特別扱い
次の日の朝、私は兄と一緒に3年生の教室に向かった。
仲直りするなら、朝早い方がいいと思った。
付き添わせるつもりはなかったけど、兄とダミアンは同じクラスだし、同じ車で登校するしで、結果的に兄と一緒に行くことになった。
足が震える。
ホラーは好きだけど、こういう怖さは苦手だ。
許してもらえるかわからない恐怖。
「帝翔なら大丈夫だって。そんなに根に持つタイプじゃないから」
私の気持ちを察してか、兄は私を元気付けた。
兄の言うことは本当だった。
あいつは昨日のことを何とも思っていなかった!
教室にダミアンはいた。
女の子達に囲まれて、楽しそうに喋っている。
私は自惚れていた。
そうだ、ダミアンは去る者は追わない。
昔からそうだったじゃないの。
可愛い女の子に逃げられると、数日落ち込むけど、そうじゃない子にはあっさり。
他の女の子と仲良くしている姿を見て、私はショックを受けた。
ダミアンにとって、私はその辺にいる子と変わりない。
私がいなくても、寄ってくる子はいるから寂しくない。
私だけは、彼の特別なんじゃないかと、少し期待してたのに...。
「俺が帝翔を呼んでくるから待ってて」
兄が教室に入ろうとするのを私は止めた。
「いい。私、やっぱり大丈夫だから」
私はその場から逃げ出した。
自分の教室に駆け込んで、机に伏せる。
私はまた泣き出した。
酷い!
私のことひとりぼっちにさせといて、自分だけは人気者。
ずるい、不公平だ!
やっぱりダミアンなんて大嫌い!
私は人目を憚らずに泣いた。
どうせ私のことを気にしてくれる人はいない。
引かれても、元々友達なんていないんだから。
思いっきり泣いてやる。
突然、教室が騒がしくなった。
私が泣いてるから?
「大丈夫?」
誰かが私の肩を叩いた。
私に声をかけてくれる人なんて、このクラスにいたの?
ちょっと嬉しくなって、私は少しだけ顔を上げた。
そこにいたのはダミアンだった。
うそ!
なんで?
どうして!
「どいて」
ダミアンは隣の席に座る男の子に言った。
男の子がどくと、自分が座る。
「なんでここに?!」
「聖也から聞いた。聖奈が話したいことあるって」
「でもここ1年生のクラス! 入ってきちゃダメだよ!」
皆が騒いだのは、ダミアンが教室の中に入ってきたからだったのね。
「気にすんな。それより聖奈、鼻水出てる」
私は急いで鞄からティッシュを取り出して、鼻をかんだ。
酷い顔見られるなんて、恥ずかしい!
「で、話したいことって何?」
ダミアンは足を組む。
「話したいことなんて、ない!」
私は大馬鹿者だ。
本当はダミアンが来てくれて嬉しいのに。
ここでダミアンがまた去ってしまったら悲しむくせに。
「なんでそんなに情緒不安定なの。生理中?」
ああダメだ、やっぱりムカつくかもしれない。
私はまた机に顔を伏せる。
ばさりと私の肩に何かがかけられた。
きゃーと、黄色い声が何人か上がったのが聞こえる。
「一日貸してやるから、体あたためて。じゃ、もうすぐ朝礼だから俺は行くよ」
ダミアンは教室を出て行ったみたいだ。
顔を上げて自分の肩にかけられたものを見る。
学ランのジャケットだ...おそらく、というか絶対ダミアンの。
他の女子が羨望の眼差しで見てくる。
...私、生理中じゃないのに。




