ハデスのように
「あの、もし私の勘違いだったらごめんなさい。帝翔さん、今日武蔵小杉のショッピングモールにいました?」
俺はドキッとした。
ストーカーしてることバレていたらどうしよう。
「は、はい」
「ああ、やっぱり! 似てると思いました! 駐車券の処理したの私です」
「...よく俺だって覚えてましたね」
「覚えてますよ! 帝翔さんみたいなイケメン、なかなかいないですから」
俺は思わずにやけてしまった。
マリアにもイケメンだと認められて嬉しい。
「俺もマリアさんのこと覚えてますよ。同じ高校の中で一番美人でしたから」
我ながら大胆なことを言った。
恥ずかしくて誰とも目を合わせられない。
「高校時代に二人は知り合ってたのか?」
聖也の疑問にマリアが答える。
「私は知ってたわ。生徒会長の明堂先輩...ですよね? 私が高1の時の生徒会長。イケメンすぎる生徒会長って、私の学年でも人気だったんだから」
そうだ、俺は人気者だ。
毎週誰かに告白されていた。
女教師にも口説かれたことがある。
そんな薔薇色の高校生活でも、童貞を守り通した自分を褒めて欲しい。
これがギリシア神話のゼウス並みの性欲を持つ聖也だったら、片っ端から女を抱いていただろう。
俺はハデスのように、ペルセポネだけ抱ければいい。
「でも帝翔さんは何故私を? 一回、裏庭に呼び出されたことがあるんですけど、覚えてますか?」
忘れるわけがない。
あの失態を今でも悔やんでいるのだ。
しかし、マリアも覚えていたとは。
嬉しい気持ちが半分。
忘れて欲しかったが半分。




