父さんにバレる
女子トイレの会は長く続かなかった。
担任の先生に見つかって、怪しまれたからだ。
そりゃそうか。
女子トイレの前で、俺はずっと誰かに話しかけているのだから、側から見れば変人だ。
俺達は場所を変えて、屋上への階段で話すようになった。
その階段は理科室前トイレのすぐ横にあって、昼休みはほとんど人が通らない。
階段を上らない限り、俺達の姿も見られない。
カップルが密会するには良い穴場だと思うのに、俺達しか知らないなんて。
俺はこの場所が気に入った。
世界は俺達2人だけになったような静けさ。
ずっとこのままでいたい。
気を遣わず、とりとめのない話が永遠に出来る、聖奈の居心地の良さが好きだ。
残念ながら、昼休みは20分しかないので毎日この時間はあっという間に終わる。
もっと会いたい!
もっと一緒にいたい!
夏にはバスケ部の引退試合が終わって、俺の活動は生徒会だけになった。
生徒会なんて遅くても17時に終わる。
俺は毎日聖奈の家に行くようになった。
父さんが帰ってくるのは20時頃。
19時に雷門家を出れば夕食の用意は出来る。
生徒会が早く終われば、聖奈と映画1本は見れた。
1本見る時間が無い時は、一緒にホラーゲームをした。
楽しい!
やっぱり聖奈は良い!
俺の好きなこと、楽しいことだけを一緒にしてくれる。
最初は聖也の代わりだと思っていたが、今では聖也以上だ。
この関係が一生続けばいいのに。
「お前、最近雷門家の娘と遊んでるらしいな。勉強もしないで...随分と余裕だな。受験生だというのに」
ある日、父さんに詰問された。
家に帰ってきたと思ったら、開口一番に言われてうんざりする。
父さんに聖奈と遊んでることは言ってない。
父さんは聖奈のパパと仲が良いから、すぐに知られるとは思っていたが、案の定責めてきた。
「俺、やることやってんじゃん。この間の三者面談で先生言ってたでしょ? 俺ならどこの高校でも行けるって」
「お前なら都内一の高校に入れるのに。何故、あの高校が第一志望なんだ?」
俺の志望校は聖也と同じ高校だ。
父さんと聖也パパの母校でもある。
「父さんと同じ高校に行ってみたいなって」
「いいや、お前がそんな理由で選んだわけではないことはわかってる。最初は聖也と同じ学校に行きたいのだと思った。
それが理由なら許してやろう。親友がどれほど大事なものか、俺だって龍一がいるからわかる。
偏差値も悪くないし、どこの大学も目指せる高校だ」
「じゃあいいじゃん。別に都内一の高校に入らなくたって。
だって都内一の高校って男子校じゃん。嫌だよ男子校なんて」
オーブンが鳴った。
今夜の夕飯は父さんの好きなグラタンだ。
今日こんなに怒って帰ってくるなら、好物を作っておいて良かった。
「お前の1番の志望理由はそれだろ! 共学じゃないと、雷門の娘が同じ高校に入れないから!」
俺は動揺した。
ミトンをつけるのを忘れて、熱々のグラタン皿を素手で触ってしまう。
「あの娘はダメだって何度も言っただろ!」
息子が火傷してるのに、そんなの見えてないみたいだ。
俺は水で手を冷やしながら、父さんの小言を聞いた。
「ふん、まあいい。聞くところによるとその娘、あんまり成績が良くないみたいじゃないか。
どう頑張っても、同じ高校には入れないだろ。母親に似てバカなんだから」
謎だ。
何故そんなに聖奈のことを嫌うんだ。
確かに聖奈のママは父さんの元カノかもしれないけど、その元カノを奪った親友のことを父さんは恨んでない。
どうせなら両方恨んでくれ。
両方恨んでくれていたら、俺が雷門家と親しくなることはなかったのに。
俺と雷門家を繋げたのは父さんだろ。
「父さんって何で聖奈のこと嫌いなの?」
そう聞いてみると、答えは単純だった。
「聖羅に顔が似てるからだ。お前と並ぶと、昔の俺を思い出してしまう」
つまり、自分を捨てた元カノに顔が似てるから嫌いなんだ。
ちっさ!
器小っさ!




