表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁生  作者: たると
16/29

2-4

 煙が喉を擦るように通っていく。

一拍開けて、彼女のいない空間に吐き出した。



「いや、いない。」



「そうですか。では、なるべく早く煙草を消してくださいね。

 寒くて、そう待ってはいられませんよ。」



「しばらく我慢していたんだ。そんなに急かしてくれるな。」



「私も我慢をしていたのですよ。」



「なんだ、じゃあ君も吸うかい。」



「愚鈍を演じても面白くないですよ。石原さんとの会話、聞いていらしたのでしょ。」



私は口惜しいふうに煙草をすり潰した。

私が歩き出すと彼女も隣に寄って歩いた。

いつもは別れる駅前の信号を通り過ぎる。



「帰らないのですか。」



「帰って欲しいのかい。」



「答えるのはあなたですよ。」



話している間も歩みを止めず、それを答えとして彼女に送った。

いつもは通らない道だった。

ガラス張りの美容院の前を通る。防犯灯が灯り、薄明るくぼやけたいくつもの鏡の前には

紺藍色の椅子が並んでいる。

コンビニの明かりは、私に一層夜を感じさせた。



「いい加減、言葉にしてくださってもいいのですよ。」



「必要のない言葉は、汚らわしいだけだよ。」



「そうやって上手く言いくるめられるのは気分が良くないものです。

 まあ、今回は充分に足りた気持ちですから、許しますけど。」



「そうはっきり言われるのも悪くないものだね。」



「ほら、汚らわしいものばかりでないでしょう。」



アパートに着くと、入り口のポストを確認してエレベーターに乗った。

4階でドアが開き、彼女に連れられるように降りて行く。

玄関を開けると、甘く香る小さな部屋に明かりを灯した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ