聖奈の好きな男
俺は無事に志望校に合格して、中学を卒業した。
俺の学ランのボタンが欲しいと数人の女の子に言われたので、1個1000円で売った。
こんなもの...何故欲しいのだろう。
第二ボタンは聖奈にあげた。
よくわからないけど、皆が欲しいのは第二ボタンで、そんなに価値があるものならその辺の女の子に渡したくなかった。
「第二ボタンは、心臓に1番近いボタンだから、皆欲しいのよ」
と、聖奈が教えてくれる。
なら、尚更聖奈に貰って欲しい。
俺が卒業しても、寂しがらないように。
...まあ、今は携帯があるから、いつでも連絡出来るけど。
バレンタインの日から聖奈は元に戻った。
もう悲しそうな顔をしていない。
ハグの力は偉大かも。
俺は高校に入っても家庭教師を続けた。
聖奈との時間が削られるのが嫌で、部活には入らなかった。
俺達は1番の友達で、仲良しだった。
1年は平和に過ごしていた。
このまま大人になるものだと思っていた。
雲行きが怪しくなってきたのは俺が高2になった頃。
聖奈はやたら携帯を気にしていた。
誰かとのメールに夢中で、勉強中は我慢していたが、終わるとずっと携帯を離さなかった。
「男でも出来た?」
冗談のつもりで聞いた。
聖奈は顔を真っ赤にして慌てる...わかりやすいやつ。
「彼氏出来たの?」
「か、彼氏だなんて! 全然、まだそんなんじゃないです」
「まだ」ということは、そこそこいい感じなのだろう。
俺と会う頻度はそんなに減ってないのに、いつの間に...。
「どんな人? 何歳?」
「えっと、高校3年生です」
しかも歳上かよ。
俺の1コ上か。
「そんな歳上、どこで出会ったの?」
「...友達の、お兄さんです」
...俺以外に友達いたんだ。
他の友達の話なんて全然聞いたことがない。
「イケメンなの?」
「えっ...まあ...」
「俺よりイケメン?」
「...同じくらいです」
「やめときなよ。ろくな男じゃないって」
顔が良い男はだいたい遊んでる。
遊んでないのは俺くらいだ。
女性の理想がただでさえ高いのに、潔癖症で、非社交的な俺くらいだ。
他のイケメンは9割遊んでる。
「良い人ですよ。すごく優しいんです」
優しさなら俺だって負けてない。
「例えばどういうところが優しいの?」
「...私のことたくさん褒めてくれます」
「『聖奈ちゃん可愛いね』とか? 男の言葉なんて信じちゃダメだよ。
男は行動。言葉じゃなくて行動で見ないと」
心配だ。
聖奈はふわふわしてるから、悪い男に騙されないか心配だ。




