生徒手帳
昼休みになって、私は学ランのジャケットを返しに行くか悩んだ。
図書室に行ったらダミアンに会えるかもしれない。
でも...一日貸してくれるって言うし、放課後でも良いよね?
結局私は、昨日と同じ特別教室側の女子トイレに行った。
やっぱり誰もいない。
鏡の前に立って、ダミアンのジャケットを羽織る。
ぶかぶかだ。
なんかちょっと嬉しい。
昔はそんなに身長変わらなかったし。
ジャケットの匂いを嗅いでみる。
良い匂い。
学生服は毎日洗うわけじゃないから、ファブリックミストの香りかな?
石鹸の香りがする。
ポケットを探ると生徒手帳が入っていた。
...学生証の写真もちゃんと美少年。
中を開いてみると、何かが挟んであった。
チェキだ。
写ってるのは学生服のダミアンと私。
入学式の日に兄が撮ったものだ。
兄は思い出をチェキで残すという趣味があった。
思い返せば、確かにダミアンは一枚チェキを貰っていた。
「私、かわいくない」
写真の中のダミアンは、意地悪なんてしなそうな優しい顔で微笑んでいる。
私は真顔。
いかにも愛嬌がない。
こんな写真、挟まなくていいのに。
私はチェキを抜き取った。
ダミアンもノリで貰っただけだし、きっとなくなってもバレないでしょ。
そう思ってた。
でも実際はすぐに気付かれた。
「写真は?」
放課後すぐ、ジャケットを返しに3年生の教室に行った。
ダミアンが部活に行く前に返したかったし、早く行けば兄がいると思って。
幸い、彼はまだ教室にいて、兄と話していた。
「写真?」
私は白を切る。
まさかジャケットを返してすぐに、生徒手帳を確認されるとは。
「挟んであったでしょ? 写真返して。返さないと殺す」
「ご、ごめんなさいっ! 捨てました!」
「はぁ?!」
癇癪起こせばダミアンに何でも言えるのに、そうじゃない時の私は弱い。
「だって、あんな可愛くない写真...恥ずかしいんだもん!」
「いつもあんな感じだろお前」
やめて、聞きたくない!
いつも可愛くないだなんて!
「写真ってなんの話?」
兄が間に入る。
「俺と聖奈の写真」
「ああ、帝翔が欲しいって言って、俺があげたやつ?」
「可愛くないだなんて。いつも通りの聖奈だったよな?」
やっぱりいつも可愛くないんだわ!
写真なんて嫌い!




