仲良くしたい
「私、先輩に酷いこと言ったの覚えてますか?」
聖奈は俯く。
なんだこの雰囲気。
まさか泣く気か?
店内で?
他にもたくさん人がいるのに?
「えっと...『お前なんか大嫌い! 会いに来んな!』ってやつ?」
「うぅ...わざわざ口に出さなくていいです」
忘れるわけない。
再会する前、最後に会った時に言われた。
俺はそれから聖奈に会えなくなってしまった。
最後に会ったのは、聖奈が中学を卒業した直後。
思えばあれから十年以上経つのか。
得意のネトストで聖奈のSNSを探したが、見つからなかった。
俺のことをどう思っているのか、どうしてこんなに嫌われなければならなかったのか、聖奈の本音を知りたかった。
「大嫌い」だとか「会いに来るな」と言われてる以上、聖奈に会う勇気がなくて、俺自身も彼女を避けていた。
「俺はまた会えて嬉しい。聖奈と仲良くしたい」
そう言うと、聖奈は顔を上げた。
「私、あの時余裕がなかったんです。学校でも嫌なことばかりで、恋愛もうまくいかなくて。
一人になりたいのに先輩はしつこいし」
ん...?
その言い方だと、聖奈の好きだった男は俺ではないということか?
...やっぱり俺は普通に嫌われてただけ?
「傷付いた。今」
「ご、ごめんなさい!」
聖奈は何度も頭を下げる。
好き避けじゃなかったのか...。
「俺と一緒にいるのやだ? 仲良くしたくない?」
どうしよう。
なんか、辛い。
ああ、そういえば昔もこんな気持ちだった。
仲良くしたいのに、拒絶される悲しみ。
他の人なら気にしないのに。
俺のこと嫌いな奴は俺も嫌いだ。
他の人に嫌われたって何も悲しくない。
でも聖奈に拒絶されるのは悲しい。
胸が痛い。
穴が空いたように痛い。
「私も仲良くしたいです!」
彼女はそう言って、俺の手を握った。
「正直、先輩のことは避けてました。異動も嫌だった。先輩との別れ方も酷かったし、気まずいし」
俺は聖奈が異動してくると聞いて、嬉しかったのに。
俺と聖奈はこんなにも想いが違っていたのか。
「でも、先輩は普通に話してくれて、仲良くしようとしてくれて、私が選んだ服も着てるって聞いて、そんなに悪い人じゃないかも...って」
気になる。
何故俺はそんなにも嫌われていたんだ?
俺はどれだけ彼女に不快な思いをさせたんだ?
「とりあえずSNSのアカウント教えて」
マリアのフォロワー欄から探したが、それでもわからなかった。
聖奈が普段何を思ってるのか、気になる。
すごく気になる。
「えっと...先輩ってホント唐突に変なこと言いますよね」




