悪魔との出会い
【聖奈視点】
私は雷門聖奈。
「雷門グループ」の会長の孫、社長の娘として生まれた。
そして私には兄が一人いる。
私達兄妹の将来は、誰かと結婚して子供を作るか、雷門の経営を継ぐかしかない。
それは生まれた時から決まっていたこと。
兄が独身なら私が結婚しなければならないし、兄が他の仕事をしたいのなら私が会社を継ぐしかない。
私は兄の保険だ。
それが嫌だと思ったことはない。
そう育てられてきたし、私が別の将来を望めば兄の重荷になると思って、他の人生を考えないようにした。
大学卒業してすぐに雷門に入社した。
それが私の決められた運命。
基本的に受け身で、親に逆らわない私だけど、一つだけワガママを言った。
本社勤務を遅らせて欲しい、と。
いつかは本社で働かなければならない。
それは変えられない雷門家のルール。
でも本社には悪魔がいる。
悪魔の子ダミアン!
あの男がいるせいで私の人生は不幸だ!
彼と再会するのは、出来るだけ先延ばしにしたい。
ダミアンと初めて出会ったのは、3才の頃。
兄と同じ幼稚園に通うことになった私は、兄に親友を紹介された。
「俺の1番の友達のテイト。テイトは変な奴だけど、そこが面白くていいんだ。セイナもテイトと仲良くしてほしい」
兄の親友...明堂帝翔。
私はこの男を勝手にダミアンと呼んでいる。
由来は昔のホラー映画「オーメン」に出てくる悪魔の子の名前だ。
兄の親友は、私から見れば悪魔のような人だった。
幼稚園の頃のテイトは、ツーブロックのマッシュヘア。
髪型は変だったけど、顔は整っていた。
かっこいい男の子だなって最初は思った...認めたくないけど。
「俺の妹のセイナ。可愛いだろ?」
兄は昔から私をよく可愛がっていた。
自分のお菓子を妹に全て渡すくらい。
兄もお菓子も大好きだった私は、喜んで食べた。
そのせいで私は他の子より体が丸かった。
ダミアンは初対面の私を見てこう言った。
「お前の妹可愛いか? デブじゃん。あれに似てる...サモ・ハン・キンポー」
忘れもしない。
あいつは私をデブで可愛くないと言った!
私は傷付いた。
ちょっとかっこいい男の子に言われたのもあって、悲しい気持ちと恥ずかしさで泣いた。
それまで両親や兄に溺愛されていた私は、自分の容姿を客観視出来ていなかった。
自分が太っていることに気付いてなかったのだ。
幼稚園でダミアンは兄にべったりで、大好きな兄に会いに行けば、必ず2人はセットでいた。
私は彼に会うのが嫌で、幼稚園では出来るだけ関わらないようにした。
兄達が小学校に上がると、ダミアンは毎日家に来るようになった。
ダミアンの両親が離婚して、父親に引き取られたからだ。
日中はダミアンの家に親がいないので、父親が迎えにくるまでの時間、私達の家にお世話になることになった。
兄と2人で遊べばいいのに、ダミアンは必ず私を遊びに誘った。
2人じゃつまらないからと言って、鬼ごっこやかくれんぼに強制的に参加させられたり、交代でテレビゲームをしたり。
2才年上の兄達に足の速さや、頭脳で勝てるわけもなく、私はいつも負かされて泣いていた。
兄だけは優しくて、時々わざと負けたりしていたけれど、ダミアンだけは絶対に手加減してくれない。
何もかも弱い私と遊んで何が楽しいのだろう?
おまけにダミアンはずっと私をデブ、もしくはサモハンと呼んだ。
私はダミアンが嫌いだった。
そのうち泣いてばかりいる自分にも嫌気がさして、腹が立ってきた。
私は痩せて見返すことを決意した。
あの悪魔を黙らせたかった。
お菓子を我慢して、運動を始めた。
その努力の結果、私が小学校に上がる頃には平均体重まで落ちた。
ダミアンがいなかったら私はずっと太っていたかもしれない...そこだけは感謝する。
痩せた私にダミアンはデブと呼ばなくなった。
初めて「聖奈」と呼ばれた時は、嬉しくて感動してしまった。
それでもダミアンは好きになれなかった。
私が痩せても、彼の意地悪な態度は変わらなかった。




