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夢で見た以上の事

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

雰囲気が恋愛+R15です。

書きたかった雰囲気はかなりこれに近い気が。

苦手な方はご注意下さい。


黒い箱の中でカシスオレンジを頼み、壁に凭れ掛かった。目の前にはインディーズながらも、強烈な人気を博するロックバンドが演奏を続けている。

ボーカルは遠目から見ても完成された姿をしていた。ノースリーブにファーを体にに巻き付けたラフな格好。筋の浮き出た二の腕を求めて、前方の客達が手を伸ばす。

スタンドマイクを手で覆い、キス出来そうな距離で声を放つ。くぐもって、もっさりとした鼻声。けれどもそれに上乗せさせる様に、ギターの様なザラつきを感じさせる独特の声音。それが夜の都会のような曲と非常に合っていた。

突如マイクを外すと床に膝を着いて、前方の客と顔を合わせる。真っ黄色な声が反響し、数多の手が彼を隠しに掛かる。

熱狂的な歓迎は、傍から見ると末恐ろしいものがある。一度視線を視線を逸らして、また前方を見る。メインボーカルの彼の顔が間近にあった。……? ……私は壁に凭れ掛かっていたはず……。しかしそんな疑問も吹き飛ばす様に、彼は前衛的な行いをする。手を伸ばして、私の頬に触れると、目を合わせる。綺麗な顔がそこにあった。

もふもふした短髪に、悪戯っ子の様な笑みを浮かべて、私の顎に触れた。間奏。唇からマイクが離れる。その途端、胸倉を掴まれて、思い切り唇を奪われた。

熱狂は未だに続く。曲が再開する。


気が付くと薄暗い部屋の中でライブ映像を見ていた。夢で見た通り、人目を惹くボーカルがステージの上を彷徨いながら、歌い続けている。テーブル上にはカシスオレンジ。どうやらうたた寝をしていたらしい。

「あのさぁ」

隣から不機嫌そうな声が飛んで来た。声の主は今テレビに映し出されているボーカルと同じ声。

「隣に僕が居るんだから、これ見る必要なくない?」

「何処で何を見ようが、私の勝手でしょう?」

寝起きついでにカシスオレンジを口に含んで目を覚ます。口内を溶かす程に甘いのに、その裏側は後味を残すような苦味がある。隣の奴と良く似てる。

「こっちを見てくれたら、夢で見た以上の事をしてあげるよ?」

そう言って、ライブ映像に自分の声をハモらせて、音を紡ぐ。興味を惹かれて隣を見ると、夢で見たのと同じ様に頬に触れ、キスを落とされた。

「耳も視線も思考も、今は全部僕のものだ」

見ていたライブ映像はこんな感じ。

カシオレ頼んで壁に凭れ掛かって見るのもそのまんま。

残るはキスシーンでした。

ライブに夢中になってる途中唇を奪うかで迷ってました。

しかし。


ライブハウス居るなら、曲聞けよ!!

何のために此処に居るだよ!!


という気持ちになってしまい、こうなりました。


マイクを覆い隠す様にして、唇近付けて歌う様が大好きです。

ファーとノースリーブの組み合わせって、最高じゃないです?

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