倒れた聖奈
「...聖奈とは結婚出来ないな。付き合ってもいいけど、俺がいつか結婚相手見つけたら別れるよ。
それってどうなの? それでもいいなら彼女にするけど」
それでも聖奈が良いと言うなら、俺は付き合う。
俺だって聖奈が1番合うってことはわかってる。
でも聖奈は、俺の父さんとやっていけないんだ。
結婚する気がない男と付き合うなんて嫌だよな。
無責任。
そんな無責任な奴、この世にゴロゴロいるんだろうけど。
俺の性格上出来ない。
申し訳ないが勝る。
特に聖奈は、俺にとって大事な女の子だ。
そんな子を雑に扱えない。
「結婚するなら、聖奈と真逆の人じゃないと」
父さんは「去っても傷付かない女と結婚しろ」と言っていた。
そういう意味でも聖奈はダメだ。
仲良くなりすぎた。
俺の人生から聖奈が消えるのは耐えられない!
「心配するなよ。そもそも聖奈は、俺のこと好きじゃないだろ」
「お前、マジで言ってる?」
聖也の笑顔が消えた。
「それだけ思わせぶりな態度しといて?」
思わせぶり?
聖奈のことは大切にしてる。
それを思わせぶりと言われるのは心外だ。
全く眼中にないわけではない。
聖奈が俺のこと、よっぽど好きなら考える。
父さんから守ってやるし、俺だって聖奈に見放されないように努力する。
でも、これだけずっと一緒にいて、異性としての好意が見られないのだから、聖奈だって俺に友達でいて欲しいんだろ。
俺達のことに首を突っ込まないで欲しい。
現状維持...それが一番良い。
「聖奈、遅いな。様子見に行ってくるよ」
これ以上、聖也と話していると喧嘩になりそうだ。
俺は部屋を出る。
階段を降りようとすると、倒れている聖奈を見つけた。
俺は肝を冷やす。
「聖奈? 聖奈、大丈夫?!」
聖奈の体を起こした。
意識はある...良かった!
「どうした? 転んだのか?」
「ちょっと...眩暈がして」
眩暈?
病気だったらどうしよう!
俺は聖奈を抱き上げて、慌ててベッドに運んだ。
「聖奈どうしたんだ?」
聖也が心配する。
「階段で倒れてた。救急車呼んだ方がいいかも」
俺が携帯を手に取ると、聖奈が止めた。
「大丈夫、そんなんじゃないから」
そんなんじゃないって...倒れてたんだぞ?!
倒れることなんて、人生でそんなにあるものじゃない。
「貧血? それとも熱? 体温計はどこにあるの?」
「本当に大丈夫だから...!」
心配しているのに、聖奈は強く拒んだ。
「ごめんなさい...少し休ませて...一人にしてください」
どう見たって平気じゃないのに。
放っておくことなんて出来ない。
「帝翔、俺達は出よう」
聖也が部屋を出るよう促してきた。
なんだコイツ...ムカつくな。
こんな状態の妹を放置するなんて...正気かよ!
「お前、自分の妹が心配じゃないのか? 倒れてたんだぞ」
「...わかった。とりあえずお前は部屋から出ろ。俺が残る」
何で俺が出て行かなきゃならないんだ!
出るならお前が出ろよ! ...という不服が喉まで出た。
先に聖也が言葉を続けていなかったら、俺は口にしていたと思う。
「聖奈は家族には甘えられるけど、家族以外の前では強がるから。
だからお前は一旦部屋を出てくれ」
何も言い返せない。
そうだ...俺は家族じゃない。
悔しい!
俺は他人だから追い出されるんだ。
こんなに一緒にいるのに、聖奈は俺に甘えてくれないのか?
俺は部屋を出た。
怒りがふつふつと湧く。
誰も悪くない...けど、聖也にマウントをとられたような気がして腹立つし、俺を頼ってくれない聖奈にもガッカリだ。




