聖也の友達
そんなことを話していると、ノーゲスだった店に、お客さんが入って来た。
「あれ? 帝翔?」
母さんが「いらっしゃいませ」を言う前に、その客は俺に声をかけた。
聖也だった。
仕事が終わって一度帰ったのか、私服姿だった。
長い襟足を後ろに結んでいて、グレーの虎柄のジャケットを羽織っている。
私服もホストみたいだが、それがまた似合う。
「帝翔、体調大丈夫か?」
会社を早退しといてバーに飲みに来ているなんて...そう怒られるかと思ったが、聖也は穏やかだった。
きっと、母親の店だから許されたのだろう。
「体調? あんたどっか悪いの?」
母さんが、一応母親らしく心配する。
体調不良は仮病だが、次の瞬間俺は本当に体調が悪くなった。
聖也は一人ではなく、女性を連れていた。
その女性というのが、あの聖マリアだったのだ!
マリアに気付いた俺は、真っ青になる。
何故聖也がマリアを連れているんだ?
二人は知り合い?
もしや...聖也の彼女?!
「ん? ああ...彼女はマリア」
俺の目線に気付いた聖也は、マリアを紹介する。
「か、彼女?!」
「え? ちげーよ。彼女っていうのは、この女性はって意味の彼女で...マリアは友達」
「友達って、どういう意味で友達? 普通の友達? それともセフレ的な?」
聖也の表情が一瞬で恐ろしい程冷たくなった。
「お前、くそ失礼だぞ」
本気で呆れてる目だ。
「ごめんな、マリア。こいつは俺の幼馴染の帝翔。デリカシー無いから、失礼なこと平気で言う奴なんだけど、根は悪い奴じゃないから許してやってくれ」
冷静に考えてみれば、俺はとんでもないことをマリアの前で聞いてしまった。




