黒髪スーツのイケメン
聖也との昼食はだいたいカレーかラーメン。
会社近くは飲食店が多いのに、だいたいこの二択だ。
時々違うものも食べるが、今日は俺が選んでいいとのこと。
今週三度目のラーメン屋に入った。
「またここかよ。まあでも今日は童貞くんが面白かったから良しとしよう」
聖也はまだ俺のことを笑っている。
さすがにイライラしてきた。
いつも食べているもやしラーメン定食を注文して、俺はスマホをいじる。
マリアのSNSでも見て癒されよう。
ちょうど数分前に新しく投稿されていた。
『あー結婚したい。
私もう26なのに彼氏いなくて焦る!
誰か声かけてくれないかなー。
黒髪スーツのイケメンがいいなあ笑』
俺はスマホを落としそうになる。
彼氏いない?
いつの間に別れたんだ?
彼女の投稿には、オシャレな飲食店で撮った料理の写真が多い。
てっきり彼氏とデート中に撮ったものかと。
彼氏と別れてることに気付かなかったなんて...俺はマリアの何を見ていたんだ!
黒髪スーツのイケメンに声をかけられたい?
俺じゃん!
生まれて一度も染めたことがない髪。
毎日必ずスーツで出勤。
「聖也、俺ってイケメンか?」
コーラを飲んでいた聖也が呆れた顔をする。
「は? いきなり何?」
「俺ってイケメンか?」
「まあ...顔は良いよな。内面に問題はあるけど」
自他共に認めるイケメン...マリアが求める男の条件が全部揃っている!
こんな投稿見たら、仕事してる場合じゃない!