既読無視
一度家に帰って着替えてから渋谷に向かった。
タクシーの中でスマホを見る。
帝翔が帰ってすぐに、俺はラインを送っていた。
『体調大丈夫か? なんの病気か言いたくないなら無理に聞かないけど、もし俺に出来ることがあるなら言ってくれよ』
その返事はなし。
既読は4時間前からついている。
帝翔は元々、既読スルーするタイプだが、このメッセージに対しても無視とは。
あんなにいつもスマホをいじってるくせに、ラインの返事は無視か、返しても一言。
スマホで一体何をしてるんだか。
後で電話しよう。
さすがの帝翔も、電話は無視しない。
待ち合わせ場所に着くと、マリアは既に待っていた。
「ごめん、待った?」
「ううん、私も今きたとこ」
マリアは笑顔を見せる。
今日は機嫌が良さそうだ。
「聞いて! 今日職場にイケメンが来たの」
「イケメン? 男なんて来るのか?」
マリアは女モノしか売ってない服屋の販売員だ。
彼女連れの客か、配達の人くらいしか男は寄らないだろう。
「駐車券の処理お願いしてきただけなんだけどね。すっごいイケメンだった。あの人に似てる、えーっと...やだ、名前ど忘れしちゃった。さっきまで覚えてたのに」
「芸能人?」
「ううん、同じ高校にいたの」
「それは知らん」
マリアとは同じ高校だったらしいが、その頃はまだ知り合っていない。
それに、俺が高3の頃にマリアは高1だ。
どのくらいイケメンかは知らないが、他学年の男子生徒なんて知るわけがない。




