本当の友達
そして昼休みがやってきた。
私は急いで給食を食べると、教室を出た。
ダミアンに見つからないように、校内で人の少ない場所を探す。
1年生の教室は一番上の5階。
校舎はH型になっていて、普通教室が並ぶ廊下と、特別教室が並ぶ廊下が各階で平行になっていた。
5階は上級生があまり来ないという点、特別教室は授業や部活がない限り誰も用がない点、二つの点で私が選んだのは5階特別教室側の女子トイレだった。
普通教室側のトイレと異なり、中はいつも誰もいない。
静かで、なんとなく不気味だけれど、教室にいるよりマシだ。
私は個室に入って、便座に座る。
はあ...毎日図書室に行く約束をしたのに。
私がすっぽかしたら、ダミアンは本当に教室まで迎えに来るのかな?
嫌だな...もっと疑われちゃう。
いっそのこと、本当にダミアンと付き合っちゃおうかな。
どのみち皆に嫉妬されて無視されるんだから。
人気者の王子様と付き合って、皆のこと見下してやろうかな。
...ううん、よくない。
好きでもないのに付き合うのは、よくない。
特に私は「初めての恋人」になるんだから。
私はいつか雷門家の為に、愛のない結婚をするかもしれない。
親が決めた人と家庭を作るかも。
将来そうなるとしても、初めての彼氏は好きな人がいい。
私のことを大切に思ってくれて、愛してくれる人がいい。
初めての彼氏がそんな素敵な人だったら、その思い出があれば、私は政略結婚も耐えられる。
私は個室の中で眠ってしまった。
短い夢を見る。
私はファンタジーの世界にいて、お姫様になっている夢。
私が泣いていると、騎士様が現れて守ってくれた。
予鈴が鳴って、目を覚ます。
起きたのと同時に、夢の内容はほぼ忘れてしまった。
けど、騎士様と一緒にいれて幸せだった...それだけは残っている。
はあ、夢の続きが見たい。
ずっと夢の中でいいのに。
立ち上がってトイレを出た。
私はふわふわした気持ちで教室に向かう。
私の教室の前に、ダミアンが腕を組んで立っていた。
予想はしていたけど。
せっかくの幸せな気持ちが台無しだ。
「聖奈、なんで約束守らなかったの? 待ってたのに。どこに行ってた? 体調でも悪かった? 保健室?」
話ぶりからして、ダミアンは図書室にずっといたのだろう。
私は無視して教室に入ろうとする。
腕を掴まれた。
「心配したんだよ」
ダミアンは怒ってる様子はなく、どちらかというと悲しそうだった。
私は胸がきゅっと痛くなる。
ダミアンは何も悪くない。
たまたま美少年に生まれてしまっただけ。
贅沢だと言われてしまうかもだけど、私の1番の悩みは、幼馴染がイケメンでモテすぎることだ。
醜いとまでは言わなくても、普通の顔だったら良かったのに。
ダミアンが普通の顔だったら、私とどんなに仲良くしても皆は何も思わなかった。
むしろ、なんでも恋に結びつけてしまうほど恋バナが大好きな女子達に「付き合っちゃいなよ」とか言われて、からかわれたり。
または応援されたかもしれない。
「先輩と友達でいるの、疲れちゃいました」
こんなこと言いたいわけじゃない。
本当はダミアンと一緒にいるのは楽しい。
本読んだり、映画みたり、お出かけしたり。
時々ムカつくけど、一緒に過ごす時間は嫌いじゃない。
私が男の子だったら、兄みたいにダミアンと親友になれたかも。
男の子に生まれたかった。
「...そう。わかった」
ダミアンは腕を掴む手を離す。
そして3年の教室へ戻りに、階段を降りて行った。
いなくなってから、急に涙が溢れて止まらなくなった。
私はどうしてあんなこと言ってしまったの!
ダミアンは、本当の友達だった。
少なくとも、クラスの女子達よりかは、私のことを大事に思ってくれる友人だった。
性別なんて関係ない...私達は親友だったのに。
私はたった一人の友達を、自分の言葉で傷付けて、そして失ってしまった。




