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童貞って言うな!  作者: 袴田一夜
明堂帝翔
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怖いもの


雷門兄妹は見た目にギャップがある。


兄の聖也はチャラそうな見た目だが、成績は常に上位。


雷門家の長男という自覚があって、勉強熱心で努力家だった。


妹の聖奈はおとなしそうな見た目で、勉強嫌い。


成績は悪くもないが、特別良くもない...順位は真ん中くらいだ。


聖奈の期末テストの結果を勝手に見た俺は、ため息を吐く。


これじゃあ同じ高校に入れない。



「やめてよ! 見ないでよ!」



聖奈は半泣きで、俺から成績表を奪い返す。



「聖奈、ゲームしてる場合じゃない。俺が勉強教えてやるから、同じ高校を目指して」



そう言って俺は聖奈の家庭教師になった。


父さんが聖奈を馬鹿にするのは許せない。


聖奈だって、やれば出来るんだ。


夏休みの間も、ほぼ毎日聖奈に会いに行った。


聖奈が課題をやってる間、俺も勉強出来るし、その後遊べて楽しいし、一石二鳥だ。


2時間の勉強の後はDVDを借りに行って、映画を一緒に観た。


夏だから怖い映画を片っ端から借りた。


ホラー映画だけは、ほとんど制覇したと思う。


俺は幽霊なんて信じないタイプだったから、何を見ても全く怖くない。


グロい描写も、どうせリアルじゃないと思うと、平気で見れてしまう。


幽霊もグロいのも苦手で、怖いシーンは目を覆うくせに、ホラー映画を観たがる聖奈は謎だ。


怖いもの見たさというやつか?


しかし怯えている姿は小動物みたいで可愛い。


俺はホラー好きというよりは、聖奈の怖がっている姿を見るのが好きだった。



「先輩は怖いものないんですか?」



聖奈にそう聞かれたが思いつかなかった。


オバケも幽霊も怖くない。


ジェットコースターも雷も虫も平気。


父さんに怒られるのも慣れてる。


物心ついた頃から、泣いた記憶がない。


俺は一部の感情が欠落しているのかもしれない。




夏休みの後半、聖奈に誕生日プレゼントを貰った。


当日は家族と過ごさなければならなかったので会えなかったが、次の日に会いに行ったらプレゼントをくれた。


包装紙を開けると、中には灰色の猫が描かれたブックカバー。



「先輩って猫っぽいなって思って」



聖奈がそう言う。


俺って猫っぽいんだ。


こんなに長い仲なのに、誕プレを貰ったのは初めてで、俺は嬉しかった。


聖也にだって貰ったことがない。


俺もあげたことないけど。



「可愛い! ありがとう!」



早く新しい本を買いたい。


大事に使おう。


ソファーに座っている聖奈の膝に、俺は頭を乗せた。


人生初の膝枕。



「な、何?」



聖奈は困惑している。



「猫」


「どういうこと?」


「俺、猫だから。頭撫でて」



誕生日だったから甘えちゃお。


聖奈は躊躇いながらも、撫でてくれた。


気持ちいい。


年に一度くらいは甘えてもいいよな。



「...何やってんの?」



聖也が聖奈の部屋に入ってきた。


邪魔だな。


聖也のことは親友として大好きなのに、聖奈といる時は、どっか遊びに行けばいいのにと思ってしまう。



「聖也、俺にプレゼントないの?」



一応聞いてみる。



「プレゼント? ああ、昨日誕生日か...ねーよ。あげたことないだろ。俺も貰ったことないし」


「じゃあいい。入ってくんな。どっか行け」



俺は目を瞑る。


今は聖也と話す気分じゃない。


聖奈に撫でられると安心する。


寝てしまいそうだ。


一緒にいて楽しい、癒される、居心地がいい。


これが心を奪われるってことなのか?


でも、父さんの教えでは、こういう女性は危険だ。


信じて裏切られた時、俺は酷く傷付くだろう。


もしかしたら俺は聖奈のことが好きなのかもしれない...ここ最近ずっと考えていたが、そう思ってはいけない相手だと今確信した。


好きになって、付き合って、結婚して、もし裏切られたら...憎悪の感情に支配されてしまう。


聖奈とは、このまま友達でいい。


俺が唯一恐れるもの。


それは聖奈との関係が壊れることだ。

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