探られる
冬休みに入った。
いつものように雷門家に行く。
聖奈がコーヒーを淹れてくると言って、俺は部屋に1人残された。
今日教える数学の準備をしていると、聖也がドアを開けて入ってくる。
「お前、まじでメール返信しないよな」
いきなり文句を言われる。
「あ...ごめん。忘れてた」
読んではいるのだが、返事を打つのが面倒くさい。
つい後回しにしてしまう。
俺に用があるから、電話をかけて欲しい。
タイミング悪く出れなかった時は...折り返さないけど。
通話料かかるし。
「そのわりには聖奈には返事早いみたいじゃん? 聖奈がずっと携帯いじってるから、誰と連絡してるのか聞いたら、お前だって」
聖奈...それは言っちゃダメだよ。
人によって返信速度が違うこと、バレちゃったじゃん。
「仲良いよなー。聖奈の誕生日に、遊園地に行ったんだって?」
聖奈の誕生日は12月。
東京ドームシティに昼から行って、アトラクションを制覇した。
聖奈は絶叫系をすごく嫌がってたけど。
無理に乗せて、少し可哀想なことをしたかもしれない。
その後はラクーアにある、映画「フォレスト・ガンプ」のレストランに行った。
ホラー映画ではないが、俺達はフォレスト・ガンプが大好きで、一緒にこのレストランに行くことを約束していた。
「美味しいし、お店の雰囲気も良いし幸せ! 毎年来たいな」
窓際の席で、噴水ショーがよく見れて綺麗だ。
ジェットコースターでぐったりしていた聖奈が、レストランで元気になって良かった。
毎年...って言うなら、来年も同じ場所でいいか。
その日のデート代は、いつもより高くついたけど全部俺が出した。
聖奈が勉強を頑張ったおかげで俺はお金を貰えてるのだから、彼女の為に使いたい。
「それにお前、ネックレスプレゼントしたんだろ。やるよなー」
聖也はどこまで聞いてるんだ?
...やましいことは無いから、別にいいけど。
「観覧車の中で渡したんだろ。お前って意外とロマンチストだよな」
ロマンチスト?
そんなわけないだろ。
男尊女卑の父親と2人で生活している俺が、女心が何かわかるわけない。
遊園地とレストランは単純に俺が行きたかった。
何をあげたらいいのかわからなくて、プレゼントは母さんに聞いた。
観覧車の中で渡すのが良いと聞いたから、そこで渡しただけだ。
「キスとかしなかった? 観覧車の頂上でキスすると一生一緒にいられるって」
マジか。
それはもっと早く知りたかった。
いや...知ってたとしても、俺に出来ただろうか?
「お前、彼女いないの? 隠してるんだったら言えよ」
聖也は何でこんなに俺のことを探ってくるんだ?
昨日のメールだってそう、俺に彼女がいるのか聞いてきた。
「いないよ。いたら毎日来ないでしょ」
「俺の妹とかどう? お前ら仲良いじゃん。俺はオススメするけど」
驚いた。
聖也は妹を可愛がっているから、誰にも渡したくないのだと思っていたけれど。
俺になら、妹は任せられると思ってくれてるのか?
「聖奈? 良い子だし可愛いよな。でも...」
趣味も合うし、顔も好きだ。
でも、結婚は難しい。
父さんが許さないだろう。
仮に、父さんの反対を押し切って交際したとする。
俺は生まれた時から父さんと一緒にいるから、嫌味や小言に慣れていて聞き流すことは出来るけど、すぐ泣いてしまう聖奈が父さんとやっていけるとは思えない。
父さんが理由で俺と聖奈の関係が壊れたら、俺は父さんを殺してしまうかも。
...殺すは冗談だが、父さんのことを一生恨んでしまいそうだ。
それなら、聖奈とは友達のままでいて、他の結婚相手を探した方が良い。
父さんに文句を言わせない相手と、俺は結婚する。




