足りないもの
「そんなことない。女には興味がある。イケメンな俺に見合う女がなかなかいないってだけで」
母さんは頭を抱えた。
「はあ...なんでこう、私の息子は二人ともナルシストなんだか。女を見下してるところ、お父さんにそっくりよ」
あんな典型的モラハラ夫な父親と一緒にしないで欲しい。
それに、母さんのことを俺は別に見下してない。
「いいなって思う人はいるの?」
「いる」
「え! どんな人?」
「一言で言うと白ギャル。化粧は濃いめ。可愛いより美人系。身長は160後半くらいかな。胸の大きさは普通」
「... キャバ嬢か何か?」
「いや、アパレルの店員」
母さんは俺を疑うような目で見る。
「服に興味ないあんたが? そのジャージやめろって言ってんの。恥ずかしい」
母さんはカウンターから出てきて、俺のボロボロのジャージの上を脱がす。
「まずは服装から変えた方が良いわよ。こんなだっさいTシャツもやめて」
ジャージの中に着ていたロンTまで馬鹿にされる。
「ちゃーがんじゅう」という文字と、シーサーの絵がプリントされたTシャツ。
聖也から沖縄のお土産で貰ったものだ。
一枚貰ったら気に入ってしまい、聖也が沖縄に行く度に、Tシャツを買って来てくれとお願いしている。
気付けば何枚も沖縄方言Tシャツを持っているが、俺自身は一度も沖縄に行ったことがない。
「服か...確かに、兄さんも聖也も、オシャレにこだわるもんな」
聖也は何年も彼女がいないが、俺とは違う。
彼女が出来ない、というより、あえて作っていない。
金持ちで優しくて、顔もそこそこ良いから、聖也に寄ってくる女はたくさんいる。
その中から一人を選べないのか、誰のことも本気で愛せないのか。
やることはやるが、付き合うことはしない...そんな話をいくつか聞いている。
「俺に足りないのはファッションセンスかぁ」
「他にもたくさんあるけど、まずは服装ね。出来ることから始めましょ」




