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童貞って言うな!  作者: 袴田一夜
明堂帝翔
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お金の使い道



【帝翔視点】



有楽町のショッピングモールで、数年ぶりに新しい服を買った。


聖奈が選んでくれた服。


俺は着せ替え人形のように、ただ試着室で服を着替えるだけ。


紙袋二つ分になったお会計は、けして安くない金額で、俺は聖奈の頭を小突いた。



「必要経費ですよ。これで彼女が出来ると思えば」



母さんも服装から変えろと言ってたし...仕方ないのか。


車は会社に停めたままなので、歩いて日比谷に戻る。



「聖奈、夜ごはん一緒に食べよう」



返事を聞く前に、俺はラーメン屋に入った。


テーブル席に座る。



「ここって...いつも出前とってるラーメン屋? っていうか、今日のお昼も食べたばかりですよね?」



食べたばかりだからなんだと言うんだ。


同じメニューを食べなきゃいいんだろ。



「生姜焼き定食と、彼女にはもやしラーメン定食で」


「選ばせてくれないの?!」



初回は俺の定番を食べて欲しい。


気に入らなかったら俺が食べるし。


...というか、一口は欲しい。



「イケメンのお兄さん、女の子連れて来るの初めてね。ガールフレンド?」



入社して以来、最低でも週3は通っているこのラーメン屋。


当たり前に顔を覚えられていて、店主の奥さんには「イケメンのお兄さん」と呼ばれていた。



「ち、違います! 私達は職場の...」


「俺が口説こうとしてる女です」



聖奈は顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。



「邪魔しちゃ悪いわね」



奥さんはニヤニヤしながら離れて、注文を厨房に伝えた。



「なんであんな嘘を!」


「聖奈の反応が面白いから」



テーブルの下で脛を蹴られた。


暴力的なのは昔から変わらないな。



「私から一つアドバイス。マリアちゃんは食事代割り勘の男は嫌いですよ」


「遠回しにラーメン代奢れって言ってるだろ? しょうがない、今日は俺が全部出すよ」



ラーメン代くらい、元々払うつもりだったけれど。


聖也には日頃世話になってるから。


キャバクラ代、ラウンジ代、スナック代...女の子がいる店は全部聖也が払ってくれている。


その妹のラーメン代くらいは払わないと。



「あとで聖也に請求しよ」



と冗談を言ってみる。



「彼女もいなくて、洋服も買ってなくて、一体何にお金使ってるんですか?」


「本と、映画と、舞台かな。日比谷は良いぞ。劇場も多いし、映画館もある。


この辺に引っ越したいんだけどさ、家賃20万以上するんだよね。


一人暮らしで20万以上は馬鹿らしいよな...って、聖也はそんなとこに住んでるのか」



ちなみに聖也は中目黒のタワマンに住んでいる。


武蔵小杉で一人暮らし家賃15万も馬鹿らしいと思うのに、タワマンに一人暮らしはもっと意味がわからない。


実家近いのに。


そんなにタワマンに住みたいなら地元じゃないところにしろ。



「日比谷に引っ越したら、泊まっていいぞ。襲うかもしれないけど」


「本と、映画と、舞台かあ。先輩ってあんま変わってないですね」



...スルーされた。


まあ、襲うのは冗談だけど。


そんなことが出来るなら28年も童貞やってない。



「あと麻雀。大学の時に麻雀知ってからハマってる。


中目黒の雀荘にほぼ毎週土日いるよ。中目黒行く時は、母さんの店にちょっと飲んで顔出してる」


「えっ、先輩ってギャンブラーなんですか? クズじゃん!」



...彼女いない男なんて、暇なんだからギャンブルしてるか、酒飲んでるか、女と遊んでるしかないって。


俺は女遊びしないだけマシだろ。

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