ツーショット
「まあまあ。もう一回撮ればいいじゃん。俺チェキ持ってきてるし」
陽キャだ。
学校にチェキを持ってくるなんて。
兄は私と違って陽キャだ。
「嫌! 写真なんて撮りたくない!」
そう断ると、ダミアンは後ろから抱きついた。
力が強くて逃げられない。
「聖也、今だ。写真撮れ」
「...そこまでして写真撮りたいか?」
兄は呆れている。
私は必死にもがいたけれど、やっぱり力が敵わない。
諦めて大人しくした。
「聖奈と撮りたい。2人で撮った写真、他に無いから。いつも邪魔が入るし」
「邪魔って俺かよ」
ダミアンの言う通り、2人で写真を撮ることはなかったかも。
家のアルバムに彼の写真は何枚かあるけど、3人で撮った写真か、兄とダミアンのツーショットしかない気がする。
兄はカバンから取り出したカメラを構える。
ダミアンに抱きつかれたまま、私は写真を撮られた。
「いいね、可愛い」
撮ったチェキを確認して、ダミアンが言う。
写真の中のダミアンは笑顔で、私は不安そうな顔をしていた。
魔王に囚われた少女みたいな図。
「後生大事に持っとくよ」
そう言って生徒手帳の中に写真をしまう。
一緒に写真撮るってことは、私達仲直りしたんだよね?
もう怒ってないのかな。
ちゃんと謝るべき?
「お前、昼休みどこにいるの?」
私が悩んでると、先にダミアンが口を開いた。
「教室行ってもいないし、保健室も探したけど」
やだ!
私がトイレに行ってる間、また1年の教室に来たってこと?
「帝翔、そんなんだから噂されるんだよ。俺の妹と付き合ってるって。
付き合ってもないのに周りの女子に嫉妬されて、聖奈は困ってるんだってさ」
兄が私の言いたいことを代弁してくれる。
「そんなに困る? 勝手に思わせとけば?」
「お前なあ。帝翔のファンが陰湿なのわかるだろ。
陰でこそこそ嫌がらせして。残ったのはそれに耐えれた...というか同族の女ども。
まあ、もれなく美人が多いけど。水面下の戦いの果てには、自分に自信がある奴しか残らないから」
兄は人をよく見ている。
私だけじゃなかったんだ、嫌がらせを受けてたのは。
「えっ、そうなの? だから俺のまわりには、可愛いけど変な女しかいないのか」
変な女って...1番の変人はあんたでしょうが。
「グイグイ来られるの、苦手なんだよな」
だから彼女を作らないのね。
綺麗な子はいっぱいいるけど、付き合いたい人はいない...ってダミアンは言ってたけど。
追われるより追いたい人なのかも。
「聖奈、嫌がらせ受けてるの? だから教室にいないの?」
「ち、違います」
ダミアンの質問に否定した。
兄には心配かけられない。
襟足長めで、見た目はチャラそうだけど、高校受験の勉強を毎日している真面目な兄。
雷門の長男に生まれたからには、ある程度偏差値の高い高校に入らないと面目が立たない。
日々努力している兄の邪魔はしたくない。
「一人でいたいから...トイレに籠ってます」
女子トイレにいると言えば、ダミアンは諦めると思った。
ダミアンは男だから女子トイレに入れないし。
「トイレで一人で何してんの? オナってんの?」
「お、おな...?」
よくわからないことを言われた。
兄がダミアンの頭を叩く。
「俺の妹に変なこと言うな」
「だって、好き好んでトイレに籠ってる奴なんている? いじめられてるか、えっちなことしてるか」
そう思われてるなんて、どっちも嫌!
「トイレにずっといたら、嘆きのマートルになるよ」
嘆きのマートルはわかる。
ダミアンにハリーポッターシリーズは読まされたし、映画も一緒に観に行った。
「どこのトイレにいるの?」
「5階の理科室の前のトイレ。休み時間ずっといても、誰も来ないから」
「へえ...誰も来ないんだ」
ダミアンは笑みを浮かべる。
私はその表情を見て、この男は絶対に来ると察した。




