ハーレム
「童貞! 昼メシ食いに行こーぜ!」
飲みに行く相手は毎回違っても、昼メシを食う相手はいつも一緒だ。
秘書課の課長、明堂帝翔。
帝翔とは幼稚園の頃からの幼馴染だ。
黒髪で前髪は少し長め。
黒スーツで毎日同じネクタイ。
芸能事務所に入っていると言われてもおかしくないくらい、男から見ても顔が整っている。
この顔で童貞なのだ。
「童貞って言うな!」
基本は無表情でクール系に見られがちだが、幼稚園の頃から一緒にいる俺にはそうは見えない。
感情が顔に出やすくて、わかりやすい男に見える。
「うっせぇ童貞!」
息子の幼馴染だから、というの関係なしに、社長に実力を買われて課長に昇進した帝翔。
ただ、思ったことをすぐ、オブラートに包まずに言ってしまうので、後輩にはあまり好かれない。
メンタルが弱い者は、帝翔と仕事しただけですぐに辞めてしまう。
それでも顔は良いから、女性社員には他部署からも人気がある。
気付けば秘書課には、帝翔と気が強い女達で、プチハーレムが作られていた。
しかもこの秘書課の女達は美人揃いだ。
美人じゃないと、他の女達にいじめられる。
仕事が出来なくてもいじめられる。
才色兼備で自己肯定感の高い女でなければやっていけない。
側から見れば地獄のような部署だ。
俺はいつもこうやって帝翔に童貞いじりをするのだが、秘書課の美女達は何も反応を見せない。
「幼馴染だからふざけ合っているのね」とスルー。
帝翔が童貞だろうがなかろうが関係ない。
最後に選ばれるのは自分だと信じて、この地獄の部署を生き抜いている。
そして、こんなに美女揃いなのに、誰にも関心をもたないのが帝翔だ。
だからこのハーレムは一応、平和を保っている。




