公園でアイス
私も謝りたかったけれど、プライドが邪魔をした。
代わりに、何も言わずに頷いた。
「許してくれる?」
ダミアンの質問にもう一度頷く。
「ありがとう。聖奈の好きなアイス奢ってあげる。一緒に帰ろう。ちょっと待ってて」
やっと手を離してくれた。
ダミアンはもう一度体育館の中へ入って行く。
どうしよう...体育館に鞄置きっぱだ。
でも、皆の所に戻るのは勇気がいる。
悩んでいると、ダミアンは戻って来た。
体育館に置いてきた私の鞄と、自分の鞄を持って。
「今日は帰るって部長に言ってきたから。行こう」
ダミアンは体操服の長ズボンと、半袖のまま。
着替えずにスクールバッグを背負う。
私は自分の鞄を受け取った。
「部活、いいの?」
「大丈夫。練習しなくても俺強いから」
私に気をつかって言ってるのかな。
「迎えの車は来るの?」
ダミアンに言われて思い出す。
「そうだ! バスケ部見学するから遅くなるって連絡してたの。運転手さんに電話しなきゃ」
私は幼稚園の頃から、車の送り迎えがある。
学校までは歩いてもいける距離なのに、親が過保護で毎日車だ。
歩いて帰ってみたい。
途中で寄り道なんかして、下校を楽しみたい。
「電話は待って。コンビニでアイス買って、公園で食べよう」
ダミアンに言われて、私は携帯をしまった。
二人で公園の近くのコンビニに行く。
「どれがいい? なんでも買ってやるよ」
100円台のアイスなんかでイキらないで欲しい。
私がアイスを選ぶと、ダミアンは約束通り買ってくれた。
公園のベンチに二人で並んで座って、私はアイスを食べる。
ダミアンは自分の分を買わなかった。
甘い物好きなはずなのに...今はいらないのかな?
「部活早く辞めてぇー」
突然ダミアンが言う。
「やっぱり、練習きついの?」
さっきまで怒鳴っていたのが嘘みたいに、私は機嫌良くダミアンと話す。
アイスを買ってもらったからご機嫌だ。
「いや、練習とか試合とか、それはいいんだけど。自分の時間がなくて。
終わるの遅いし、帰ったらご飯早く作らないと父さんに怒られるし」
家事はほぼダミアンがやっているらしい。
...改めて思うと、ダミアンは偉いな。
私はお手伝いさんがいるから、家のことなんてやったことがない。
「聖奈と毎日映画みたり、ゲームしてたのが懐かしいな。あの頃は楽しかった」
懐かしいって...ほんの2、3年前の話なのに。
でも、事実ダミアンは少し大人っぽくなった。
身長も伸びたし、声変わりもした。
「聖也は女がいるから、俺と遊ぶ頻度も減ったしなぁ...」
「うそ! にーや、彼女いるの?」
初耳だ。
確かに、前は休みの日に三人で遊んだり出掛けたりしてたのに、最近は揃うことが少ないかもしれない。
兄がいるいない関係なく、ダミアンは私の家に毎週来るけど。
「彼女っていうか、まあ、なんというか...」
言いにくそうにしている。
彼女じゃないってことは...片想いの女の子がいるってだけなのかな。
「俺、本当はめっちゃ性欲強い。ぶっちゃけ今日見学に来た女の子達、誰とでもヤレると思う。
でもだからって軽い気持ちでするのは申し訳ないよなあ。どの子も付き合いたいと思わないし」
どうして突然そんな話をするのだろうかと思ったけれど、ダミアンが遠回しに伝えたいことがすぐにわかってしまった。
兄はきっと、体だけの関係の人がいるのだ。
中学生でこんな知識を持ってしまったのは、全部漫画のせい。
小学生も読むような少女漫画なのに、ちょっとえっちなシーンがある作品を読んだことがあるし、兄の本棚で過激な漫画を見つけてしまったこともある。
...断じて自ら求めて読んだわけではない。




