放置されたくない
「買い物、ですか?」
「俺私服ワンパターンしかないんだよ」
行ったこともない沖縄のTシャツ。
毛玉だらけの高校のジャージ。
大学もそれで通っていたし、休みの日はその姿で雀荘に行く。
さすがにあれでデートはまずいと思う。
合コンに呼ばれる時だって、聖也に「絶対スーツで来い」と言われるくらいだ。
「今日仕事終わったら服買いに行こうかなって。ファッションとかよくわからないし、俺に似合う服選んでよ」
「何で私が...」
聖奈があまり乗り気じゃない。
どうしよう。
女の人に選んでもらった方が良いと思ったのに。
母さんは夜仕事だし。
聖奈ならマリアと仲が良いらしいから、マリアの好みもわかりそうなのに。
「お前がデブだった頃の写真、皆に見せようかな」
確か実家にあるはず。
幼稚園の頃の写真が。
「行きます」
少し脅しただけで聖奈は行くと言ってくれた。
変な奴。
太ってたのなんて、子供の頃の話なのに。
人に見られてもいいだろ、別に。
今は可愛いんだから。
「じゃあ、にーやと私で相談して選びますね」
「聖也はいいよ、あいつ忙しいし。飲みの予定多いし」
なんで聖也がついてくるんだ。
聖也のことは好きだが、毎回一緒もだるい。
「でも、今日にーや予定ないかもしれないし」
「嫌なの? 俺と2人きりは」
「嫌です」
即答する聖奈。
...これって好き避け?
それとも、聖奈が俺のこと好きだなんて、勘違いだったのか?
「もういい」
試してみよう。
俺は不機嫌を態度に出して、秘書室に入る。
聖奈が俺のこと好きなら、放っておかないはずだ。
俺だったら、好きな人が不機嫌そうにしているのを放置しない。
「課長おはようございます」
皆が俺に挨拶する。
軽く朝礼をして、いつも通り全員に仕事を振った。
聖奈はまだ何も言ってこない。
意地悪してやろう。
俺は昨日の倍の仕事を、聖奈にメールで指示する。
反応が気になって横を見ると、連絡を読んだ聖奈と目が合った。
それでも何も言ってこない。
ただ眉をハの字にしてるだけ。
俺は無視して仕事を始めた。




