明堂家の息子
当時私とダミアンは出会いたて。
お互い小学校に入る前だった。
ある日、私は家を勝手に抜け出した。
兄の誕生日プレゼントを買いに、少ない小銭を持って出かける。
サプライズのつもりで、皆には内緒にしたかった。
その時、近所の公園で遊ぶ小学生の男子二人に絡まれた。
まだ私は太っていた頃で、容姿を馬鹿にされたり、地面に突き飛ばされたり、酷い扱いを受けた。
たまたま通りかかった、ランドセルを背負った男子に助けられる。
その顔はダミアンと瓜二つで、最初はテイトだと思ったが、彼はまだ小学生ではない。
ダミアンには双子のように顔がそっくりの兄が一人いることを思い出した。
コウガ君。
ダミアンの一つ上で、年齢的に私とは幼稚園も中学もかぶらない。
私の兄とはあまり仲良くないみたいで、家に来たこともなかったけれど、何度か見かけるタイミングがあって、私は彼を知っていた。
「お前...ミョウドウ! 何すんだよ!」
私を突き飛ばした男の子を、コウガ君が同じように地面に突き飛ばす。
同学年なのか、お互いを知っている様子だった。
「先に押したのはお前だろ」
コウガ君はいじめっ子を見おろす。
「泣き虫のミョウドウのくせに! 生意気だぞ!」
つかみ合いのケンカになって、私は勇気を出して止めようとした。
でも驚くほどコウガ君は強くて、あっという間にいじめっ子2人を倒してしまった。
2人はコウガ君を恐れて逃げ出す。
暴力はよくないけれど...私を守ってくれたコウガ君はカッコよかった。
「一人? 何してんの?」
私はコウガ君に事情を説明した。
兄の誕生日プレゼントを買いに、出かけようとしていると。
持っている小銭を見せると、コウガ君は呆れるようにため息を吐いた。
「45円...少なすぎ。逆にこんな少ない小銭、どっから持ってきたわけ?」
「ときどきお家に落ちてるの拾って。セイナ、貯金してたの」
コウガ君はポケットから小銭入れを取り出す。
「俺が持ってるのは300円。しょうがないな。俺が奢ってやるよ」
「おごるって...なに?」
「俺がお金を払うってこと。駄菓子くらいなら買えるだろ。2人のお金を合わせれば、何個か買えるよ」
そう言ってコウガ君に手を引かれ、駄菓子屋に行った。
私はお金の計算がまだ出来なくて、コウガ君が選んで安い駄菓子をいくつか買った。
いつも運転手さんの車で移動する私は、初めて外を歩いて、自分の家の場所がわからなくなった。
私の家は有名だったから、コウガ君が駄菓子屋の店員さんに道を聞いて、家まで送ってくれる。
1人だったら迷子になるところだった。
コウガ君は私の家に入らず、そのまま走って帰ってしまう。
家に帰った私は親にこっぴどく怒られた。
兄まで心配させてしまった。
すぐに母と一緒に、明堂家に菓子折りを持って謝罪に行った。
家から出てきたのは、綺麗な顔をした男の人だった。
ダミアンの父親だ。
恐ろしく冷たい目をしていて、母を見るなり舌打ちをした。
とても怖くて、私は出来れば二度と会いたくないと思ってしまった。




