聖奈が選んだ服
結局、日比谷で買うのはやめようと聖奈が言って、有楽町まで向かった。
俺が変な態度をとったから、兄と不仲だと思ったようだ。
別に日比谷でも良かったのに。
日比谷から有楽町まではたったの5分。
車を出すまでもない。
好きなラーメン屋の話を俺が一方的にしている間に、有楽町のショッピングモールに着く。
「自分で服買ったことないから、何が良いのかわからないな」
とりあえず目についた服屋に入る。
「お前、どれがいいか選んでくれよ」
聖奈は困った様子だが、俺が選ぶよりかはきっと良いだろう。
任せっきりも可哀想なので、店内二手に分かれて、お互い良いと思った服を見せ合うことにした。
「サモハン見て! これオシャレ!」
早速見つけた服を持って、聖奈の元に戻る。
「昔のT.M.Revolutionみたいでカッコよくない?」
HOT LIMITの衣装のような服を見せると、聖奈は頭を抱えた。
どうやらダメらしい。
何故?
兄さんだって、こういう服着てテレビに出たことあるのに。
「先輩のセンスがよくわかりました。とりあえずこの店はちょっと奇抜なので、他行きましょう」
俺が選んだ服を聖奈は置いて、店を変える。
連れてこられたのはカジュアルめなお店だった。
「先輩は...悔しいけど素材は良いから、シンプルかつ上品なものが似合うと思います。ずばりジャケット+カットソー!」
...カットソーって何?
聖奈は店内を回った。
俺はただ黙ってついて行く。
彼女の目は生き生きとしていた。
「これとか良いじゃないですか! ちょっとダボっとしたジャケット。
色は藍色にしましょう。先輩は寒色系が似合います。陽より陰って感じだし」
俺って陰なのか...?
自分では明るい方だと思っていたのだが。
スーツのジャケットを脱いで、聖奈の言う藍色のジャケットを羽織る。
「わあ! とっても似合います!
これならどんなTシャツとも合いそう。ちなみに先輩は普段どんなTシャツ着てるんですか?」
「沖縄のTシャツしか持ってない。シーサーの絵がプリントされてたり、沖縄弁が書いてあったり」
沖縄の方言の意味は知らないけど。
ましてや行ったこともない。
「それって、にーやのお土産の?」
俺は頷く。
聖也は毎年沖縄に行っていた。
祖父の家が沖縄だということもあって、お盆休みに必ず沖縄。
その度にTシャツを買ってもらっていたわけだが、俺の私服はそれとジャージしかない。
大学時代からほぼそれで生活していることを聖奈に伝えた。
「服に興味なさすぎです! 東京にいてあんなの着ます?!」
沖縄Tがデート向きではないことはわかるが、そんなに悪いとも思えない。
誰ともかぶらないし。
それに...。
「俺のTシャツ、聖奈が選んでくれたんじゃないの?」
俺がそう言うと、聖奈は気まずそうな顔をする。
「し、知ってたんですか? 私がいつも選んでたこと」
聖也に初めて沖縄のお土産を貰った時から知っていた。
『悪いけど、俺が選んだわけじゃねーからな! 聖奈が選んだんだぞ!』
と聖也に言われて、ちんすこうが描かれたTシャツを貰ったのが最初だ。
あれだけ俺を避けていた聖奈が、俺の為に服を選んでくれたのがすごく嬉しかった。
「聖奈が選んだ服は着るよ」
俺の言葉に聖奈は悲しそうな顔をした。
喜ぶと思ったのに、何故そんな顔をするんだ。
「先輩、わたし意地悪したんですよ」
意地悪?
「わざとセンスのないTシャツを選んだんです。まさか本当に着るとは思わなかった」
センスがない?
わからない...シーサー、ジンベイザメ、ちんすこう、ゴーヤ...どのTシャツも可愛いのに。




