お互い様
「私、別にバスケ部に入りたくないし!」
突き飛ばそうとしたけれど、私の力じゃ全然倒れなかった。
「ごめん、からかいすぎた」
謝るダミアン。
頭に血が上っていた私は、彼を叩こうとしたけれど、両手首をダミアンに掴まれて止められる。
皆の前で癇癪を起こしてしまった自分が恥ずかしい。
でも感情を抑えられなかった。
怒りで涙が止まらない。
「離してよ!」
このまま走って逃げたい。
もう帰らせて欲しい。
「痴話喧嘩?」
男子バスケ部が笑ってる。
私は他の女子の表情を見るのが怖くて、俯いた。
「聖奈、ちょっと外に出よう」
ダミアンに手首を掴まれたまま、体育館の外に連れ出される。
「痛いよ、離してよ!」
私は振り払おうとしたけれど、ダミアンの力は強くて逃れられない。
こんなに力が強いなんて...知らなかった。
「無理。離したら逃げるでしょ」
L字になっている壁の隅まで私は押される。
逃げようと思っても逃げられない。
ダミアンの匂いを間近に嗅いだ。
不思議。
目に見えて汗だくなのに、全然臭くない。
「ごめんね聖奈。恥をかかせるつもりはなかった」
ダミアンはもう一度謝った。
「...恥ずかしくて消えてしまいたい」
もう中学生になったのに、私は幼い子供みたいに泣く。
「...俺、ただカッコつけたかった。出来る俺を見て、聖奈にカッコイイって思われたかった。尊敬してもらいたかっただけなんだ。
でも...ごめん。俺って嫌な奴だったよね」
あんなに腹が立っていたのに、だんだん彼が可哀想になってきた。
確かに、男の子はカッコつけたい生き物なのかもしれない。
兄だってそうだ。
いつも家でゲームの腕前を私に見せてくる。
ダミアンも、自分が運動出来るところを見てもらいたかっただけ。
それなのに幼馴染が泣き始めて、ぶたれそうになった。
他の女の子の前で、同じ部活の人の前で。
彼だって私のせいで恥をかいた。
「俺のこと嫌いにならないで。聖奈に嫌われたら悲しい」




