倉庫の中で散る花よ……
胸糞展開注意!
「まったく……なんて人なの……早くなんとかしないと。あれ、これは……」
放課後、あの3人や学園長に腹を立てながら職員室へと戻る。
ちょうどルプスのことを心配しようとしていたときだった。
机の上に手紙が置いてある。
ほかの教員は帰ったか出払っているかでいない。
「誰から……、あ、ルプス君!?」
ルプスの名前が書かれているのを見るや、すさかず内容を確認する。
ふたりで話がしたいとのことだ。
「場所は……1階の倉庫? なんでそんなところに? まさかなにかあったんじゃ!」
昼のこともあり、フリーデは手紙を握りしめながら早歩きで向かう。
傷だらけの彼のことを思うといてもたってもいられない。
「ここね……でも、暗いわね」
鍵は開いている。
しかし明かりは付いていない。
「ルプス君、いるの?」
「せ、んせい……にげ、て」
「……ルプス君?」
目を凝らして、思わずハッとする。
ルプスは確かにいた。
だが、昼のときよりもさらに怪我はひどく、しかも縛られて転がされていた。
「ルプス君!!」
あまりの凄惨な光景に短く悲鳴を上げ、駆け寄ろうとしたときだった。
「そぉら爆乳先生よぉ!!」
「ヒャハハハ!!」
「え、きゃあ!」
「やめ、て……やめてくれーーーーーぇぇぇええ……!」
ドアは閉ざされ、ルプスとフリーデの悲鳴が上がり、人通りの少ない校舎に虚しく響く。
陰に潜んでいた3人はことが上手くいったと狂喜し、フリーデに襲いかかった。
背後から羽交い締めにして、もうひとりが薬品を含んだ布を彼女の鼻と口に押し当てる。
そして主犯たる少年がニヤニヤしながらフリーデの服を乱暴に掴み……。
「いやぁあ!!」
「やめ、て……もう、やめて……くれぇ! 先生に、ひどいことを……!」
ルプスは必死に叫ぶ。
その声とフリーデの肌の温もりに興奮していき、3人の行為はさらにエスカレートしていった。
フリーデは抵抗しようとするも、薬の影響で身体の自由が利かない。
その間にも3人は女神的女体を本能のままにむさぼっていった。
床に跪かされ、壁に押さえられ、ときには力任せに持ち上げられ。
望まぬ快楽に喘ぎ、屈辱に身体を激しく仰け反らせる。
長い黒髪を振り乱し、不快な汗と熱が悲しみと涙を呼んだ。
アツいものを流し込まれるたびに、フリーデの中の悲しみと憎悪が燃え上がっていった。
「おいお前らなにしてる!!」
たまたま近くを通りかかった教員によって、それは発覚する。
放課後の蛮行とはいえ、それは学園に激震を呼ぶには十分すぎた。
フリーデとルプスはすぐに保護され、3人は呼び出しをくらう。
今まで見て見ぬふりをされてきた問題は、皮肉なことにフリーデの純潔が奪われることで表沙汰にされることになる……はずだった。
「我が校に、いじめは、ありません。世界有数の魔術学園のかわいい生徒がそのようなことをするなど、ありえません。教員への暴行に関しても、です。生徒たちは皆教員のことを慕っています」
今回のことで話題となったため、国より監査が入ることとなった。
しかし、裏で圧力がかかり、調査はいい加減なもので終わる。
生徒たちに実施されたアンケートも「紛失した」という名目で処分された。
学園長は議会で貴族たちに堂々と宣言する。
後ろ楯を使い、保身と黙殺を徹底した。
無論、その手はフリーデとルプスにもおよぶ。
数日後、フリーデのいる病院の個室に学園長がおもむいた。
分厚いカーテン越しに学園長は信じられないことを言い出す。
「フリーデ先生、今回はなんと申しましょうか……」
「……」
「えぇ、悲劇ですとも。まさか……不審者3人に襲われてしまうだなんて……」
「……は?」
「ルプス君と仲良く歩いていたところを……可哀想に。ご安心を。下手人はすぐに見つけ出しますので」
「なにを、言って、いるんですか……?」
「こちらに置いておきます」
まるで誰もいない空間に話しかけるように、学園長は淡々と物事を進めていく。
ゴトリとふたつのアタッシュケースがカーテンからフリーデのほうへ。
「こちらわずかながらの見舞い金ですが……。しばらくお休みになられたほうがいい。遠くの国へ旅行へ行かれるのはいかがですかな?」
フリーデのドス黒い瞳が見開くと同時に大きく歪む。
3人がやったのではないという、学園側のカバーストーリー。
ワナワナと震える彼女をよそに、学園長は話を続けていたが、その大半が耳に入ってこない。
口止め料、手切れ金、もはや学園長にとってもフリーデは最上級の厄介者だった。
殺さないのはせめてもの慈悲のつもりなのか。
心がゲロでできているのか、それが当たり前とでもいうように私の恩情に感謝しろという雰囲気だった。
「あぁルプス君。彼、今日退院したそうです。……また、いい学園生活が送れそうですよ」
去り際、彼はそう言った。
ルプスは生け贄だ。
彼に逃げ場は与えない。
あの3人が卒業するまで、ほかに問題を起こさせないための避雷針。
あとは根回しをして卒業まで粘るだけ。
負の連鎖。
円環する地獄。
子供を巻き込んだ、組織腐敗のスパイラル。
その毒牙にルプスは巻き込まれ、そしてフリーデさえも。
「あ、あぁぁ……ぁぁぁあああぁぁああああッ!!」
その場で泣きわめくフリーデ。
「こんなもの……こんなもの! こんなもの! こんなもの! こんなもの!!」
アタッシュケースを居室の壁に叩きつけ、もうひとつを掴んで窓から投げ捨てた。
外にも内にも札束が散らばり場は大騒ぎになる。
それでもなお暴れるフリーデを止めようとナース数人が止めた。
「離して! 離してぇぇぇええ!!」
「だ、誰か! 誰か先生を!!」
過去の苦しみ、そしてルプスを救えなかったことへの罪悪感。
それらすべてがフリーデの精神をむしばみ、やがて……。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
退院こそできたが、まともに生きれるような状態ではなかった。
暗い自室にこもって毎日酒浸りで、あの日のことを思い出しては嘔気に襲われる。
「もう、いい……」
死んだ目でフリーデは深夜の街を幽鬼のように彷徨う。
行き先はこの国の名所である古い時計塔。
あそこはかつて教師を志したときに訪れた思い出の場所。
彼女は中へと忍び込み、上へ上へと進んでいく。
歯車はすでに止まって蜘蛛の巣が張り巡らされていた。
反響するパンプスの音がそれらを突き抜け、天頂へと昇っていく。
ひんやりとした空気が涙と歪な笑みで強張ったフリーデを包み込みながら、死への道を月明かりとともに指し示していた。
すべてが終わる。
恐ろしいほどに死を受け入れている自分がいた。
「初めから私たちに味方なんていなかった……私たちはただの見世物で……皆にとっての見せしめだった……。いいように殴られて、いいように嬲られて……それでも誰もそのことに見向きもしない。誰も罪に問われない。もうたくさん……私にはもう、なにもない。ルプス君も助けられない」
ブツブツと呪詛を流しながら、彼女は最上階までたどり着く。
ドアを開けば、そこは空の世界。
壁に沿うように設けられた通路。
身を乗り出せば、下界が見える。
石畳の焦げ茶色が彼女を待ち構えていた。
それに導かれるように、フリーデはその身を投じる。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……)
ルプスのことが気がかりだが、もうどうしようもない。
苦しみからの解放。
なるべく心を無にして、瞳を閉じた。
「悪ぃ、止めるタイミングミスった!!」
落命に至る業風の中、不釣り合いな声が耳介に響く。
パッと目を開けるとそこには、褐色肌の女が一緒に落ちてきていた。
ブクマ、★★★★★よろしくお願いいたします!
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