断話:夜の道を歩くのは誰?
深夜。この時間が生み出す夜色が最も濃い時。
深夜。そんな夜とは真逆に自らが生み出す光を存分にふりまいている月が出ている時。
深夜。なんだか幻想的な雰囲気を生み出している時。
そんな時間の夜の道。街灯は設置されてはいるが、都会にあるのより少なく。光を照らすべきもの
が逆によるが生み出す闇に呑みこまれているよう。
「・・・・・」
そんな時間の夜の道。誰かがその道を歩いていた。
その姿は闇にまぎれていてよく分からない。男か女なのかの区別もつかない。
「・・・・・」
「誰か」は静かに、静かにただ歩いていた。
「誰か」は足音を立てることなく、静かにただ歩いていた。
幽霊と言う訳ではない。殆どその姿が見えないといっても、足はちゃんと地面についている。人が出
す気配もある。
「・・・・・」
不意に、「誰か」が足を止めた。
「・・・・・今日は来ない、の?」
初めて発した声。
その声は、年頃の少女のものだった。
その時、雲に隠れていた月が姿を現す。
それが生み出す光はほんのささやかなものに過ぎないが、それでも闇の中を照らすことは出来る。
月の光が、少女の姿を顕にする。
少女は学校の制服と思える物を着ていた。そこに変わった所は無い。
あるとすれば、腕に巻かれた幾つかの包帯と、左目につけている医療用の眼帯だろう。
それらが少女の纏う雰囲気を神秘的なものにしていた。
「・・・・・いったい、いつまで続くのかな」
誰に言う訳でもなく、少女はぽつりと呟く。
そしてまた、闇の中へと歩み始めた。
久しぶりの連続投稿です! 続けてどうぞ。