父の教え
俺が小学校に上がると、両親は離婚した。
俺は母さんに引き取られそうになったが、駄々をこねて父さんの所に残った。
引っ越して聖也の家と遠くなるのは嫌だった。
しかし蓋を開けてみれば、母さんはすぐ近くに引っ越しただけで、どちらに引き取られても雷門家は遠くなかった。
それならば優しい母さんに引き取られた方が良かったかもしれない...と少し後悔したが、すぐに正解だったと知る。
父さんが仕事から家に帰るまで、俺は雷門家で遊んだ。
学校が終わっても聖也とずっと一緒だ!
父さんなんて迎えに来なくていいのに。
そしたら俺はずっと遊べるのに。
父さんはいつも不機嫌そうに迎えに来た。
周りには誤解されるが、けして父さんは悪い父親ではない。
母親より父親を選んだ俺のことを溺愛していた。
だが雷門家に来る時は、笑顔なんて見せない。
この世の全てを憎むような顔だ。
家に帰って、その理由を父さんは教えてくれた。
聖也のママとは昔恋人同士で、婚約をしていたこと。
結婚式当日に逃げられ、最終的に聖也のママは、父さんの親友と結婚したこと。
そんな話を初めてされたのは、小学1年生の頃だ。
俺はまだ子供だったから、父さんの怒りはまだ共感が出来ない。
母さんも逃げ出したのだから、父さんに問題があるのだろう...それだけはよくわかった。
「女なんて、最終的には皆裏切るんだ。だから帝翔、お前は女なんかに心を奪われるな。
自分が常に1番だと思え。他人より自分を優先しろ」
どうやら俺は父さんに似たらしい。
言われなくても俺は自分が1番だと思っていた。
俺より優れている人は、同学年にいないのだから。
ということは、俺も父さんと一緒で、何かしらの問題があるということだ。
思い当たる節は既にある。
俺は同性の友達が圧倒的に少ない。
異性は寄ってくるが、気付いたら嫌われている。
...父さんは未来の俺だ。
忠告は聞いておかないと。
「心奪われるってどういう感じなの?」
「つまり...一緒にいて楽しいだとか、癒されるとか、居心地がいいとか。気付けばその人のことを目で追ってしまったり、一人になった時に考えてしまったり。
そうなったら終わりだ。『この女性だけは違う』...そう信じて大切にしても、一時は側にいてくれるかもしれないが、最終的には去って行く。
その時傷付くのは帝翔だ。だから帝翔は...結婚するなとまでは言わないが、するなら去っても傷付かない女にしろ」
父さんの話は難しい。
いなくなったら傷付く人を思い浮かべてみる。
聖也と会えなくなったら悲しい。
父さん、母さん、兄さん...は、どうでもいいか。
「結婚するなら、何か自分のメリットになるような女がいい。隣にいるだけで自慢になるような、見た目が良い女とか。
金持ちで、帝翔の夢を支援してくれそうな女だとか。間違っても心は許すな。
いたら良いけど、いなくなってもどうでもいい女...そういう女と結婚しろ」
とんでもない助言だが、まだ小さかった俺は父さんの言うことを信じた。
「雷門の娘とは結婚するなよ。元カノの娘が、俺の義理の娘になるなんて、鳥肌が立つ」




