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童貞って言うな!  作者: 袴田一夜
雷門聖奈
78/129

特別扱い


次の日の朝、私は兄と一緒に3年生の教室に向かった。


仲直りするなら、朝早い方がいいと思った。


付き添わせるつもりはなかったけど、兄とダミアンは同じクラスだし、同じ車で登校するしで、結果的に兄と一緒に行くことになった。


足が震える。


ホラーは好きだけど、こういう怖さは苦手だ。


許してもらえるかわからない恐怖。



「帝翔なら大丈夫だって。そんなに根に持つタイプじゃないから」



私の気持ちを察してか、兄は私を元気付けた。 


兄の言うことは本当だった。


あいつは昨日のことを何とも思っていなかった!


教室にダミアンはいた。


女の子達に囲まれて、楽しそうに喋っている。


私は自惚れていた。


そうだ、ダミアンは去る者は追わない。


昔からそうだったじゃないの。


可愛い女の子に逃げられると、数日落ち込むけど、そうじゃない子にはあっさり。


他の女の子と仲良くしている姿を見て、私はショックを受けた。


ダミアンにとって、私はその辺にいる子と変わりない。


私がいなくても、寄ってくる子はいるから寂しくない。


私だけは、彼の特別なんじゃないかと、少し期待してたのに...。



「俺が帝翔を呼んでくるから待ってて」



兄が教室に入ろうとするのを私は止めた。



「いい。私、やっぱり大丈夫だから」



私はその場から逃げ出した。


自分の教室に駆け込んで、机に伏せる。


私はまた泣き出した。


酷い!


私のことひとりぼっちにさせといて、自分だけは人気者。


ずるい、不公平だ!


やっぱりダミアンなんて大嫌い!


私は人目を憚らずに泣いた。


どうせ私のことを気にしてくれる人はいない。


引かれても、元々友達なんていないんだから。


思いっきり泣いてやる。



突然、教室が騒がしくなった。


私が泣いてるから?



「大丈夫?」



誰かが私の肩を叩いた。


私に声をかけてくれる人なんて、このクラスにいたの?


ちょっと嬉しくなって、私は少しだけ顔を上げた。


そこにいたのはダミアンだった。


うそ!


なんで?


どうして!



「どいて」



ダミアンは隣の席に座る男の子に言った。


男の子がどくと、自分が座る。



「なんでここに?!」


「聖也から聞いた。聖奈が話したいことあるって」


「でもここ1年生のクラス! 入ってきちゃダメだよ!」



皆が騒いだのは、ダミアンが教室の中に入ってきたからだったのね。



「気にすんな。それより聖奈、鼻水出てる」



私は急いで鞄からティッシュを取り出して、鼻をかんだ。


酷い顔見られるなんて、恥ずかしい!



「で、話したいことって何?」



ダミアンは足を組む。



「話したいことなんて、ない!」



私は大馬鹿者だ。


本当はダミアンが来てくれて嬉しいのに。


ここでダミアンがまた去ってしまったら悲しむくせに。



「なんでそんなに情緒不安定なの。生理中?」



ああダメだ、やっぱりムカつくかもしれない。


私はまた机に顔を伏せる。


ばさりと私の肩に何かがかけられた。


きゃーと、黄色い声が何人か上がったのが聞こえる。



「一日貸してやるから、体あたためて。じゃ、もうすぐ朝礼だから俺は行くよ」



ダミアンは教室を出て行ったみたいだ。


顔を上げて自分の肩にかけられたものを見る。


学ランのジャケットだ...おそらく、というか絶対ダミアンの。


他の女子が羨望の眼差しで見てくる。


...私、生理中じゃないのに。

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