教師フリーデといじめられっ子ルプス
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「やめなさい! なにをしているの!?」
校舎の裏で、腰まで伸びる黒髪を乱しながらフリーデは叫ぶ。
視線の先には4人の生徒。
ひとりの生徒をよってたかってタコ殴りにしていた。
教師である彼女はそれを見過ごすことなどできない。
「げ、逃げるぞ! うっせぇ説教が始まるぞ!」
「コラ待ちなさい!!」
しかし3人は背を向けて逃げてしまった。
彼らはこの学園の出資者たちの息子。
名のある家系に連なる才能ある魔術師の卵。
だが、その性根はあまりに腐ってしまっている。
「ルプス君! ルプス君!」
「先、生……」
「あぁ、ひどい怪我……どうしてアナタだけこんな目に」
「……違うんです。その、これは」
「いじめじゃないって? 遊びの範疇だった? 全然説得力がない。アナタいつもひどい目に合わされてるじゃない」
ルプスは天涯孤独の施設育ち。
たまたま膨大な魔力適正を含んでいたので、様々な過程を経てこの魔術学園への入学が認められたのだが……。
「その、大丈夫です。僕のことなら……」
「大丈夫じゃないでしょ。さぁ保健室へ行きましょう」
ルプスは無理して笑っていた。
廊下を歩くときには俯いて、泣いてもいるようだった。
なにも声をかけられない。
フリーデも黙っているしかないった。
(私が、私がなんとかしないと……でも、学園は……)
フリーデはこの学園の腐敗具合に辟易していた。
世界に名だたるこの学園に憧れて教師にはなったが、現場を知れば知るほどに心は打ちのめされていく。
このいじめは彼女に辛い傷をもたらした。
だが一番傷ついているのは、ルプス自身だ。
才能もあり、努力もしている。
生まれに目を瞑れば将来有望なのだろうが、悲しいことに彼はフリーデ以外に味方がいない。
「先生、その、ありがとうございます。ここまでで十分です」
ルプスは保健室のある方向へと歩いていった。
背中から感じる哀愁に思わず胸が痛くなる。
だがその痛みが彼女に闘志をもたらした。
なんとしてでもこのいじめを止めなくてはならない。
「もう一度、学園長に直訴しなきゃ」
フリーデはパンプスの音を廊下に響かせながら、足早に学園長室へと向かう。
「ラタノア学園長。これ以上見過ごすことはできません! なぜ指導を行わないのです? 学園としてキチンとした対応をすべきです。いじめはどんどんエスカレートしていってます」
「フリーデ先生、前にも言ったでしょう。あれはいじめなどではありません。あくまで生徒同士のコミュニケーションです。……彼らはまだ若い。力の加減を誤ることもあるでしょう。だが、そういった経験を経て、人間関係を学んでいくのですよ」
「あれがコミュニケーション!? 校舎裏でよってたかって痣だらけになるまで殴ることがですか!?」
「フリーデ先生、アナタも確か彼と施設出身でしたね? ……そのルプス君とやらに肩を持ちすぎではないかな?」
「そ、それとこれとは別です!! 話をそらさないでください!」
「それにだ。こんなことで大騒ぎして、学園の名に傷が付いたらどうなります? その結果、その例の3人組の未来が閉ざされたら、誰が責任を取るのですかな?」
学園長は頑としていじめを認めなかった。
そればかりか被害者など眼中にない。
施設育ちということで差別をしているのか。
出資者の息子たちのほうが大事だというように。
不毛な言い争いが続く中、事態は最悪の方向へと進んでいっていることに、フリーデは気付かなかった。
「くそ、あの教師いっつも俺らの邪魔するよなぁ」
「マジダルい。折角のお楽しみをよぉ。ルプスの肩持ちやがって胸糞悪ぃ……」
「なぁ、俺イイコト考えたんだけど?」
「お、なんだ?」
「お前の提案には外れがねぇからな。聞かせてくれよ。スカッとしてぇ気分なんだよ」
「まぁまぁ落ち着けって。……なぁ、フリーデって実際どうよ? めっちゃ、美人だよなぁ?」
「おう。……おいまさか」
「そのまさかだ」
「さすがにそれはヤバいっしょ! やめといた方がいいんじゃねぇの?」
「大丈夫だって。俺らの家のこと考えりゃ、学園側はなぁんもできねぇよ」
「へ、へへへ……そうだな」
「で、いつだ?」
「今日の夕方になんてどうだ? ホラ、例の倉庫。折角だからルプスく~んも呼んでさぁ」
「ハッハッハッ! マジ鬼畜だな」
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