素っ気無い
それ以来、聖奈は俺の前で携帯をいじらなくなった。
だからといって仲直り出来たわけじゃない。
聖奈は俺を無視するようになった。
勉強は続けてくれるが、終わったら基本無言。
「聖奈、話そうよ」
と言ってもシカト。
聖奈の膝に頭を乗せて、勝手に膝枕してみても、冷たい目で見下ろされる。
...涙で潤んだ瞳で見上げる聖奈は、抱きしめたくなる可愛さがあるが...ゴミを見るような目で見下されるのも...良い。
俺は何かに目覚めてしまいそうだ。
「聖奈、ハグしようよハグ」
ハグすれば前みたいに機嫌良くなると思って、俺は聖奈を抱きしめようとした。
「やめてください! 触らないで!」
俺の腕を払う聖奈。
これじゃあ仲直り出来ない!
「まだ許してくれないの? どうしたら許してくれる?」
そう聞いてるのに答えてくれない。
俺はもう一度聖奈の膝に頭を乗っけた。
どうやら膝枕は良いらしい。
メールも返してくれないし、冷たい。
映画や観劇は、チケットを先に買えば一緒に行ってくれることだけはわかった。
出掛けても俺が永遠に話しかけてる。
聖奈は「へえ」とか「ふーん」とかしか言わなくて素っ気無い。
例の男とまだ続いてるの? ...と聞いてみたいが、これ以上嫌われるのは怖い。
結局、聖奈が中学を卒業するまでそんなのが続いた。
強情なやつ!
聖奈は俺の努力のおかげで、同じ高校に受かった。
春からまた同じ学校。
でもこの感じだと、学校で話しかけても無視されそうだ。
「聖奈、卒業式の後予定ある? デートしようよ」
俺は初めて「デート」という単語を、聖奈に口にした。
今までもずっと、2人きりのお出掛けはデートだと思ってたけど、口にするのは照れ臭くて言ってない。
俺が勇気を出してデートに誘ってるんだから、断らないでくれ!
「デート...ですか?」
聖奈が久々に俺の目を見てくれた。
「えっと...その日は予定があって。次の土曜日でもいいですか?」
当日はダメみたいだけど、聖奈が別の日を提案してくれてよかった。
例の男とは、きっと何も進展がなかったのだろう。
じゃなきゃ俺とデートしないよな?
どこに行こうか。
遊園地は...絶叫が苦手な聖奈はあまり楽しめないよな。
定番は水族館?
イルカのショーとか見たりして、帰りはお揃いのキーホルダーなんか買っちゃったりして。
水族館の後にお寿司食べようって言ったら聖奈は呆れるだろう。
そんな顔も可愛いから、見たい。
俺はいつも以上にデートの計画を練った。
中学を卒業したお祝いでもあるんだ...いつも以上に楽しませなきゃ。
卒業式は平日だったので、俺は高校があって行けなかった。
そもそも俺は家族でもなんでもないから、聖奈の卒業式に参列出来ないのだが。
その日の授業が終わって、寄り道せずに最寄り中目黒まで電車で帰る俺。
山手通り側の改札を出てすぐのところに、聖奈が立っていた。
おめかしをしていて、誰かを待っている様子だ。
「聖奈、どうしたの?」
声をかけてみる。
彼女は俺に気付くと、気まずそうに目を逸らした。
「可愛い女の子がいるなと思ったら聖奈だった。ナンパしようかと思ったよ」
ナンパなんてしたことないけど。
俺がそう言うと、聖奈ははにかんで俯く。
褒め言葉は素直に喜ぶみたいだ。




