ペンギンの子のお話
スイペンちゃんという
ペンギンの子がいました
今日は初めて
ジンベエザメ王国に来ています
初めてみる景色です
たくさんのジンベエザメがいて
みんな、くるくるまわったり
胸ビレをパタパタさせたりしています
イメージしていた優雅に泳ぐ
ジンベエザメはほとんどいません
ペンギンの子はワクワクしながら
街を歩きまわりました
すると
そこに弱々しくベンチに座り込む
ジンベエザメの青年がいました
なんだか不思議な魅力を感じます
尾ビレにキラキラ光るリングを
つけていました
綺麗です
それにそのリングからは
微かな力を感じます
誰かに気づいて欲しくて
声をあげているような力です
好奇心の強い
スイペンちゃんは
そのジンベエザメの青年に声をかけました
「その尾ビレのリング
キラキラして素敵ね!」
その言葉にジンベエザメの青年は
驚いた様子でこちらを見て
急に暗い顔になって言いました
「おもちゃみたいって言いたいの?」
スイペンちゃんは
まさかの言葉に戸惑いました
自分が身につけているものを
おもちゃみたいって・・
よく分かりません
スイペンちゃんは
ますます気になってきました
失礼だけど
好奇心をくすぐる
ジンベエザメの青年です
リングから感じる力も
気になります
スイペンちゃんは言いました
「おもちゃ?
いや、おもちゃではないと思うよ
なんだか私、そのリングから
不思議な力を感じるの!
溢れるような・・」
その言葉を聞いた
ジンベエザメの青年は
びっくりした顔をしていました
スイペンちゃんは
その反応を見て
ジンベエザメの青年のことが
少し分かった気がしました
きっとこのジンベエザメの青年は
リングに自信がないんだと
それでもリングは大切なものなんだと
そこでスイペンちゃんは
リングのことを
褒めてあげようと思いました
ジンベエザメの青年が
「不思議な力を感じるの?」
と聞くので
「そう! 努力をして育てたような強い力!
そのリング、生きているみたいだよ!
もしかして・・
それはあなたが幼い頃から
大切にしているものじゃない?」
そうスイペンちゃんは言いました
その言葉に
さらにジンベエザメの青年は
びっくりしています
スイペンちゃんは
その反応に嬉しくなりました
自分が言った言葉が
そのジンベエザメの青年にとって
いい言葉だったみたいです
ジンベエザメの青年は
盛り上がって大きな声で言います
「そうだよ!
このリングは努力を
溜めることができるんだ!
そしてその努力を力に変えて
夢を叶えることができるんだ!
だから僕はこのリングとともに
頑張って生きてきたんだ!」
それを聞いたスイペンちゃんは
微笑ましくなってしまいました
なんて
純粋なジンベエザメの青年なんだろうと
もっと褒めてあげたくなりました
スイペンちゃんは
優しいお姉さんになった気分で
言いました
「きっとそのリングを大切にしたら
願いが叶うと思うよ!
それに何より似合っているよ!」
その言葉にジンベエザメの青年は
光に照らされたように明るくなり
リングよりもキラキラとした
目をしていました
そして
笑顔でいいました
「ありがとう!
信じてみるよ!」
その感謝の言葉に
スイペンちゃんも嬉しくなりました
心の中で舞い上がってしまいました
「よく分からないけど
ジンベエザメの青年を
助けてあげたみたいだ!
感謝されると私まで嬉しくなる〜
これがあなたのリングの力ね!
それでみんなを笑顔にするのよ!
自信を持って!
偶然、出会った
ジンベエザメくん!」
スイペンちゃんは
大きくジンベエザメの青年に
手を振りました
ジンベエザメの青年も
小さくヒレを振り返してくれました
またどこかで会えるかな?
また話したいなぁ
そう思いました
そんなスイペンちゃんには
心に刻んでいる言葉があります
それは意外にも
「少し性格が悪いくらいが
ペンギンらしい」
という言葉です
性格が悪い?
その言葉の真意は分かりません
旅の宿に着いたスイペンちゃんは
楽譜に目を通します
明日は楽しく演奏したいなぁと呟いて
眠りにつきました
次の日
ジンベエザメ王国のとある音楽堂で
ペンギン交響楽団の演奏会がありました
そこでクラリネットみたいな楽器で
美しい音色を奏でているのが
スイペンちゃんです
スイペンちゃんは
ペンギン交響楽団に所属している
演奏家です
いつも仲間と仲良く
楽器の練習をしています
スイペンちゃんの奏でる楽器の音色は
とても美しく
海の向こう側の世界まで
届いていきそうなくらい
この海より透き通った音色です
そんなスイペンちゃんの音色も含んだ
ペンギン交響楽団の壮大な音楽は
どこまでも響き渡ります
曲が終わって
観客のジンベエザメたちから
大きなヒレの音が送られました
感動で泣いている
ジンベエザメもいます
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演奏会も終盤です
私たちも
心地良いペンギン交響楽団の音楽の波に
揺られましょう!
この音色が聞こえませんか?
子どもの頃の気持ちに戻って
耳を澄ましてみて!
おしまい
読んでくださってありがとうございます!!