変人
部活に生徒会、帰ったら風呂と夕食の準備、平日は忙しくて遊ぶ暇がない。
聖奈に会って話せるのは週1だけ。
毎日話したいことがあるのに。
耐えること2年。
中学3年生になって、聖奈がやっと同じ学校に入学する。
入学式の日、新入生以外は休みだったが、俺は生徒会代表の挨拶があるので出席。
新入生が入場してくる際、俺は聖奈を見つけて目で追った。
壇上に上がった時は、どこにいるのか密かに探した。
嬉しい!
今年は小学生の頃みたいに、聖奈と昼休み一緒に過ごせる!
高校に入ったらまた離れてしまうから、この1年は聖奈との時間を大事にしよう!
入学式には聖奈のママと、聖也が来ていた。
聖也はチェキにハマっていて、何でもかんでもよく写真を撮っていた。
聖奈とのツーショットを撮ってくれて、俺は1枚貰う。
幼稚園の頃はおかっぱ、小学生の頃はボブだった彼女は、中学生になると胸の辺りまで髪を伸ばしていた。
髪は伸びても相変わらず毛先は切り揃えられていて、前髪もぱっつん。
個人的に、女性は髪が長い方が良い。
母親がショートヘアだったこともあって、髪の長い女性の方が好きだ。
どんどん可愛くなっていく聖奈に、俺は気が気じゃない。
いつか聖奈に彼氏が出来るんじゃないか。
これだけ可愛くて、性格も良かったらモテるだろう。
俺と会ってくれなくなる日が、いつかは来るかもしれない。
そんな退屈な日々、耐えられない。
聖奈を監視しなくては。
他の男に取られたくない!
俺は次の日から聖奈を図書室に誘った。
タメぐちだった聖奈は、中学から敬語を使うようになった。
名前で呼んでくれていたのに、「先輩」と呼ぶようになった。
距離を置かれているみたいで嫌だ。
聖奈に理由を聞くと「上下関係はきっちりしたい」と返された。
ふぅん...俺は対等で良かったけど、聖奈がそう望むなら仕方ない。
その代わり、昼休みは毎日俺と会うように約束させた。
昼休みは1番長い休み時間だ。
その間に男と仲良くなって、彼氏でも作られたらたまらない。
2年ぶりの図書室会で、聖奈に読ませたのは江戸川乱歩の人間椅子だ。
小説を読んで官能を刺激されたのは初めてだ。
俺はそれすらも聖奈に共有したかった。
だが、聖奈は椅子の中に男に、ただ恐怖を感じていた。
...俺が変なのか?
女の子の体に触れるのは緊張する。
子供の頃は聖奈と手を繋げたのに、今は手首とか、腕を掴むのが精一杯だ。
俺はちゃんと男の子だったから、女の子の体に触れてみたい願望はあった。
思ったことを何でも口にしてしまう俺でも、さすがに聖奈に「体を触らせて」とは言えない。
「椅子になりたい」
肌と肌で触れなくてもいい。
布越しでもいい。
女の子の体温、肉体の柔らかさ、重みを感じたい。
「聖奈ならいつでも俺の膝の上に乗ってもいいよ」
俺がそう言うと、聖奈は他の女の子を紹介すると言った。
何故か無性に腹が立った。
「俺、別に誰にでも上に乗って欲しいわけじゃないんだけど」
俺がその気になれば、上に乗ってくれる女の子なんて簡単に探せる。
日頃秋波を送られて飽き飽きしているのに。
「可愛い女の子がいい。そうじゃない子に、膝の上に乗られたくない」
だから「聖奈なら」と言ってる。
聖奈は俺に選ばれたのだ。
光栄に思って欲しい。
なのに、「大嫌い」と言われて逃げられた。
納得出来ない!
放課後、その話を聖也にした。
「普通に気持ち悪い」
すぐに一蹴されてしまった。
「お前が気持ち悪いから逃げたんじゃね?」
と聖也。
気持ち悪い?
俺が?
「お前だって嫌だろうよ。その辺の女の子に、私の椅子になって下さいなんて言われたら」
それは気色悪い。
だけど...俺だぞ?
幼稚園の頃から王子様扱いされてきた、この俺が気持ち悪い?
信じられない!
聖奈は変だ!
俺も変だとよく言われるが、聖奈も変だ!




