大学時代に働いたバー
お互いお腹がすいてなかったので、マリアを連れて行きつけのバーに行った。
地元中目黒にあるバー「SHIMON」。
ここは帝翔の母親の店だ。
そして大学時代4年間バイトしていたバーでもある。
ちなみに帝翔も一緒に働いたが、あいつは3日でクビになった。
3日中3日とも客と揉めたからだ。
接客業向いてなさすぎる。
SHIMONの扉を開くと、カウンターに帝翔がいた。
会社を早退した帝翔が、SHIMONに来ていても俺は怒らない。
むしろ、本当に体が悪いのではないかと心配になった。
帝翔もこのバーに飲みに来ているが、平日には絶対に来ない。
仕事が終わったら、飲みの誘いも全て断って、一刻も早く家に帰りたい男だ。
ここに飲みに来るのは、休みの日に俺と一緒に来るくらい。
もしかしたら、病気のことを母親に伝えに来たのかも。
「帝翔、体調大丈夫か?」
俺がそう聞くと、カウンターの中にいた帝翔の母親・美智子さんが驚く。
このバーは永遠に人手不足で、オーナーである美智子さんがカウンターに立つことが多い。
「体調? あんたどっか悪いの?」
母親に話したわけではないのか?
帝翔は顔が真っ青で、今にも倒れそうだ。
俺は背中をさすってあげた。
どこが悪いのかわからないので、さすっても意味ないのかもしれないが。
帝翔はマリアのことをじっと見つめていた。
「ん? ああ...彼女はマリア」
「か、彼女?!」
「え? ちげーよ。彼女っていうのは、この女性はって意味の彼女で...マリアは友達」
マリアは何度もSHIMONに連れてきているが、帝翔に会わせるのは初めてかもしれない。
彼女は平日休みだから、平日しか飲みに来ない。
もっと前から会っても良さそうな二人だが、今の今までタイミングが合わなかった。
「友達って、どういう意味で友達? 普通の友達? それともセフレ的な?」
帝翔の言葉に、俺は苛立ちを覚えた。
こいつが接客業3日でクビになる理由がこれだ。
とにかく失礼。
思ったことをすぐ口に出す。
他人の気持ちなんて考えられないのだ。




