプーン!
五臓六腑に染み渡るような、この感じ...嫌じゃない。
冷たいものを食べたのに、なんだか体が熱い。
「いらないなら返してよ」
俺がなかなか二口目を食べないので、痺れを切らした聖奈が言う。
このアイスを返してしまったら...俺が使ったスプーンを聖奈が使うことになる。
...いいのか?
いや、いいってことだよな?
こんな...唾液の交換...まさか幼馴染とすることになるなんて!
俺は震える手で返した。
聖奈は躊躇なく、アイスを食べる。
「はあ、幸せ」
その一言を聞いて俺はきゅんとしてしまった。
「お前って本当に俺のこと好きなんだな」
俺は聖奈の顔が見れなくて、俯いた。
...うっ、反応してる!
俺は気づかれる前にタオルをくしゃくしゃに丸めて、股間を隠した。
...逆に目立つか?
「聖奈とキスしちゃった」
わざわざ口にしなくてもいいのに言ってしまった!
勝手に喋るな、俺の口!




