表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁生  作者: たると
6/29

1-6

叔母は恐ろしく簡単に許諾した。

父にも電話で一報を入れてもらった。

頃合いを見て迎えに来ることになった。

期限が伸びたことを知ると

彼女は解放されたように、はしゃいで見せた。

私の言葉数が十とするならば、大げさでなく

彼女は百や千の言葉に音を与えていた。


 話すことに疲れると二階の部屋や隣接する作業場に

私を連れまわした。

作業場では、祖父が黒い汚れが付いた冷蔵庫を開け

中から茶色い瓶に入った小さいジュースをくれた。

半開放的な作業場は、私にとっては外と同義であり

そこにある冷蔵庫は、とても異質で特別に感じた。


 冬にはいつも蜜柑をくれた。

段ボール箱に片手を突っ込み、三つほど掴み取る。

私は両手で受け取った。

作業場で剥いて食べる。次第に祖父の剥き方を

真似るようになった。

皮のまま半分に割り、さらに半分に割る。

蜜柑の粒が3つほどくっついた塊を一つとして

皮から外して食べる。

私は今でもそうしている。

陽菜と二人で、ドラム缶で炊いている火に

皮を投げ込んだ。

水が爆ぜる乾いた音が鳴る。


 日が隠れはじめ、影の輪郭は水にぬれたように

溶けだしている。

祖母が夕食の準備を始めていた。

敷地の前の道路がライトで照らされ、

一台の車が入ってくる。。

「茂雄さんが帰ってきましたわ。」

叔母がそう言った。

陽菜は「お父さん」と呼び

祖父や祖母も「茂雄さん」と呼ぶ。

私は何と呼べばいいだろうか。

陽菜に対する言葉使いでいいのだろうか。

敬語を使うべきだろうか。

敬語を使う子供なぞ、可愛げがないと思われないだろうか。


軽い扉が開いた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ