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童貞って言うな!  作者: 袴田一夜
雷門聖奈
80/129

ツーショット


「まあまあ。もう一回撮ればいいじゃん。俺チェキ持ってきてるし」



陽キャだ。


学校にチェキを持ってくるなんて。


兄は私と違って陽キャだ。



「嫌! 写真なんて撮りたくない!」



そう断ると、ダミアンは後ろから抱きついた。


力が強くて逃げられない。



「聖也、今だ。写真撮れ」


「...そこまでして写真撮りたいか?」



兄は呆れている。


私は必死にもがいたけれど、やっぱり力が敵わない。


諦めて大人しくした。



「聖奈と撮りたい。2人で撮った写真、他に無いから。いつも邪魔が入るし」


「邪魔って俺かよ」



ダミアンの言う通り、2人で写真を撮ることはなかったかも。


家のアルバムに彼の写真は何枚かあるけど、3人で撮った写真か、兄とダミアンのツーショットしかない気がする。


兄はカバンから取り出したカメラを構える。


ダミアンに抱きつかれたまま、私は写真を撮られた。



「いいね、可愛い」



撮ったチェキを確認して、ダミアンが言う。


写真の中のダミアンは笑顔で、私は不安そうな顔をしていた。


魔王に囚われた少女みたいな図。



「後生大事に持っとくよ」



そう言って生徒手帳の中に写真をしまう。


一緒に写真撮るってことは、私達仲直りしたんだよね?


もう怒ってないのかな。


ちゃんと謝るべき?



「お前、昼休みどこにいるの?」



私が悩んでると、先にダミアンが口を開いた。



「教室行ってもいないし、保健室も探したけど」



やだ!


私がトイレに行ってる間、また1年の教室に来たってこと?



「帝翔、そんなんだから噂されるんだよ。俺の妹と付き合ってるって。


付き合ってもないのに周りの女子に嫉妬されて、聖奈は困ってるんだってさ」



兄が私の言いたいことを代弁してくれる。



「そんなに困る? 勝手に思わせとけば?」


「お前なあ。帝翔のファンが陰湿なのわかるだろ。


陰でこそこそ嫌がらせして。残ったのはそれに耐えれた...というか同族の女ども。


まあ、もれなく美人が多いけど。水面下の戦いの果てには、自分に自信がある奴しか残らないから」



兄は人をよく見ている。


私だけじゃなかったんだ、嫌がらせを受けてたのは。



「えっ、そうなの? だから俺のまわりには、可愛いけど変な女しかいないのか」



変な女って...1番の変人はあんたでしょうが。



「グイグイ来られるの、苦手なんだよな」



だから彼女を作らないのね。


綺麗な子はいっぱいいるけど、付き合いたい人はいない...ってダミアンは言ってたけど。


追われるより追いたい人なのかも。



「聖奈、嫌がらせ受けてるの? だから教室にいないの?」


「ち、違います」



ダミアンの質問に否定した。


兄には心配かけられない。


襟足長めで、見た目はチャラそうだけど、高校受験の勉強を毎日している真面目な兄。


雷門の長男に生まれたからには、ある程度偏差値の高い高校に入らないと面目が立たない。


日々努力している兄の邪魔はしたくない。



「一人でいたいから...トイレに籠ってます」



女子トイレにいると言えば、ダミアンは諦めると思った。


ダミアンは男だから女子トイレに入れないし。



「トイレで一人で何してんの? オナってんの?」


「お、おな...?」



よくわからないことを言われた。


兄がダミアンの頭を叩く。



「俺の妹に変なこと言うな」


「だって、好き好んでトイレに籠ってる奴なんている? いじめられてるか、えっちなことしてるか」



そう思われてるなんて、どっちも嫌!



「トイレにずっといたら、嘆きのマートルになるよ」



嘆きのマートルはわかる。


ダミアンにハリーポッターシリーズは読まされたし、映画も一緒に観に行った。



「どこのトイレにいるの?」


「5階の理科室の前のトイレ。休み時間ずっといても、誰も来ないから」


「へえ...誰も来ないんだ」



ダミアンは笑みを浮かべる。


私はその表情を見て、この男は絶対に来ると察した。

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