綺麗な箱
「ちょっと煙草買いにコンビニ寄っていいか?」
俺の返事を待たずに聖也はコンビニに入る。
聖也がレジで並んでる間、俺は店内をうろついた。
何か買おうかと思ったが、特に欲しいものはない。
商品棚を見ていると、ある物が目に止まった。
なんだ、これ?
蝶の絵が描かれていて、ギャルが好きそうな配色。
「なあ、聖也。この綺麗な箱はなんだ? カラコン? 俺こういうデザイン好きだわ」
ちょうどレジの順番がきて、店員が煙草を探しているのを待っている聖也に箱を見せた。
「とりあえずそれ棚に戻してこいよ」
聖也はその箱に一瞥した後、俺の顔を見ずに前を向いた。
「え? まあ、買わないけど...これ何?」
「今会計してるから後にしてくんない? 早く戻してこい」
さっきまでニコニコしていたのに、突然冷たい態度をとられた。
俺は何か気に障ることをしてしまったのだろうか?
しぶしぶ商品を棚に戻した。
セブンスターを二箱買った聖也はコンビニを出る。
俺は追って店を出た。
しばらく無言が続いた。
機嫌が悪い聖也は珍しいから話しかけづらい。
コンビニから少し離れたところで聖也は立ち止まって振り向いた。
「童貞にもほどがあるだろ」
聖也は笑いながら言った。
機嫌が悪いと思ったのは勘違いだったみたいで、俺は安心した。
「あの箱、コンドームだぞ! 帝翔がレジでしつこく聞くからめっちゃ恥ずかしかったわ!」
俺も笑ってしまった。
自分の無知より、あの時の聖也の心情を考えてしまうと笑える。
「お前って奴は本当面白いよなぁ! この歳になってあんな恥ずかしいことはなかなかねぇ!」