俺にとっての聖奈
公園で助けてやったのに、聖奈はなかなか心を開いてくれなかった。
俺は聖也と遊びたくて雷門家にお邪魔していたけれど、兄を独占するのは申し訳ないと思って、聖奈も遊びに誘った。
なんでもムキになる聖奈は見ていて面白かった。
つい意地悪してしまいたくなる。
俺がデブいじりをしすぎたせいで、聖奈はダイエットを始めた。
どうせ続かないと思ったけれど、彼女は負けず嫌いで、小学校上がる頃にはちゃんと痩せていた。
...痩せたら普通に可愛い。
可愛い女の子と話すと緊張してしまうところが、昔はあった。
聖奈が最初太っていて本当に良かった。
出会った時からあんなに可愛かったら、俺はまともに喋れなかっただろう。
正直俺は孤独だった。
聖也は人気者で、友達が多くて、俺を相手にする時間が減ってしまった。
俺に寄ってくるのは女の子ばかり。
ちょっと仲良くしただけで勘違いして、告白してくる。
「好きです」と言われて、「ありがとう」と返したら、「それだけ?」と言われる。
それ以上、何を求めるんだろう。
「俺も好き」...そんな言葉が欲しいのだろうか?
その子のことが嫌いなわけではないけど、好きかと聞かれたらわからない。
父さんが言う「心奪われるほどの女」でも「隣にいて自慢になる可愛い女」でも「俺の夢を支援してくれそうな金持ちの女」でもない。
...ちなみに余談だが、この頃の夢はエヴァのパイロットだ。
シンクロ率が低くて乗れないなら、司令官でもいい。
ネルフにコネがある娘なら、好きでなくても好きと言える自信はある。
まあ、架空の世界を夢見てもしょうがないのはわかっているが、つまりは俺の「好き」の基準を満たしていない。
そんな女は黙っとけ。
...こんなことを思うくらいだから、多分好きではない。
何かを期待している女子から逃げるように、俺は昼休み聖奈に会いに行った。
聖也は他の友達と遊んでるし、そいつらとはなんか馴染めない。
俺の中で聖奈は最初、「聖也の代わり」だった。
聖奈は良い。
女の子だけど、俺に告白してこないし。
すすめる本は読んでくれるし。
聖奈との図書室の会が、俺の毎日の楽しみだった。
中学生になると、俺はまたつまらない日々を送ることになる。
俺はエヴァも好きだったけど、スラムダンクも好きだった。
昔から仙道とミッチーに憧れていて、そのノリでバスケ部に入部してしまった。
バスケ自体は嫌いではなかったが、先輩に生意気だと言われ、同級生ともどこか距離を感じる。
辞めはしなかった。
一度入った部活を、人間関係が理由で途中で辞めるのは、俺のプライドが許さない。
実際俺は生意気だったと思う。
俺より上手い同級生はいないし、2年生も大したことない。
さすがに3年には負けるが、俺が辞めたら弱小チームのくせにと、周りを見下していた。
実際俺は1年からスタメン入りした。
先生の推薦で、中1から生徒会に入れられる。
やる気はなくても、責任感だけはあったから、部活と生徒会をうまく両立してこなしていた。
中2では選挙で勝ってしまって、生徒会長に選ばれる。
忙しくなって、俺は聖奈と一緒に過ごした時間が恋しくなった。
俺の話を聞いてくれる幼馴染。
お喋りが好きなのに、俺は他の人と話すのが苦手だ。
気付いたら嫌われているから。
多分俺は、喋らない方がいい。
でも喋りたい。
雷門兄妹は、そんな俺と辛抱強く付き合ってくれる。
特に聖奈は俺の話をよく聞いてくれた。
俺の影響でホラーが好きになったのは嬉しい。
俺達は互いに好きなものを共有した。
趣味趣向が似ていたから、その時間が苦では無かった。
聖奈と会って話したくて、学校帰りはわざわざ遠回りして、雷門家の前を通ったりした。
彼女は基本的に車移動しかしないし、家の中に籠るタイプだから、外でばったり会ってしまうなんてことは無い。
それでも期待して家の前を通った。
当然一度も遭遇したことはない。
中1で携帯を買い与えられたが、1ヶ月で没収された。
1ヶ月5万円の請求が来たからだ。
原因はゲームのやり過ぎだ。
俺の家には家庭用ゲーム機がなかったから、自分の部屋でゲームが出来るのは嬉しかった。
当時は通信料定額サービスなんてものがなかった(あったかもしれないが、少なくとも父さんは契約していなかった)ので、高額の通信料をとられた。
呆気なく携帯も奪われた俺は、聖奈に連絡することが出来なかった。
家電をかける?
とんでもない!
相手が聖奈だと知ったら、父さんに固定電話まで禁止されてしまう。




